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42. 深海大冒険
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一方その頃、サニー号では……
「ルフィ~! ゾロ~!」
「サンジ~! ティオ~! どこ行っちゃったんだよ~!」
残されたクルーたちが、暗闇の中で出来る限りのライト機能を使い、ルフィたちを探していた。
「くそォ、こう暗くちゃ何も見えねぇぞ」
「既に7000mも超えてるからな、水圧も心配だぜ」
「そうか、アイツらあんな小せぇシャボンで……くそっ、生きてても空気が持たねぇし、危険すぎるぞ!」
「あ~もう~~っ、だから命綱つけてって言ったのよ! それか、ティオだけでもこっちに置いてってくれれば……」
「そういえば、通訳に連れて行くと言っていたけれど、結局ティオの力は必要なかったわね」
「呑気に言ってる場合かよ~……ブッ飛ばしてたのは確かだけど……」
そのとき、甲板を歩き回っていたブルックが、一本のロープを拾う。
「おや? このロープ……。あの~皆さん、あの海賊の船長さん知りません?」
「え?」
「あ~! そういやすっかり忘れてたな!」
「どこ行ったんだ?」
「この層に着いてからは見てないわね」
「下降流のときに振り落とされたんじゃねぇか? 縛ってたわけだし……」
「いえ、それが、ロープはこの通り解いていたようで……」
「えっ、じゃあ船内に居るってこと!? ヤダァ~。ちょっと誰かティオ呼んできてよ~、見つけてもらわなきゃ」
「それが出来りゃ苦労してねぇっての……」
……その、噂の海賊船の船長・カリブーがどこに居たかというと……
(ケヒヒ~ン、ご希望通り女部屋へ潜んでやろうか~? しっかし、船長始め怪物3人がいなくなったのはラッキーだったぜ……麦わらの首を取れねぇのは残念だが、まァコイツらの首だけでも相当な額だァ、ここは焦らず慎重に、魚人島に着くまではこの樽の中d―――)
「アウ! いたぞ~!」
「ケヒッ!?」
フランキーが一流の腕で、カリブーが詰まった樽の蓋を瞬く間に塞ぐ。
「オ~~フ! オフ! 畜生! しィまった~ァ! 何てこった~ァ!」
「ヨホッ、こんな樽の中に居たんですか! どうやって?」
「どうやらコイツも能力者だ。体がドロドロに溶けて原型を失ってやがったからなァ。コイツが馬鹿じゃなきゃ危なかったぜ」
「ぬぁぁぁ出してくれェ海パンの旦那ァ! 俺ァアンタの
フランキーはカリブーを無視して、舵輪のある船首へと戻る。
その途中、ぐったりしているチョッパーを見つけた。
「ァン? 何だチョッパー、どうした?」
「わかんねぇ……なんか急に、暑くなってきて……おれ暑いのダメだァ……」
少し離れたところで、ウソップもコートを脱ぎ棄てている。
「アッチ~ィ! 前方視界を奪われたぞ! 煙みてぇなのが何本も立ってる!」
ナミが慌てて欄干に駆け寄った。
「これは……まさか熱水鉱床! ここは海底の火山地帯なんだわ!」
「なにィ!? そんなモン噴火したら即死じゃねぇか! すぐここから離れるぞ!」
サニー号は、『ちょっとクー・ド・バースト』を使いながら、何とか火山地帯を抜ける。
再び暗闇の中を進み始めると、チョッパーは泣きべそをかきながら欄干に項垂れた。
「ぐすっ……こんなトコじゃ生きてられねぇよルフィたち……おれ悲しくなってきた……2年ぶりにやっと会えたのに……」
「馬鹿言うなチョッパー! アイツらが簡単に死ぬかよ!」
「おう……。……ん? あれ何だ!? ものすげぇ光ってるけど! 魚人島かな!? ルフィたち、もう着いてたりしないか!?」
ナミが眩しそうに光を見て、首を傾げる。
「まだ3000mも潜ってないわよ?」
フランキーが、お得意のニップルライトで文字を送る。
「オ・マ・エ・ハ・ダ・レ・ダ」
その頭をウソップがべしっと叩いた。
「どこで発行信号送っとんじゃ!」
「んー、返答がねぇな」
「ったりめぇだろ! 誰が答えんだンな変態信号に!」
「相手の姿は見えるか?」
「う~ん、まだ見えないわね、眩しすぎて……」
なんて言っているうちに、光の真正面まで来てしまった。
魚人島か、はたまた何かの生物が発光していると思っていた一味は、船の下で待ち構える巨大な魚の口を見つけ、青ざめる。
「ちょっ……」
「「「チョウチンアンコォォォ!?」」」
「騙された!」
「深海のハンターに釣られましたよ! マズイです!」
バクン、と閉まる大きな口。
サニー号は間一髪、食べられずに済んだ。
「あっぶね~! ……ってぎゃああああっ!! 前にもなんかいるゥゥゥ!?」
ウソップの叫び声に釣られ、全員がそちらを見れば、大きな人間と思しきものが、海山の合間からこちらを覗いていた。
「何よあれ!」
「魚人!? いや、ヒレがねぇぞ!」
「人間か!?」
「人の姿をした海の怪物といやあ……」
「「海坊主だァァァ!!」」
海坊主と思しき巨大な人間は、その大きな拳を振り上げる。
魚類の攻撃と違って、これは逃げられそうもない……
「ぎゃああああっ船をひっくり返される!」
"ヒュッ、ボコッ!"
