40. 六式と覇気とゾオン系

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覇気の説明を受けてから数時間。

元CP9メンバーは、時間ごとに相手を交代しながら、目隠しで組手をするのを繰り返した。

やはり、最初からティオのように気配を掴める者はおらず、あのルッチでさえも、7割近い打撃をくらってしまっている。

ジャブラに至っては、遊ばれているのか、割と本気の攻撃を幾度となくくらわされていた。

獣厳じゅごん

「ぶぐぉっ!? てめぇフクロウ! なに本気で攻撃してんだ馬鹿野郎!」

「本気の方が訓練になるだろ~、チャパパ~」

「後で攻守交代したら覚えとけよ!」

そうしてギャアギャア騒ぎながら、6人3組が組手している様子を、ティオは、交代待ちかつ休憩の7人目と一緒に眺める。

今は、カクだ。

「はぁ……こうして傷を受けるのも久々じゃな」

カクは、カリファの蹴りをくらって腫れた頬に、水で絞ったタオルを当てていた。

「わしらの中で、誰が先に見聞色に目覚めるかのう」

6人を眺めてそう呟いたカクに、隣に立っていたティオは、迷いなく名前を答えた。

「るっち」

「ふははっ、やはりそうか」

「ひとり、だけ、のみこみ、だんとつ、はやい」

徐々にではあるが、回避率が上がっている。

CP9史上最強の称号は、やはり伊達ではない。

「ところで、お前さんの修行はどうするんじゃ?」

ティオが無表情のまま、カクの方を見ると、真ん丸の黒い瞳と視線が合った。

「わしらに覇気を教える代わりに、お前さんは六式とゾオン系能力について、わしらから教わりたかったんじゃろう?」

「(コクン)」

「お前さんが今使える六式は確か、剃と指銃だけじゃったか。残り4つ、ひとまず わしが教えるか?」

ありがたい提案だが、ティオは首を横に振った。

てぃお、のこり、よっつ、おぼえなかった、わけじゃ、ない。……できなかった」

カクは、その"できなかった"理由に思い当たる節があるのか、少し遠い目をする。

「まぁ、無理もないじゃろう、その体格ではなぁ」

六式とは、体術を極めた末に体得できる境地。

その習得は肉体的なポテンシャルに左右されやすく、体が小さいティオには、比較的 体への負荷が少ないソル指銃シガンの体得がやっとだった。

「いまの、ままじゃ、ろくしき、おぼえ、られない」

「なら、まずは筋力を底上げするところからじゃな」

ティオは再び首を横に振る。

「それも、むり。できるなら、やってた。……てぃお、これいじょう、せいちょう、できないから」

耳を疑う言葉に、カクが隣を見下ろせば、ティオは自分の両手を見下ろしていた。

「成長できん、じゃと……?」

しかし、ティオは詳細を話すことなく、カクの方へ顔を向ける。

「まず、あくまのみ、のうりょく、きょうか、する。そしたら、きんりょく、あがる」

数ある悪魔の実の中で、身体能力の強化において、ゾオン系の右に出るものはない。

「できるか、わからない、けど、じんじゅうがた、ためす」

ゾオン系には、通常形態である人型、ベースの生物に極めて近い獣型、中間となる人獣型の3タイプが存在する。

……しかし、これまでティオが変身していたのは、獣型のみ。

それも、"近い"なんてものではなく、動物そのものの姿に変身していた。

カクは、セント・ポプラでルッチから聞いた話を思い出し、好奇心の向くままに尋ねる。

「お前さん、人獣型にはなれんかったんじゃな。……それは、悪魔の実が天然物ではないからか?」

「……」

ティオはゆっくり顔を上げるが、カクを見ることなく、組手を続ける6人を眺めた。

「しってた、の? てぃお、の、けいれき」

「いーや、さっぱりじゃ。お前さんが食うた実が天然物ではなかったことだけ、ルッチから聞いてのう」

ティオの目が、僅かに細くなる。

てぃお、たべさせ、られた、み……たべては、ないけど……なまえ、『S-26型』」

「そりゃまた随分と、実験じみた名前じゃな」

「じっけん、だもん」

「実験によって生み出された悪魔の実じゃから、5つの動物に変身できるんじゃな?」

「(コクン)……そして、じっけん、だからこそ、わかってないこと、おおい。じんじゅう、なれるか、どうかも、わからない」

「ほう?」

「じんじゅう、どうやって、なるの?」

「どう、と言われてものう……。わしは悪魔の実を食うたときに、自然と使い方が頭に浮かんだんじゃ。他の奴らも大差ないじゃろう。参考にならんで悪いが」

「じゃあ、じんじゅう、と、けもの、なるときの、かんかくの、ちがい、おしえて」

「ん〜……それもなかなか難しいが……」

カクは、右腕だけをゆっくりキリン人間に変えた。

「人獣はこうして、人の体にキリンを上乗せする感覚じゃ。獣型は体全てを変形させとる感覚じゃな」

「うわのせ……」

ティオは自分の両手を見下ろし、試しに狼の両前足を上乗せしようと試みる。


"ボンッ"


グッと拳を握り、力を込めた瞬間、いつも通りに変身してしまった。

銀色の小さな狼が現れる。

その眉間には、薄くシワが入った。

「……むう」

ぷくっと頬をふくらませる小さな狼に、カクはフッと笑う。

「一朝一夕にはいかなそうじゃな?」

「もっかい、やる」

「おー。頑張れ頑張れ」

カクが腕を組んで見守る中、ティオは人獣型になるべく変身を繰り返した。

 
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