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42. 深海大冒険
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海面より1万メートル下の、海底。
遥か海の底でありながら、眩い光が降りそそぐその場所で、麦わら一味は目を覚ました。
「……た、助かった……のか?」
「なんか、明るくねぇか?」
「もしかして俺たちっ、死んじまったのか!?」
「ってこたァ、ここは天国か?」
「……なんかこのやり取り、空島でもやった気がするわね……」
「てんごく、ちがう。ついたよ、ぎょじんとう」
「おいお前ら! 上見ろよ、上!」
元気いっぱいの船長の声に釣られて、全員で頭上を仰ぎ見れば、巨大なシャボンに包まれた海とサンゴ礁が浮いていた。
「やった~~~! 着いた~~~!」
「
「人魚たちの舞い踊る島、美しい人魚姫のおわす場所……ついに、ついに辿り着いたんだっ……ガキの頃から憧れた夢の楽園!」
サンジとブルックが、肩を組んで踊り出す。
「マ~メイDO~! マ~メイ…ブハッ!」
「サンジィィ!? やっぱしダメだ! 妄想だけでこのザマ!?」
貧血で倒れるサンジに、チョッパーが泣きながら取りついた。
「ごめんな、サンジ……リハビリが間に合わなかったんだ……本物の人魚たちにも、もう会わねぇ方が……」
ウソップとチョッパーの間で、寸劇のようなやり取りが始まってしまう。
「ドクター! 魚人島の人魚たちに会うことはコイツの夢なんだよ!」
「だけど、会えば命を落とすぞ!」
「そんなァ!」
「ぐっ……構わねぇ」
「「サンジ!?」」
「……夢叶わず、生き長らえるより……俺は人魚たちを、エロい目で見て死にたい」
「最低か!」
そうして楽し気に
「みんな、きをつけて」
「「「!?」」」
「なにか、てきい、もったしゅうだん、くる」
「敵意? 何モンだそいつらァ」
「わから、ない。……ぎょじん、の、かのうせい、たかい」
そのとき、ゾロが刀の鞘を掴んだ。
ガチャっと鳴ったその音と、辺りを警戒し始めたゾロの鋭い雰囲気で、一味全体に緊張が奔る。
「ハモハモハモ! おいクラーケン、何を人間なんぞに従わされてんだ?」
奇妙な笑い声と共に、大きな影が幾つもサニー号の前に現れた。
その影は海獣たちで、背中に魚人を1人ずつ乗せている。
サニー号を頭に乗せていたスルメは、彼らを見るなり青ざめ、サニー号を放って逃げ出した。
「うわあああっ!!」
「何すんだよスルメ! もう一息運んでくれよ~!」
敵から片時も目を離さないまま、ゾロは隣のティオに訊く。
「コイツらは誰だ」
「……わから、ない……でも、うみのなか、じゃ、かちめ、ない」
いくら麦わら一味が強くても、水中では戦えない。
ナミもそれに勘付いたのか、こっそりティオの傍へ寄ってきた。
「……ねぇティオ、魚人島の入口は?」
「ある、けど、こいつら、ふりきって、たどりつく、の、むり」
「そっか……。あの魚人島のシャボン玉、中には空気があるように見えるんだけど」
「(コクン)…ぎょじんとう、くうき、ある。それと、しゃぼん、にじゅうまく、こうぞう。1つめと、2つめの、あいだも、くうき」
「……ってことは、何とかあの内側のシャボン膜の向こう側まで、クー・ド・バーストで飛べれば……」
「(コクン)…りく、で、たたかえる」
ナミの中で、作戦が決まった。
一方、行く手を塞ぐ魚人と海獣の群れは、ルフィを見下ろし、何やら提案していた。
「お前たち、麦わらの一味だよなァ?」
「それがどうした! 俺はモンキー・D・ルフィ! 海賊王になる男だ!」
「自信満々に名乗ってる場合かルフィ!」
「ハモハモハモ! 噂通りの肝の据わりっぷりだ! お前らのことはよ~く知ってる……かつてアーロン一味の野望を打ち砕いた海賊たち、そして、よりによって2年前、元・アーロン一味幹部、ハチさんを庇い、あの憎き天竜人をぶちのめしたという豪胆さ。まるで我々の敬愛する魚人島の英雄、フィッシャー・タイガーのようじゃないか。まったく扱いに困るというものだ。……なぁ、教えてくれよ。お前たちは敵なのか、味方なのか」