「くらっ、アンコロ!」
「「「……え?」」」
殴られたのは、アンコウの方だった。
「そっち!?」
海坊主はガミガミとアンコウに説教し始める。
「だめらろう! 船は食っちゃいけん! 何ろ言うたら分かるんら! キャプテン・バンらー・れっケン様に怒られるろ!」
その様子を見つめて、ナミは呆然とした。
「……な、なに……助けてくれたの?」
すかさずウソップがナミの腕を引く。
「ンなモンどっちでもいいだろ! 逃げよう! どっちにしろ逃げよう! どっちも怪物であることに変わりはねぇ!」
と、そのとき……
『♪死人に口なし欲もなし~、烏も飛べねぇ黒国じゃあ~』
どこからか、唄が聞こえてきた。
嫌な予感がして振り返れば、船体も帆もボロボロの巨大ガレオン船がゆらゆらと漂ってくる。
「うそ、でしょ……っ」
「まさか、海底にも……っ」
「ゴースト・シップゥゥゥ!?」
「ってオメェがビビんじゃねぇよブルック!」
「いえいえアレは本物ですよ!? あの帆を見て下さい! 有名な幽霊船、フライングダッチマン号! 数百年前、ある
その、幽霊船として名高いフライングダッチマン号から、低い声が轟いた。
「アンコロ、ワダツミ……船は食っちゃあ宝が取れねぇ……叩き落とせェ!」
「分かったら~!」
「うわあああっ海坊主が殴ってくる! やっぱ敵だったァァァ!!」
「フランキー! クー・ド・バーストで逃げて!」
「いや、無理だ! さっきので燃料切れだ!」
「えええええっ!?」
「無理無理もう無理! 死ぬゥゥゥ!!」
ウソップとチョッパーが互いに抱き合い、大号泣し始めた、そのとき……
"バキィッ!"
海坊主が殴り飛ばされた。
よく見れば、殴った主はクラーケン。
「えええええっ!? 何で!?」
クラーケンは海坊主に連続パンチをお見舞いする。
"ズドドドドドドドッ!!"
「ぶべごがびべばぶべ!」
海坊主は、自分より何倍も大きいクラーケンの攻撃に、成す術がなかった。
「おーい! もういいぞ! やめろ!」
海の中でも不思議と通る大きな声。
クラーケンはピタッと動きを止めた。
聞き覚えのありすぎるその声に、一味は破顔して諸手を挙げる。
「うおおおおおっ! ルフィ~! ゾロ~!」
「サンジ~! ティオ~!」
「生ぎででよがっだァァァ!!」
暗い海の中を、小さなシャボンがふよふよとサニー号へ近づいて来た。
「お~~~いお前ら~! やっと追いついた~!」
「んナミさ~ん! ロビンちゅわ~ん!」
「……ったく、世話が焼けるぜ。
「はぐれ、たの、こっち。ばか」
「ぁあん?」
小さなシャボンはサニー号のシャボンに融合し、ルフィたちを甲板へと吐き出す。
「ぷは~っ広い! わが家が一番だ~!」
3人は存分に体を伸ばし、ティオも人間の姿に戻って伸びをした。
「いや~、俺とサンジのシャボン玉割れちまってよ~、ゾロん家に逃げ込んでたんだ~。アハハ! 危うく溺れて死ぬとこだった!」
「もう! 心配かけないでよね!」
「ル~フィ~~! 不安だったぞ おれ~! うあああああん!!」
「アウ! すげぇ生命力だぜオメェら! よく船まで自力で戻ってきたもんだ!」
「おう! ティオがサニー号の場所分かったからな! あんまし迷わなかったぞ~!」
「ていうか、ホントに手懐けちゃったわけ? あの怪物ダコ……」
「当たり前だ! そのためにわざわざ力の抜ける海まで出てったんだろーが! コイツで上級者の航海するんだ~俺は! な! スルメ!」
