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5. スカイピア
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「へそぉ?」
「へそっつったか? 今」
「へそって何だ?」
「いやへそはへそだろ」
そんな言い合いを聞いて、ティオは呆れ顔をする。
「『ヘソ』、そらの、あいさつ。『こんにちは』って、いった」
ウソップが目を細めた。
「何だそりゃ。もっとマシな挨拶考えろよ」
「スゥ、おいで」
住民らしき女性は、先程ゾロに拭きものにされた動物に声をかける。
動物は女性の足元に走り寄った。
「青海からいらしたんですか?」
ルフィがニカっと笑って答える。
「あぁ。下から飛んできたんだ。オメェ、ここに住んでんのか?」
「はい。住人です。ようこそ、スカイピアのエンジェルビーチへ。……ふふっ、それ、飲みたいんですか?」
女性は、ルフィが持つ木の実を指さす。
「コナッシュは皮が鉄のように硬いから、噛んでもダメですよ? これは裏から……」
言いつつ木の実を裏返し、ナイフで小さく穴を開け、ストローをさしてくれた。
「はい、どうぞ」
ルフィはさっそく飲んでみる。
「うんめぇ~~~!」
ウソップが目を輝かせた。
「何ぃっ、そんなにかぁ!? 俺も俺も! ……うおっ! うんめぇ~~~!」
2人が木の実のジュースを堪能していると、女性は足元で眠る動物を抱き上げる。
「私はコニス。この子は雲ギツネのスゥといいます。何かお困りでしたら、力にならせてください」
すると、真っ先に答えたのはサンジだった。
「あぁ…それが、君の視線で心にヤケドを……って痛ぁぁぁぁっ!」
サンジはナミに耳を引っ張られた。
「邪魔よサンジ君……。訊きたいことがたくさんあるのよ~。とにかくここは、私たちには不思議なことだらけで」
「はい。何でも訊いてください」
「おい、何か来るぞ?」
ゾロが海の方を指さす。
「あ、父です!」
「コニスさん、ヘソ~~!」
海で何かに乗ってこちらへ向かってくる人影が、コニスに手を振る。
「えぇ! ヘソ、父上~!」
ナミはコニスの父親をじっと見つめた。
「ねぇ、あの乗り物って何?」
「あぁ、ウェイバーのことですか?」
「ウェイバー……ティオが言ってた、青海では展示されてる空の乗り物…」
「は~いすみません! 止まりますよ~!」
コニスの父親はそう叫びながら、ウェイバーを走らせてきた。
……だが。
"ブゥ~ン……ズルッ、ドスンッ!"
思いっきり島雲に乗り上げ、そのままの勢いで近場のコナッシュの木にぶつかった。
「「「……」」」
一味は唖然として、その様子を眺める。
「うぅっ……あ、みなさん、おケガはないですか?」
「オメェがどうだよ!」
他人を一番に心配するタイプの人らしい。
「ねぇルフィ、アンタ前にあぁいう乗り物、難破船から持ってこなかった?」
「ん? あぁ、持ってきたな」
「……あれがノーランドの日誌で読んだ、風が無くても走る船」
ナミは呟きながら、ずっとウェイバーを見ていた。
「おや、お友達ですか? コニスさん」
「えぇ。今さっき知り合ったんです。青海からいらしたそうで」
「そうですか。それでは戸惑うことも多いでしょう。ここは白々海で、すいません」
「え、あぁ、いえいえそんな……」
「申し遅れましたが、私の名はパガヤですいません」
「あぁ、いやいやこちらこそ……」
「父上、魚は獲れましたか?」
「えぇ、大漁ですよ。……あ、そうだ。みなさんもうちへいらっしゃいませんか? 空の幸をごちそうしましょう」
「メシっ!? 行く行く~!」
「へぇ~空島料理かぁ、俺にも手伝わせてくれ」
「えぇ、それは助かります。……おや、どうされました?」
いつの間にか、ナミがウェイバーを至近距離で観察していた。
「これ、風を受ける帆もないし、漕いでたわけでもない。どうやって走ってたの?」
「ダイヤルをご存知ないのですか?」
「だいやる?」
ルフィが試しにウェイバーに乗り、アクセルを踏み込んだ。
"ブウゥ~ンッ!"
「うわわわわわわっ何だこの揺れは! 止まらねぇ!」
ルフィを乗せたウェイバーは、グインと波に乗り上げて転覆した。
"ザバァンッ!"
「まぁ! 大丈夫かしら!」
「な、なんてことだ! ウェイバーをお貸ししてすいません!」
「そういやぁ、能力者にこの海はどうなんだ?」
「そうか。普通の海とは違うから、もしかしたら浮くかもしれねぇ」
サンジとゾロが冷静に分析していると、後ろからティオが答えた。
「それは、ない。そらも、ちじょうも、うみの、せいぶん、かわらない」
「ゴボボボボボ……」
「確かに。沈んだな」
「ダメか」
「うわああああっ大変だァァァァ!!」
"チャポンッ!"
チョッパーが慌てて助けに行こうと海へ飛び込む。
―――しばらくして。
「あっぶねぇな~。下へ突き抜ける寸前だったじゃねぇか」
「オメェがアホなこと言ってるから出遅れたんだろうが」
サンジとゾロが、喧嘩しながらもルフィを引き上げてくる。
「ったく、何でお前まで飛び込むんだよ」
「そ、空島怖い……」
チョッパーはウソップに救出されていた。
「はぁ……」
ゾロはびしょ濡れになったシャツを絞った。
そしてブツブツと文句を連ね続ける。
「ったく……ちっこいのが空でも下でも海に変わりねぇっつってんのにあのグルグルコックは……ん?」
ゾロは、その"ちっこいの"を見た。
「おい」
「?」
「顔色悪いぞ。大丈夫か」
確かに、もともと色白だが、さらに血の気が引いて、青白い顔になっている。
「(コクン)」
「……」
あまり大丈夫そうには見えないが、本人がいいなら、とりあえず何も言わないでおく。
その頃、パガヤとコニスは、ウソップにウェイバーの概要を話していた。
「ウェイバーの船体はとても軽く作られていて、小さな波にも舵を取られてしまうのです。海をよく知らないとなかなか乗りこなせないんですよ。すいません」
「私も、最近ようやく乗れるようになったんです」
「そんなに難しいのか?」
「まぁ訓練すれば10年ほどで……」
「大変だなぁ」
とは言うものの、海をよく見てみれば、ウェイバーを乗りこなす人影が……
「って、乗っとるぅう!?」
「サイコー!」
ナミだった。
「そんなナミさんがサイッコーっ!」
「信じられません! 凄いですね!」
「な、なんで乗れんだ あんなのに!」
「確かにコツがいるわね! デリケートすぎてアンタには無理よ、ルフィ!」
「ぐぬぬぬっ……おいっ! ナミ!おっさん家にすぐ行くから早く降りろ! アホーッ!」
「八つ当たりすんなっつの……」
「先行ってて~! おじさ~ん! もう少し遊んでてもいいでしょう?」
「えぇ、気をつけて~!」