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第二巻
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『あの世鉄道カンパネルラ号、間もなく発車致します。駆け込み乗車、飛び乗りはご遠慮下さい』
「行きますよっ」
「おうっ」
"ガッ……メキィ…ッ"
閉まりかけた列車の扉が、四つの手で無理矢理こじ開けられる。
"ガゴッ、プシュ~…"
列車に乗り込んだ二人は、荒い息を吐きながら、車掌に切符を渡した。
「天の岩屋戸風乗車ならOKですか?」
「"ですか"って……もう乗っちゃてますから……ハイ……」
車掌は頬を引きつらせながら、切符に印を打ち込んだ。
『この電車は、"等活"発、"十一焔処"行き』
アナウンスを聞き流し、鬼灯と椿は空席を探して車内を歩いた。
「チッ……大王め、しっかり仕事しやがれっての。無駄に時間食っちまったぜ」
「危うく乗り遅れるところでした。これを逃すと遅刻決定ですからね」
「総括会議の主催者が、会議に遅刻するわけいかねーもんな」
「えぇ、まったくです。……おや、ここが空いてるようですよ」
鬼灯はボックス席の前で立ち止まった。
向かい合わせで四人掛けのその席に、座っているのは女性一人。
桃色の着物に桃のイヤリング、桃の帽子、黒のサングラス。
「あの、すみません、ここよろし……」
よろしいですかと訊きかけて、鬼灯は瞬きを繰り返した。
「……あの、タレントのピーチ・マキさんですよね」
「んなっ、バレた!?」
「バレますよそりゃあ」
「おー、タレントかぁ。どーりで車内中がこっちチラチラ見てるわけだ」
「マジで!?」
「とりあえずここ、よろしいですか?」
「えっ、あぁ、どうぞどうぞ……」
鬼灯と椿は、マキの向かいに並んで座った。
マキは歯ぎしりしながらサングラスを外す。
「……くそっ、マネージャーめ。これなら逆にバレないとか言いやがって! 普通にバレてんじゃねぇか!」
「いや、マネージャーさんのせいだけでもないと思いますよ?」
「何つーか、桃だらけで桃太郎みてぇだな」
「桃太郎って、鶴助けて熊と相撲して亀に乗った人でしたっけ?」
「それ、どこのムツ●ロウさんですか……」
「あっ、針の刀で悪い鬼を退治した人?」
「惜しいような全然違うような……。……今度是非、クイズ番組に出演してください」
「あっ、出たーい! マネージャーに言っとこ~っと!」
まだ見ぬクイズ番組を妄想し、上機嫌に鼻歌を歌い始めるマキ。
鬼灯は、その頭の上をじっと見た。
マキは事の重大さに全く気づいてない様子。
……耐えかねて、鬼灯は身をかがめてこっそり言った。
「……あの、先ほどから気になっていたのですが、帽子が
マキは耳慣れない言葉にキョトンとする。
「"おいど"って何ですか?」
あくびを噛み殺して椿が答えた。
「ケツだよケt"パシッ"
鬼灯が即座に椿の口を塞いだ。
「せっかくオブラートに包んだのに、台無しにしましたね」
マキは慌てて帽子を取る。
「ヤバイ……全然気づかなかった……」
「車内中が喉まで出掛かってたと思います」
「そっ、そこまで!?」
車内のあちこちから、グーサインやピースサインが挙がる。
やはり みんな気にしていたようだ。
鬼灯は椿の口を封じていた手を離し、ふっと息をつく。
「まぁ、タレントさんは外出も一苦労ですよね」
マキは小首をかしげる。
「え? あなたもそうですよね?」
「……。……はい?」
「あれ? でもテレビで……。……あ、タレントじゃなくて俳優さん? 監督?」
「私は官吏です」
「えっ、うそっ!? テレビって芸能人以外も出るんだ! マキ衝撃! ……んーと、カンリって、在庫とかのですか? 家電? それともスーパー?」
「違います」
「その管理じゃねーよ。警察官の官に、吏員の吏だ」
「ぅえ? ぇえ? カンリのカンとケイサツカンのカンて、違う字でしたっけ? ……ていうか、リインって何?」
「……面倒くせーなコイツ」
「これから営業なんですか~?」
「……だから違うって言ってますよね」
「はっ、もしやっ……メーカー事情による在庫過多品をオススメとして売るための仄暗い契約をしに……」
「何で小売業界の裏事情にはそんなに詳しいんですか」
「あたし芸能界入る前は店員やってて! まぁ色々あったけど、中でも万引きがホント困って……」
可愛いはずのマキの顔に、怨霊顔負けのオーラが付き纏う。
「……万引きって、店員の給料にダイレクトに響くし……妖怪万引き婆めぇっ」
「あの、誰かの怨恨を代弁してません?」
鬼灯はチラリと窓の外を見た。
刑場の業火が見える。
「亡者の窃盗は、黒縄地獄で服役13兆年。地獄の住民の犯罪は、カラス天狗警察が目を光らせていますよ」
「へぇ~。メーカーさん物知り~!」
「……だから違いますって」
「お前、地獄の住人だろ? 学校で教わんなかったのか?」
「え、あぁ、えへへ~……」
「その様子では、まともに聞いていなかったようですね」
『次は、"不喜処前"、"不喜処前"です。お降りのお客様は、お忘れ物の無いよう、ご注意ください』
「おっと、降りなければ」
「あぁそっか」
「あっ、あたしも降りなきゃ」
三人は不喜処前駅で降りていった。