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40. 六式と覇気とゾオン系
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元CP9とティオがグアンハオに到着してから、およそ3週間。
彼らは来る日も来る日も、各々の修行に励んでいた。
ティオの読み通り、見聞色の習得が最も早いのは、ルッチ。
たった3週間で、軽い組手であれば、おおよその攻撃を躱すか受け流せるようになった。
次に習得が早いのは、こちらもやはりと言うべきか、カク。
7人の中で最年少でありながら、道力2200を叩き出した才能は
今は、カクVSブルーノ、カリファVSジャブラ、フクロウVSクマドリで組手をしている。
そしてルッチはというと……
「……」
「んにっ……フシャーッ!」
木陰に作った休憩用のベンチに座って、両腕を組み、メンバーの動きを眺めながら、豹の尻尾を出現させ、ねこじゃらしのように小刻みに揺らしていた。
その尻尾じゃらしにじゃらされているのは、ティオ。
「フッ……フーッ……」
……一方、ブルーノの拳を受け流したカクは、一旦 目隠しを外していた。
「ふーっ、1分の小休憩じゃ」
「分かった」
まだ慣れない目隠し組手で荒れた息を整えつつ、無意識にティオの様子を見る。
「ん? 何じゃ、また失敗したのか、はははっ」
カクの視界に映ったのは、ルッチが全く見向きもせずに尻尾を動かし、ティオをじゃらす姿だった。
ティオは今、人の姿でありながら、猫の耳と尻尾が生え、両腕が猫の前足に変化している。
人獣型の修行を始めてからというもの、失敗するたびにこうして理性を失くし、獣の性質に引っ張られてしまっているのだ。
ブルーノがジトっとした目で、カクと同じ方を見た。
「……俺はルッチの殺気が怖いんだが……」
「ん? あぁ、はははっ、あれはわしらへの牽制じゃな。"こっちを見るな"と言いたいんじゃろう。あとは、"これはあくまで見聞色の修行"と言いたそうじゃな」
全く見向きもせず、尻尾をティオに捕らわれないように動かすのは、見聞色の修行と同じようなものだ。
「フーッ……フッ!」
素早いルッチの尻尾を追いかけ、ティオはルッチの周りをぐるぐる飛び回っていた。
……しかし、体力のないティオが、長時間そんなことを続けられるわけもない。
5分も じゃれれば、飽きたのか、疲れたのか、ベンチの上で毛づくろいを始めた。
ルッチは微動だにせず、尻尾を仕舞う。
「……」
しばらくすると、膝に何かが乗った。
ジロリと見下ろせば、丸まったティオが頭を乗せて寝ている。
「……」
ルッチの眉間にシワが寄り、一層 険悪な顔になった。
……それでも、跳ねのけたり落としたりはしない。
ティオも、本能なのか見聞色なのか、ルッチが邪険にしないのを分かっているらしく、呑気な顔で寝こけていた。
それから、約10分後。
ティオの猫耳と尻尾と両前足は、綺麗に消え去った。
途端、本人は目を覚ます。
「……。……?」
一瞬、自分が何をしていたのか思い出せなかった。
頬に、あまり覚えのない寝心地の膝を感じる。
寝ぼけた半目の青い瞳で、上を見上げれば、険しい表情で6人の修行風景を眺めるルッチの顔があった。
「……。……てぃお、また、しっぱい、した?」
「……あぁ」
「……そう」
何だか気だるいなぁと思いながら、ティオは身を起こし、グッと伸びる。
猫化して飛び回っていたのだから、疲れがあって当然だ。
と、そのとき……
「……」
覇気が、島の外からやって来る多数の人の気配を感知した。
ティオはもう一度、ルッチを見上げる。
「……何だ」
「てき。かいへいたい、きた」
「階級と人数は」
「たいさ、ひとり。ちゅうさ、3にん。しょうさいか、と、さいふぁーぽーる、あわせて、26にん」
「フン、ナメられたものだな」
ルッチは嘲笑するような顔で立ち上がり、6人に向けて声を張った。
「おい」
「「「「「「?」」」」」」
「客だ」
その一言だけで、6人の間にピリッとした空気が流れる。
説明はなくとも、敵襲であることを全員が察したのだ。
海岸の方へと歩き始めたルッチの後へ続き、6人も山を下り始める。
ティオがそれを眺めていると、最後尾を歩いていたカクが、すれ違いざまに頭に手を乗せてきた。
「分かっておるとは思うが、お前さんは顔を見せてはならんぞ?」
