夢主の名前を決めて下さい。
1. アラバスタ戦線
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
途中の島で休憩を挟みながら、数日後。
ティオはアラバスタに到着した。
アラバスタ王国。
人口約1000万人の、現在はネフェルタリ・コブラが国を治めている文明大国。
しかしてその情勢は
潜入捜査には少々危険だ。
ティオは空高く飛びつつ、砂の海を見下ろした。
今回の調査は、闇会社バロックワークスとクロコダイルの関係性。
世界政府直下の王下七武海とはいえ、クロコダイルは海賊。
闇会社と繋がりがあるかもしれないなどと噂が立てば、想像は悪い方にしか及ばない。
「……」
クロコダイルが現在拠点として活動しているのは、アラバスタのレインベース。
書類にはそう記載されていた。
彼はそこでカジノを運営しているとのことである。
ティオは覚えたてのアラバスタの地図を頼りに、10時の方向に進路を変更した。
アラバスタにしては随分ときらびやかな街、レインベース。
隣町である寂れたユバとは大違いのその街は、反乱軍と王国軍が一戦交えるかもしれないことなんて、全く知らないように賑やかで、住民も、満たされた表情の者ばかりだった。
「そこの店に入るぞ」
「あ、はい!」
聞き覚えのある声がして、ティオは街を見下ろした。
見えたのは、スモーカー大佐とタシギ曹長。
「……」
なぜアラバスタにいるのだろうか。
スモーカーの部隊の管轄は、アラバスタではないはずだ。
ティオはしばらく空から2人を見下ろしていたが、とりあえず理由を聞くことにした。
徐々に降下し、スモーカーの肩にとまる。
「?」
スモーカーは何かが触れたような気がして、横目に自分の肩を見やった。
「お前は……」
立ち止まったスモーカーの方へ、タシギも振り返り、首を傾げる。
「どうかしましたか?」
スモーカーは、肩にとまったティオをじっと見つめた。
ティオは、小さな瞳でスモーカーを見つめ返し、コクっと頷いて見せる。
何かを察したスモーカーは、小さくため息をついた。
「……どうやら、この国には裏があるようだぞ、タシギ」
そう言われても、タシギは眉をひそめるばかり。
「鳥?」
"バサッ"
ティオはスモーカーの肩から飛び立ち、地面に降り立つ。
"ボンッ"
突然巻き起こった煙の中に、アラバスタのマントを身に纏った金髪の少女が現れた。
「え……ぇえっ!? と、鳥が人に!?」
「お前はコイツを知らないのか」
「コ、コイツ? スモーカーさんの知り合いですか?」
ティオがマントのフードを外すのを、スモーカーはじっと見下ろす。
「コイツは主に元帥の命令で動く、海軍本部の諜報員だ。名前はティオ」
「諜報員?」
「コイツが放たれる場所には、高確率で不穏な影が渦巻いてる」
「こんな子供が……ではさっきの姿は」
「悪魔の実の変身能力だ。少しばかり喋り方が分かりづれぇが、頭はいいし、仕事もそこらの海兵より出来る。お前も、コイツのことはよく覚えておけ。俺たち実行部隊にとって、情報をくれる諜報員との連携は重要だ」
ティオはタシギに深く頭を下げた。
慌ててタシギもお辞儀し返す。
「あ、私は海軍本部曹長タシギといいます! よろしくお願いします!」
ティオはタシギを見上げて頷いた。
スモーカー大佐とタシギ曹長といえば、海軍本部でも有名なコンビだ。
諜報員という役柄、様々な情報を知るティオは、もちろん彼らのことも知っているし、スモーカーとは、海軍本部でも何度か会ったことがある。
スモーカーは葉巻きの煙を吹いて、ティオを見下ろした。
「今回の指令は何だ」
ティオはウエストポーチを探り、小さく折りたたまれた指令書を取り出し、渡す。
スモーカーはそれをざっと見通した。
「フン……」
何の意図か、鼻で笑って、目の前の店に入っていく。
タシギもティオも、スモーカーのあとに続いた。
「いらっしゃい、何にするね?」
