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42. 深海大冒険
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「うっひゃっほ~~~う!!」
サニー号が必死に下降流の中心を進んでいる間、ルフィたちの小さなシャボンは、抗う術もないまま下降流に揉まれていた。
ルフィは楽しそうだが、その肩にしがみついているティオは、体にかかる圧力を何とか堪えている。
「うひゃひゃっ! 楽しいなァ~海流滑り台!」
「っ……そんな、のんきな、こと……」
"ビュオッ、バシンッ!"
「「!?」」
クラーケンが握り潰していた船の破片が、海流の中を飛んできてシャボンを掠めた。
斬撃などに弱いシャボン玉は、いとも簡単に割れてしまう。
「ごぼぼがっ!?」
ルフィとティオは海に投げ出された。
ボンッ、とティオは変身まで解けてしまう。
それを、ゾロとサンジは見逃さなかった。
「ヤベェっ、2人とも能力者じゃねぇか!」
「俺が行く!」
サンジが
何とかまだ、ティオがルフィの服を掴んでいるので、2人一緒にくるくる回っていた。
引き剥がされて流される前に、サンジは2人を捕まえる。
(よし……あとは戻るだけっ)
……と思って振り返ったが、シャボンがない。
ゾロが顎でくいっと背後を指すので、振り向いてみれば、中身が無くなって軽くなったシャボン玉は、逸早く海流に攫われていた。
2人を連れてあれを追いかけるのは自殺行為だろう……
サンジは仕方なく、ゾロのシャボン玉の方へ走り、ひとまず2人の頭を突っ込ませた。
「ぶはっ、ゲホッゲホッ!」
「けほっ、こほっ」
「ったく、何やってんだよ揃いも揃って」
ゾロは呆れ顔で、2人の首根っこを掴んでシャボンの中へ引き上げる。
続いて、サンジもシャボンの中へ入ってきた。
「はぁ……チッ、やっぱ
「んじゃお前は出たらどうだ? 鼻血コック」
「ぁあん?」
「ゲホッ、サンジ~、ありがとな~」
「まったく……2年前と変わりゃしねぇな、キャプテン」
「おい、お前さっさと動物になれ。シャボンが狭い」
「……むちゃ、いわない、で……からだ、かわかないと、むり」
「ぁあ? タオルなんかねぇぞ」
ゾロは腕に縛り付けていた黒手拭いを外し、ティオの顔をぐりぐりと拭いた。
「うぶっ……」
サンジも、少しでも軽くするために服の水を絞り、まだ伸びているルフィの服も絞ってやった。
「しっかし、暗いな……光が届かねぇってことは、相当深くまで潜ったってことだ」
「にししっ! あの海流滑り台、スゲェ面白かったな~! もっかいやりてぇ!」
「馬鹿言ってんなカナヅチのくせに。……ん~、ナミさんたちの"声"は聞こえねぇな……ティオちゃん、サニー号の場所、分かりそうかい?」
「ん。こっち」
暗くて指を差しても見えないので、ティオはサンジの手を取って方角を指した。
「助かるぜ。さすがティオちゃん」
「とう、ぜん」
……きっとドヤ顔をしているのだろうが、暗いので誰にも見えない。
「ちょうど正面向いてるのはルフィか……よし、ルフィ、バタ足で漕げ。この先にサニー号がいる」
「ん? おう!」
サンジに言われるがまま、ルフィはよちよちとバタ足を始めた。
だんだん体が乾いてきたティオは、いつもの
それだけでも、シャボンの中が随分広く感じられた。
「るふぃ、ちょっと、みぎ」
「おう! 分かった!」
「馬鹿、そっちは左だ」
「ハハッ、悪ィ悪ィ!」
時々ルフィのバタ足の方向を修正しながら、真っ暗闇の中を進む。
だんだん眠くなってきたティオは、まったりとゾロの頭に全身を預け、覇気で周囲を探っていた。
ずっと遠くでギュッと固まっている仲間たちの"声"を除けば、感じ取れるのは魚類たちの"声"だけ。
実際に聞こえる音は随分と静かだが、ティオにとっては人混みと大して変わらない騒がしさだった。
やがて、魚たちのヒソヒソとした喧騒で眠気が増してきた頃……
「!」
ティオはビクっと跳ね起きた。
それを感じ取ったゾロは、閉じていた目を開ける。
「どうした」
ティオはゾロの頭の上にしっかりと四つ足で立ち、じっと暗闇の向こうを見つめていた。
『―――だ……すぐ……』
ぐわんぐわんと、響くように聴こえてくる大きな"声"。
ルフィも何かを感じたのか、首を傾げた。
「……ん? 今誰か喋ったか?」
「いいや、誰も喋ってねぇが?」
ルフィとサンジの会話を小耳に挟みながら、ゾロは頭上のティオを見上げる。
『―――もうすぐだ』
『王さまが、来る―――』
声の主が近くなったのか、ティオは、いきなり頭が割れるような"大声"を感じた。
「……っ」
思わず、ゾロの頭に軽く爪を立ててしまう。
ゾロは眉を顰め、少し声を荒らげた。
「おい、何してんだお前」
「……なんでも、ない」
「ぁあ?」
「……おおきい、こえ、きこえてる、だけ」
「声だァ?」
ティオは、これが海王類かと悟り、自分の中で覇気を調節して、入って来る声量を押さえ込んだ。
『もうすぐ、来るよ』
『王さまが、来る』
『今度こそ』
『笑って、ボクらの、王さま―――』
響き渡るようだった嬉しそうな大声は、次第に遠ざかっていった。
ティオはホッと息をつく。
「なぁティオ、やっぱ誰か喋ってたよな?」
ルフィにあっけらかんとした顔で訊かれ、ティオは暗闇の中、僅かに目を細めた。
「ん、そうだね」
「こんな暗がりに誰かいんのかな」
「もう、とおく、いっちゃった。……でも、ちかいうち、また、あえるよ」
王様が来たと、海王類たちは嬉しそうに言っていた。
ならば、今世の人魚姫がポセイドンだ。
そして、彼女の力を正しく導くのは……
「そうなのか! どんな奴だ?」
「おおきい、やつ」
「へ~! デッカイ奴か! ……ん、ああ! デッカイ奴! 忘れてた!」
「何だよいきなり大声出しやがって。うるせぇな」
「あのタコどこ行った!? せっかく飼おうと思ったのに!」
「タコなんか探してる場合か。俺たちですら船に帰れるか分かんねぇってのに」
「つれて、いきたい? そこに、いるけど」
「……」
「……」
「……」
「「「はっ!?」」」