「はあ?」
「我々、新魚人海賊団の傘下に下るか、それとも拒否するか。拒むのなら、ここで沈んでもらう!」
ナミはチラチラとルフィの様子を見ながら、フランキーやウソップに指示を出した。
「急いで燃料補給して! ティオの話だと、魚人島の入口にはコイツらを倒さないと向かえない。でも、海の中じゃ魚人に敵わない……。ルフィがアイツらの言うこと聞くわけもないし、今は1秒でも早く陸と空気のあるところへ行かなきゃならないの! だから、この船の空気全部使って、クー・ド・バーストで魚人島に突っ込んで!」
「アウ! 正気か!? 失敗したらオメェ……」
「一か八かよ! それ以外に、生き残れるすべがない!」
「よし、フランキーは操舵を頼む! 俺が燃料補給してくるからよ!」
「分かった、スーパァ任せろ!」
水面下で準備が進んでいることなど露知らず、ルフィは新魚人海賊団の誘いに対して、思いのままを口にした。
「俺たちに手下になれって? そんなの……いやだね~~~! バ~~~カ!! な~んでお前らの手下になんなきゃいけねぇんだよ~っだ!」
普通に拒否してくれればいいものを、相手を逆撫でする勢いで拒むものだから、クルーたちは気が気ではない。
「ったくもうルフィの奴~~っ」
「アウ! それでこそうちの船長だぜ!」
「言ってる場合じゃないでしょ! ほら、早く帆畳んで!」
「フランキー! コーラ補充してきたぞ!」
慌ただしくなってきた麦わら一味の動きに、タコの魚人が気付き、酒を仰いでいた手を止めた。
「何かするつもりかもしれねぇぞ? ……ヒック」
「ハモハモッ、構わねぇさ。ここは深海1万メートル。人間が何をしようと、俺達から逃れることは出来ない。やれ! 海獅子ィ!」
下半身が魚類のライオンが、サニー号に向かって大口を開けた。
「こんにゃろっ、俺と
「いいわフランキー! 行って!」
「オーケー。……このサニー号も獅子だ。いずれ
"ドヒュンッ!"
勢いよく飛び出したサニー号は、口を開けていた海獅子の横をすり抜けた。
「はぁ!?」
「帆船が飛びやがっただと!?」
魚人たちが驚く中、ピークヘッドが魚人島のシャボンにめり込んでいく。
同時に、船を包むシャボンは空気を失って、ピッタリと船体に沿うほど凹んだ。
「ぶへ~~~っ、ぺちゃんこになるぅぅ」
「みんな耐えて! 魚人島に突っ込むまで!」
サニー号は外膜を通り抜けると同時にコーティングを失い、そのまま内膜へと飛んでいく。
「全員しがみつけェ! もう一発激突するぞ!」
"ドプンッ!"
サニー号が突っ込んだ内膜の内側は、海だった。
麦わら一味は、船ごと海水に引きずり込まれる。
(海だと!?)
(すごい潮の流れっ……抗えない!)
(くそっ……能力者が5人もいるってのに!)
カナヅチでなくともキツイ激流の中を、能力者たちは抗えるわけもなく流された。
(ナミさんっ……ロビンちゃん、ティオちゃん!)
(流れに逆らえねぇっ……せめて、手をっ)
激しい海流に揉まれながらも、ゾロは懸命に腕を伸ばす。
そこには、長い金髪を浮かべ、苦し気に目を閉じている少女が漂っていた。
(少しでいい、手を伸ばせ!)
泳いで傍に行けない今、こちらへ手を伸ばして貰わなければ掴むことも出来ない。
「……っ」
真っ直ぐな強い"声"に叩き起こされ、ティオは薄く目を開いた。
ぼんやりとした視界の中、見間違えようのない大きな手が自分に向かって伸ばされている。
ティオは最後の力を振り絞り、自分も手を伸ばした。
"ゴオォッ……"
……努力の甲斐も虚しく、
遠くなっていく仲間たちの声を、ティオは薄れゆく意識の中、気を失うその瞬間まで追い続けた。
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