カウンターにつくと、店員らしき老婆が声をかけてきた。
3人は適当に飲み物を注文する。
「……」
ティオは差し出されたジュースを飲みつつ、スモーカーが書類を読み終わるのを、黙って待った。
「……クロコダイルに、バロックワークスとの関連性の疑いか」
バサッと、ティオの前に書類が返される。
タシギは目を見開いた。
「まさかっ、あの秘密犯罪会社の黒幕がクロコダイルだとでも……」
「かもしれねぇな。それを確かめるために、コイツが来てるんだろ」
スモーカーの大きな手が、ティオの小さな頭をポンポンと叩く。
「ふたり、どうして、ここいる?」
鈴を鳴らすような声で、舌足らずな言葉が紡がれた。
無表情な青い瞳に見上げられ、タシギは肩を揺らす。
「え、あ、私たちですか?」
ティオは深く頷いた。
「かんかつ、いーすと、ぶるー、でしょ?」
「あ、えっと、私たちは、ローグタウンで麦わら一味とひと悶着ありまして、このままでは終われないと、彼らを追いかけてグランドラインに入ったんです」
タシギは真剣な眼差しで、どこか遠くを見つめた。
「……グランドラインに入ってすぐ、海上で、とある無線を傍受しました。聞き取れた単語は4つ。王女ビビ、麦わら一味、指令状、Mr.0。そのときちょうど、Mr.11と名乗る男を捕えていたこともあり、麦わら一味とバロックワークスに、何らかの関係があるのではと推察しました。それで、王女ビビという単語を頼りに、このアラバスタへ来たんです。……そして、ナノハナという街で一度、麦わらに出くわしました。そこで麦わらは言ったんです。クロコダイルをぶっ飛ばしに来た、と。……その後、白ひげ海賊団二番隊隊長、火拳のエースに邪魔され、麦わらを逃がしてしまい、現在、捜索中なんです」
「……」
「……え、えっと、以上ですが……」
無言かつ無表情で見つめられ、タシギはたじろいだ。
「がんばって、ね」
ティオはいきなり、飲み物の代金にコインをひとつ置き、カウンター席を降りて、店の出入口へと歩き出した。
「え、あ、えっ!? どこ行くんです!?」
ワケが分からず慌てふためくタシギだが、ティオは振り返らずに歩いていく。
懐から新しい葉巻きを取り出したスモーカーは、声を張り上げた。
「俺たちはしばらくこの国にいる」
ティオは一度立ち止まり、振り返った。
「何かあったら来い」
そう告げる、大きな背中をじっと見つめる。
「……」
こちらを見ていないとは分かっていても、ティオはスモーカーに、深々と頭を下げた。
"……ギィ"
古くなった店の扉が鳴る。
ティオは店を出ていった。
「……」
タシギはその後ろ姿を見えなくなるまで目で追ってから、カウンターの方へ振り返った。
「大佐、ティオはどこへ……」
「クロコダイルの調査だろ。それが奴の仕事だからな」
「は、はぁ……。……あの、ティオってどういう……」
万が一にも本人に聞こえないようにと、小声で尋ねる。
「……」
スモーカーはどこか一点を見つめたまま、3秒ほど考えた。
葉巻きから、灰が零れ落ちる。
「見たまんまだ。それ以上でも、それ以下でもない」
「親、なんかは……」
「さぁな。あいつは、ある日ひょっこり海軍に連れて来られた。大将青キジが世話してた時期もある」
「た、大将青キジが!? そ、それはもしや隠し子……」
「ンなわけねぇだろ。……とにかく、アイツの素性もとい正体は、海軍と政府の限られた上層部しか知らない。俺らみてぇな一介の海兵には、知る権利すらねぇもんだ」
「そうですか……」
ティオは外見は子供だが、あまりに子供らしからぬ、というより、常人らしからぬ空気を放っていた。
無表情の真ん中に収められた、あの青い瞳。
まるで波風一つない湖のようだ。
感情が何一つ感じられない。
全てを飲み込まれてしまいそうな気すらしてくる。
ほとんど喋ることなく、表情も変えることのない彼女は、まさに陶器のよう人形だった。
1/9ページ