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第一巻
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「おに~のパ~ンツはい~いパ~ンツ、つよ~いぞ~、つよ~いぞ~」
「……」
三途の川を通りかかった鬼灯は、どこからか聞こえてきたその歌声に足を止めた。
「トラ~のけ~がわ~でできている、つよ~いぞ~、つよ~いぞ~、あ、なぁなぁ唐瓜」
「ん?」
「モラルって大事だよなぁ」
「ん~? あー、まぁ大事だなぁ。……って、え、何?」
三途の川、川原付近。
ゴミ拾いをしていた唐瓜は、思わず手を止めて茄子を見た。
茄子は竹箒を操りながら、お前こそ何言ってんだ的な顔で話し始める。
「何ってパンツのことだよ。パンツを履くことはモラルの基本だろ? だから俺は、パンツをモラルと呼んでるんだ」
「お前の話っていっつもよく見えねぇなぁ。いいか? お前にとっての常識はみんなの常識じゃないんだ」
「あ、カニだ!」
「っておい聞けよ! そうやってすぐ気移りする癖なんとかしろ! そんなだからサダコ逃がしたりすんだよ!」
「ん、あぁ、ゴメンゴメン」
とはいえ、今に始まったことではない。
唐瓜はため息をついて訊いた。
「んで? パンツが何だって?」
「え? あぁ、いや別に? ふとパンツって大事だなってさ」
「混乱するから思ったこと何でもすぐ口に出すな!」
「あーゴメンゴメン。唐瓜はさ、パンツ
「綿100%派。敏感肌なんだ、俺」
「へぇ~。どこのヤツ? ピーチ・ジョン? チュチュ・アンナ?」
「いや、普通のだけど……何でお前は現世の女性下着ブランドに詳しいわけ? 健全な男子には分かんねぇだろ? 分かんねぇはずだ!」
「へ? だってこの前雑誌で特集してて……そういう唐瓜は何で知ってるのさ」
「姉ちゃんが愛用してて、実家帰るとよく届いてんだよ」
「へー」
「それより、さっさと掃除終わらすぞ。ちんたらしてたら昼飯になっちまう」
「ほ~い」
半ば強制的に話を終わらせ、唐瓜はゴミ拾いに、茄子は掃き掃除に戻った。
しかしすぐに……
「はっこう、はっこう、おにのパンツ~!」
飽きたのか、続きを歌い始めた。
どうしても気になってしまい、唐瓜は再び手を止める。
「ところでさぁ、その歌って何だろうな。趣旨がよく分かんねぇよな」
「え? 鬼のパンツ製作会社の販促ソングじゃないの?」
「違いますよ」
「「!?」」
突如響いたバリトンボイスに、二人は肩を揺らして振り向いた。
鬼灯が無表情のまま歩み寄って来る。
「さっきから内容が気になって聞いてしまいましたが、お喋りばかりしてないで、仕事して下さい」
「すみません……」
「あ、あの、ところで"違う"というのはどういう……」
「あぁ……あの歌はもともと南イタリアのカンツォーネで、日本語歌詞は後づけなんです。元は"フニクリ・フニクラ"」
「あ、知ってる!」
「"フニクリ・フニクラ"は掛け声です。登山鉄道のアピールソングだったらしいですよ」
「なーんだ、地獄のオリジナルじゃなかったんだ。鬼灯様は何でもよく知ってるなぁ」
「ハイハイ、いいから、この先の賽の河原まで、しっかり大掃除して下さい」
「「はーい!」」
唐瓜はゴミ拾いを、茄子は掃き掃除を再開した。
「……しっかし、汚ねーなぁ」
そう呟き、唐瓜は鬼灯へと目を向ける。
「六文銭が散らばってますね。まったく最近の亡者は……」
そこに……
「あっ、蛇だ! アレ三途之川の主だよな! すっげー!」
と茄子が叫び声を挟むが、軽く受け流す。
「はいはい。……ぅお、時計も多い」
「遺品でよく一緒に納骨しますからね」
「なるほど……あと眼鏡も多いですね」
「あっ、カニ食われた!」
「はいはい。……うぉわっ、ずらっとズラだらけ……」
「壮観ですね。店が開けそうな量です」
「あんなデカいの食えるのかなぁ……」
やがて、掃除を終えた二人は、鬼灯と共に閻魔殿へと戻った。
中に入ってみれば、裁判の真っ最中。
閻魔が判決を下す傍らに、椿が補佐官として立っていた。
「ワシが貴殿に下す判決は、衆合地獄! 下着ドロなど低俗の極み! よって、99年穿き古された鬼のパンツまみれの刑に処す! 次の審査へ回せ!」
「「はい!」」
二人の鬼が、亡者を抱えて連れていく。
「ひぃぃっ、慈悲をぉぉぉっ!!」
「慈悲は無い!」
閻魔はふうっと一息ついて、亡者の記録をもう一度眺めた。
「まったく、どいつもコイツも下着ドロだの何だの、嘆かわしいっつーか中身に興味持てよ」
「なぁに言ってんだ大王。そっちのが重罪だろ」
「まぁそりゃ、行き過ぎてストーカーとかになっちゃえば重罪だけど……」
「閻魔大王、椿さん」
呼ばれて、二人はそちらを見た。
「あぁ、鬼灯君」
「よぉ。河原の掃除終わったのか?」
「えぇ、長らく視察できなかった間に、結構荒れていました。……やはり、椿さんに来てもらって正解だったようです。今まで以上に地獄全体に目が届きますから。椿さんの裁判業務の方はどうですか? 大王」
「うん、椿ちゃん覚えるの早いし、支障ないよ」
穏やかな閻魔の笑顔と、満足げな鬼灯の頷き。
椿は褒められ慣れていないため、そっぽを向いて頬をかいた。
「そ、それより」
話題を逸らすように、柱を指さす。
「あの変な仮面は何だ。どうせ掛けたの鬼灯だろ?」
「あぁ、オーストラリア土産ですよ。綺麗でしょ? 魔除けだそうです」
「地獄の閻魔に魔除けって、お前なぁ……」
「うん……ワシ、魔除ける必要ないよね」
そこで、唐瓜が思い出したように言った。
「そういえば、奪衣婆が賃金上げろってキレてました」
椿がちょっと目を見開く。
「おぉ、あのバァさんまだ居んのか。あたしが入職した頃からいるよな」
閻魔は頬杖をつき、盛大なため息をついた。
「あのオババ、けっこう我が儘なんだよな~……」
鬼灯がすまし顔で淡々と言う。
「その件なら、賃金据え置きで了解して頂きました」
唐瓜がクワっと目を剥いて振り返った。
「ええっ!? 鬼灯様すげぇ……。俺なんか銭よこせって脅されたのに……」
慰めるように、閻魔が苦笑する。
「賃上げというよりカツアゲだね。ちゃんと拒否さえしていれば、無理に奪い取ってくることは無いから、気をしっかりね?」
「はい……」
「ところで……」
急に、鬼灯が冷めた眼差しで広場の向こうを指さす。
そこには、慈悲、慈悲と喚いている先ほどの亡者がいた。
「あの亡者は何をしたのですか? 先ほどから随分と喚いていますが」
椿が面倒くさそうに答える。
「下着ドロだよ。女の下着盗みまくって誇らしくかざした馬鹿だ」
「そうですか。……まぁ、その性癖はともかく窃盗ですね。何が彼をそうさせたのか……」
閻魔が髭を弄りながら答えた。
「う~ん、ストレス社会の歪みなのかなぁ」