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7. アッパーヤード
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―――その日の夜更け。
踊り疲れた麦わら一味と雲ウルフたちは、その場に倒れ込むようにして眠りについた。
ティオもゾロにくっつき、一緒に寝ている。
……と、そこに。
「……なぁ、ゾロ」
「……ん、ぁあ?」
「?」
そろりそろりとウソップが近づいてきた。
ゾロはもちろん、ティオも目を覚ます。
「……何だよ」
「ち、ちょっと一緒に来てくれねぇか?」
もじもじと独特な動きをするあたり、どうやらトイレに行きたいらしい。
「なぁゾロ頼むよっ、ちょっとさぁ……っ」
「何が一緒にだ。いくつだテメェは。怖ぇなら朝まで辛抱しろ」
「~~っ朝まで辛抱できるくらいなら頼みゃしねぇよっ」
「んむ………がき……」
「いや、ティオには言われたくねぇ」
「てぃお、ひとりで、いける、もん……。……ふぁ~」
ティオは大きなあくびをして、もう一度ゾロに擦り寄る。
「おら、テメェの方がガキ決定だ。小便くらい1人で行ってこい」
ゾロはあくびをしつつ、しっしと追い払うような手振りをしてみせた。
「何だよ……ホント冷てぇなっ」
仕方なく、ウソップは1人でトイレに行く。
「くか~……くか~……」
「すぅ……すぅ……」
ゾロとティオはもう一度寝息を立て始めた。
……しかし、そのわずか1分後。
『ああああああああっ!!』
「……むう」
ティオは悲鳴に目を覚まし、眉間にしわを寄せた。
もちろんその悲鳴が誰のものかは、覇気によってバッチリ分かっている。
「ぞろ、おきる」
「…ん……ぁあ?」
「うそっぷ、なんか、あった」
「はぁ? ……ったくしょうがねぇな」
ゾロは機嫌悪そうに立ち上がり、寝惚け眼のティオに手を引かれ、歩いていった。
「……何やってんだコイツ。小便しに行くっつって、こんなところで寝てやがる」
キャンプファイヤーから少し離れた、樹の根元に、ウソップは倒れていた。
ブツブツと何か言いながら、白目を向いてぴくぴくと痙攣している。
ティオはウソップに触れて、記憶を覗いた。
「こづち、の、おと……めりーごうに、ひとかげ。おばけ、と、おもった、みたい。きぜつ、してる」
「ったく、しょうがねぇ奴だな」
「お、おばっ……おばっ、け……っ」
「夢見てんじゃねぇよ」
ゾロは深いため息をつきながら、ウソップを担ぎ上げた。
そしてティオと共にキャンプへ戻り、適当なところにウソップを降ろす。
「……う、うぅ……」
ウソップは悪い夢にうなされている様子。
しかしそんなウソップは放っておいて、ゾロとティオは再び眠りにつくのだった。
「くか~……くか~……」
「すぅ……すぅ……」
―――夜は静かにふける。
明日に向けて、様々な人の、様々な思いを、闇に溶かしながら。
―――翌朝。
「見ろ、言ったとおりだろ!? ここに誰かいたんだ!!」
朝っぱらから騒ぎ立てるウソップが見ているもの。
それは、昨日から変わらず祭壇の上に在り続けているメリー号。
しかしその様子は、昨日とはまるで違うものになっていた。
「ゴーイングメリー号が、修繕されてる……」
みんな口を揃えてそう言う。
「俺は見たんだ。やっぱりあれは夢じゃなかった!」
「確かに。折れきったマストまでちゃんと直ってる……」
「ホント。こんな重いものを立てるだけでも大変な作業のはずなのに」
「だが、言っちゃ悪いがヘタクソだ」
「いい奴がいるもんだな! ははっ!」
「確かにいたんだ。俺は見たんだ!」
「しかし、こんな辺境で誰が船を直してくれるってんだよ。このアッパーヤードには、俺たち以外、敵しかいねぇんだぞ?」
「でも、フライングモデルじゃなくなってるな、ウソップ」
「あぁ、そうなんだ。そのことが気になってんだ。何でこの船を直してくれた奴は、メリー号の元の姿を知ってるんだ? トサカがなかったことも、羽や尻尾がなかったことも」
「ウソップが見たのは誰なんだ?」
「どう考えても夢としか思えねがな」
「アンタたち何サボってるの! やることはたくさんあるんだからね?」
そう言われ、チョッパーが首をかしげる。
「ナミは気にならねぇのか? ゴーイングメリー号を直してくれたのは誰かって」
「壊されたんならともかく、直してくれたんだから問題ないでしょ。それともアンタ、どうしても探し出してお礼でも言いたいの?」
「えっ、いや、そうじゃないけど……」
ウソップはメリーの頭を見て腕を組んだ。
「……なぁメリー。ありゃぁ誰だったんだ?」
……訊いても答えてくれるわけないか。
小さくため息をつくと、メリーの頭に小さな手が伸びてくる。
「……」
ティオの手だ。
「あ、そうか! ティオに聞いてもらえばよかったんじゃねぇか!」
ウソップはパァっと表情を輝かせて、ティオのところへ寄ってくる。
「なぁ、メリーは誰だって言ってんだ? この船直してくれた奴!」
「……」
高揚しているウソップに対し、ティオはじっと黙ってメリーに触れるだけ。
しばらくすると、口元に人差し指を立てた。
「ひみつ」
「ぇえっ!? おいおいそりゃないぜ~」
「だめ、ひみつ」
「なんでだよ~」
「めっ」
ティオは頑として、修繕者の名前を言わなかった。
それはメリーとティオだけの、秘密の約束。