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7. アッパーヤード
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一味が狼と膠着状態に陥ったところ、双方の目の前を、美しい銀色の毛並みが横切った。
狼になっているティオだ。
ティオはそのまま狼たちの前に進み出て、身を翻し、立派な尾を優雅に振る。
「「「……」」」
先ほどまで威嚇していた狼たちが、静かになった。
すべての視線がティオの揺らす尻尾に釘付けとなる。
その頃合を見計らって、ティオは殴られた狼のボスに近づく。
そしてその頬をチロっと舐めた。
「!」
ボスはパッと目を開いてティオを凝視する。
そのタイミングを計っていたかのように、ティオが首をこてっと傾げれば……
「きゃうぅ~ん!」
ボスは瞳にハートを浮かべた。
「「「……」」」
その一部始終を見守る麦わら一味は、若干引き気味だ。
「……なぁ、チョッパー。ティオちゃんは何してるんだ?」
「うん、なんか、狼たちを誘惑してる」
「はぁ!?」
「ふふっ、上手ね」
「悪魔だな」
そう言うゾロの視線は、ナミに向いている。
「何であたしを見てんのよ!」
「別に」
生物のメスのみが持ちうる凶器。
それを駆使してオスを手玉にとってしまうその手法は、一味の中では誰よりもナミに近いものだった。
いつも無表情で誘惑など無縁と思われたティオの、意外な一面。
「キャウ、キャウキャウキャウゥゥ~ン!」
ボスが、先ほどとは比べ物にならない高い声でティオに話しかける。
「このひとたち、て、だしちゃ、め」
「「「キャウッ!」」」
ボスを筆頭に、狼たちは全員ティオの前に整列し、ハートマークの瞳で敬礼した。
"ボンッ"
用事を済ませたティオは、人間の姿に戻る。
そして一味の元へ戻ってきて、親指を立ててみせた。
「ちょうきょう、かんりょう」
無表情なはずなのに、妙にやりきった感のある瞳。
「……なんか、丸く収まったのか?」
「みてぇだな」
「じゃ、みんなでやるか、キャンプファイヤー!」
「「「おうっ!!」」」
「「「ウオォ~ン!」」」
……そんなわけで、麦わら一味は狼たちも混じえて、キャンプファイヤーをすることになった。
巨大な組み木に火がつけられる。
それを囲んで、みんなで踊り始めた。
「お前も飲むか?」
酔っ払っているせいか、ゾロが気味悪いほどの笑顔で話しかけてくる。
「いらない」
そう言って首を振るティオは今、狼と酒を酌み交わすゾロの両足の間に座っている。
「ウォウォゥ!」
「やだ。けっこん、しない」
「ククッ、人気者だな」
何故ティオがゾロの元にいるのか。
それは、求婚してくる狼たちから身を守るためだ。
さすがに単身で狼の群れから逃げ続けるのはキツい。
ゾロという盾に守られている限りは安全だ。
今は酔っ払っているから、ゾロ自身の機嫌もいいことだし。
「ほう……雲ウルフも手懐けたか。エネルの住む土地で、こんな馬鹿騒ぎをする者は他におらんぞ?」
「あら、お目覚めね。動いてもいいの?」
背後からの声にロビンが振り向けば、大樹の向こうからガン・フォールが現れた。
「迷惑をかけた。助けるつもりが……」
眉根を下げるガン・フォールに、ゾロが口角を上げて言う。
「何言ってる、十分さ。ありがとな。チョッパーと俺たちの船を助けてくれたんだろ?」
「なに、そのくらい……」
「シチューがまだあるみたい。いかが?」
「いやいや、せっかくだが、今は無理だ」
ガン・フォールはその場に腰を下ろす。
すると、ルフィとチョッパーが満面の笑みで振り向いた。
「おう、変な騎士! 起きたのか! 踊ろう!」
「一緒に踊ろう! 空の騎士!」
ゾロとティオが半目でチョッパーを見る。
「お前医者だろうが……」
「けがにん、ころす、き?」
サンジが思いついたように目を見開いた。
「そういやコニスちゃんは大丈夫か?」
「親子共々わしの家に居る。安心せよ」
「そうか、良かった! それが心配でよ!」
「いや~よかったなぁみんな無事で! よ~しチョッパーを胴上げだ!」
「なんで!?」
キャンプファイヤーのおかげで、テンションのおかしい麦わら一味。
チョッパーを3m以上の高さまで胴上げして楽しんでいた。
「……先程のおぬしらの話を聞いておった。この島、元の名をジャヤというそうだな」
「えぇ」
「何故ここが聖域と呼ばれるか分かるか?」
ティオがさも当然と言いたげに答える。
「だいち、もとい、つちへの、あこがれ。そらじま、つち、ないから」
「そうじゃ。おぬしら青海人にとって当然であるこの地面。島雲は、植物を育てはするが、生むことはない。緑も土も本来は空にはないのだよ」
ガン・フォールは土を掬い取る。
「我々はこれを"ヴァース"と呼んでいる。空に生きる者たちにとって、永遠の憧れそのものだ」
土は、ガン・フォールの手からサラサラと流れ落ちていく。
流れ終わると、ガン・フォールは穏やかに微笑み、キャンプファイヤーを見つめていた。