「イカみてぇな名前だな……」
「しかし、船を引くってより、潰されねぇように注意を―――」
"ゴゴゴゴゴゴッ……"
「「「?」」」
何やら、嫌な音が響き始めた。
一気に赤く染まっていく海底を、皆が揃って見つめる中、ナミが逸早く反応する。
「まずいわ! 海底火山が噴火する! ルフィ! クラーケンにすぐここから離れるように言って!」
「おう! お~いスル「いいや待った、その必要はねぇみてぇだ! もう脇目も振らずに走り出してる! 伝説の怪物がものすごい形相で!」
「助かる~ゥ! 案外気が合いそうね!」
「ん~、でも俺、噴火見てぇ!」
「何言ってんのよおバカ!」
「船の前方へ避難せよ~~!」
「変わんないわよ! たった数十メートル!」
"ドゴォッ"
勢いよく、海底火山からマグマが噴き出した。
途端、海底の温度が急激に上昇を始め、温度差で海流も渦を巻き始める。
「あちィィィィ!!」
「とにかく逃げてスルメ! このまま真っ直ぐ! あの海溝へ! その先に魚人島があるわ!」
「えええええっ真っ暗じゃねぇか! こんなとこ入んのかァ!?」
「後ろは噴火! 前は暗闇! もう生きて地上に帰れる気がしねぇよ!」
前後双方向からの脅威に怯えるウソップとチョッパー。
彼らの背中を押すのは、いつだって船長だ。
「飛び込めスルメ~! 魚人島へ!」
ルフィの掛け声と同時、スルメは深くて真っ暗な海溝へ飛び込む。
それを追うように、噴火の爆発音が続いた。
"ドォンッ、ドドッ……"
その噴火の衝撃で、巨大な岩が海溝へと転がり落ちてくる。
「何だありゃ! 岩か!?」
「ただの岩じゃないわ……土石流よ! 避けてスルメ!」
そうは言われても、重たい土石流の方が落下速度は断然速い。
逃げ切れねぇな、と思ったゾロは、僅かに目を細め、隣にいたルフィの肩を叩いた。
「ルフィ、俺の足掴んでろ。あの石、シャボンから出て斬ってくる」
「ん? おう! 任せろ!」
ルフィが満面の笑みでゾロの足を掴む。
しかし、意気揚々と刀を構えるゾロの頭を、ティオが軽く蹴り飛ばした。
"ゲシッ"
「ばか、そと、でるな」
「痛ってぇな、ルフィが掴んでんだから戻ってこれんだろ?」
「そういう、もんだいじゃ、ない。もう、ここ、8000めーとる。そと、でたら、ぺちゃんこ、なる」
「はぁ? ンなわけ……」
「駄目よ、ゾロ」
ティオの制止だけでは止められなさそうで、ロビンが手を咲かせてゾロを甲板に縛り付けた。
「海は深くなるほど水圧が増すの。どんなにあなたの体が頑丈でも、大自然の力には敵わないわ」
「……。……じゃあどうするってんだ?」
ゾロは顎でくいっと、降ってくる土石流を指す。
「それは……」
「必殺・緑星……サルガッソ!」
"ボフンッ!"
突然、海中に海藻が出現した。
どうやらウソップが何かしたらしい。
「一瞬の足止めだ! 今のうちに逃げろスルメ!」
スルメは間一髪、土石流から逃れる。
「すっげぇなァウソップ!」
「やるじゃねぇか!」
ゾロもニヤリと口角を上げ、抜こうとしていた刀を収めた。
「へぇ」
ティオはホッとしながら海中を見上げる。
そして……
「あ」
1つだけ、岩が落ちてくるのに気づいたが、見えた時には遅かった。
"ガンッ"
「え、ちょっと、嘘でしょ!?」
「「「うわあああああっ!!」」」
「結局こうなるのかよォォォ……」
岩が頭に直撃し、気を失ったスルメは、サニー号を抱えたまま真っ直ぐ海底へ落ちていった。