「(コクン)」
青い瞳を見下ろして口角を上げたカクは、何度かポンポンとティオの頭を撫でてから、6人の後を追いかけていった。
「……」
森の中にひとり残されたティオは、おもむろに空を見上げる。
そよそよと、風が辺りの木の葉を揺らし、長い金髪も揺らした。
覇気で7人の気配を追いかけてみれば、ひしひしと伝わってくるのは、麦わら一味でよく感じていた感情。
何かを"守りたい"と思っているときの仲間たちと同じものだ。
「……」
"タンッ"
ティオは、近場の木の枝まで飛び上がった。
そのまま、次々に上の枝へと飛び上がり、てっぺんまで昇っていく。
木の上は風がより一層強く、容赦ない潮風に思わず目を細めた。
「……」
海岸に見える、一隻の軍艦。
そこから、海兵やサイファーポールの黒服たちが、一斉に上陸してくる。
29人の彼らを率いているのは、ベリベリの実の能力者、ベリーグッド大佐だ。
(……あの、にんずう……ここに、しーぴーないん、いると、かくしんして、た、わけじゃ、ない)
世界政府と海軍は、元CP9たちが向かいそうな場所を幾つかピックアップし、小隊を送り込んで手当たり次第に探しているのだろう。
「全員、ここに元CP9が逃げ込んでいると想定し、心して掛かれ! 奴らの中には、歴代最強と称されるロブ・ルッチがいる! 決して気を抜くな!」
「「「はっ!」」」
ベリーグッド大佐の一声で、海兵たちは銃を握り直して息を呑んだ。
ひとまず、サイファーポール候補生たちの指導教官に話を聞くため、グアンハオ唯一の建物を目指し、走り出す。
……しかし。
「ケッ、ナメられたもんだなァ。警戒すんのはルッチだけかよ」
響いた声に、走っていた足が自然と止まった。
全員が恐る恐る顔を上げれば、正面の森の中から、7つの影が恐ろしい瞳でこちらを見下ろしている。
その影たちは、人間というにはあまりにも異様な、獣のような姿をしていた。
「ぜ、全員構えろォ!!」
誰かの一声で、弾かれたように海兵たちは銃を構える。
7つの影の中央で、見下すような瞳が細くなった。
「
……故郷の平穏を、壊させはしない。
ルッチの意図を汲んで、他の6人が襲い掛かった。
"…………ドドッ……ドォンッ"
海岸で響き渡る轟音。
しかしそれは、グアンハオの島内部で修行を続ける子供たちには、聞こえない。
7人は、CP9らしく、厄介事を秘密裏に処理していた。
「……」
木のてっぺんから一部始終を眺めていたティオは、頃合いを見計らい、無表情のまま、一歩踏み出すように木の枝から落ちる。
"ボンッ……バササッ"
地面に着く直前、濃紺の翼が重力を押しのけ、舞い上がった。
ティオは青空の中へ上昇すると、かつて仲間だった者たちが次々に倒れていくのを見つめる。
(……もう、なにが、せいぎ、なのか……)
今の自分の立場からすれば、海兵やサイファーポールたちは、敵。
けれど、彼らはただ、上司からの命令に従って出奔者を捕えに来ているだけだ。
世界の基準に従うのなら、正義は彼らにあり、
(……れきし、いつも、きょうしゃの、てのひら)
果たして、長年に渡り『正義』に浸かってきたこの世界を、本当に2年後にひっくり返すことは出来るのか……
ティオは、しばらく空中で旋回していたが、戦闘が終結してくると、徐々に降下していった。
"バサッ……"
翼で重力を和らげ、軍艦の甲板にいたカクの肩に降り立つ。
「ん? 何じゃ、来てしもうたのか。顔を出してはならんと言うたじゃろう」
「もう、いしき、あるひと、いない、から」
大佐を含む30人は全員倒され、綺麗に7つの声だけが残っている。
「おい、元・伝承者」
甲板の中央付近から、ルッチの呼ぶ声がした。
ティオとカクがそちらを見れば、メインマストの根元で、電伝虫の受話器を手にしている。
「
要するに、軍用回線を使ってスパンダムと話したいということだ。
ティオはカクの肩から飛び立ち、ルッチの肩へと降りる。
「すぱんだむ、ろびん、に、せぼね、やられてた。まだ、きっと、びょういん。あの、ななひかり、なら、ぜったい、びっぷるーむ。せいふ、めいん、かいせんから、びょういん、とりつぎ、してもらって、びょうしつ、つなぐ。いまから、いう、とおり、かけて」
海軍本部に掛けるよりも、政府施設に掛ける方が、少し面倒な手順が必要だ。
ルッチは、ティオが指示する通りに、電伝虫のダイヤルを回した。