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40. 六式と覇気とゾオン系
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キャンディー海賊団の船を奪い、海へ出た一行は、晴れ空の下で順調な航海をしていた。
ガレーラ・カンパニーで働いていた3人は、船の構造だけでなく、基礎的な航海術の知識も持っている。
操船には特に問題はなかった。
しかし……
「ん? 何じゃこの船は。ヤードが渋くて動きが悪いぞ」
船の質は、元・ガレーラの目を納得させられなかったらしい。
「少し削って調整した方が良さそうじゃなぁ……」
カクが、帆の向きを変えるためのロープを引いたり緩めたりしていると、隣にルッチが来た。
「渋くても動くだろう。メインとミズンが動くうちは、フォアのヤードは後回しでもいい。それより、船底の肋材の一本にヒビが入っている。補強が先だ」
「ん、あぁ、フクロウの奴が床板に派手に大穴空けとったからのう、その影響じゃな……。基礎が傷ついとるんなら、この船はグアンハオまでの乗り捨てか」
2人はペラペラと話しながら、港で積み込んだ工具と木材を持って船底に降りていく。
カクはともかく、あれほど不機嫌だったルッチも、船のこととなると僅かな綻びも見逃せないらしい。
2人の会話を、動物の驚異的な聴力で聞くティオは、甲板の隅で丸まって寝転がっている。
長い金髪は、返してもらった羽ペンでしっかり結われていた。
「……」
いつもなら昼寝している頃だが、上手く眠りにつけない。
ここには枕になるゾロも居なければ、安心できる仲間たちの気配もなくて、何となく落ち着かないのだ。
せめて、誰かが傍に居てくれれば、人肌の温もりで少し安心できるけれど、皆、船の補強や操船、整頓のために忙しい。
硬くて冷たい、床板の上で。
ティオは身を丸め、楽しい仲間たちの記憶の中へ潜っていく。
まるで映画のように鮮明に思い出せる、仲間たちとの楽しい日々。
……けれど。
暖かい記憶に
その晩。
8人は船内のダイニングで、テーブルを囲んだ。
元々 大所帯の船のため、8人では持て余すほどに広い。
「昼間やってた船の修繕は終わったのか~? 」
フクロウが訊くと、ルッチがワインを傾けながら答える。
「出来る限り補強はした。だが、この船は目的地に着くまでだ」
「そうか~」
ジャブラが肉にフォークを突き刺し、ゆらゆらと振る。
「グアンハオまで
ふと、カリファがナイフとフォークを止めて、自分の斜め前を見た。
先ほどから、フォークが皿の何もないところを突いたまま、動かなくなっていることに気付いたのだ。
「ちょっと、カク」
声を掛けると、正面に座っていたカクが、談笑を切り上げてきょとんとした顔を向けてくる。
「何じゃ?」
カリファは、視線でカクの隣を指した。
釣られてカクが隣を見れば、ティオの頭がこっくりこっくり舟を漕いでいる。
「うん? 珍しいのう。まだ眠くなるには ちと早い時間なんじゃが」
「疲れたんじゃないの? 船に乗ってから、ずっと甲板でゴロゴロしてたわよ」
「うーん、それなら寧ろ、昼寝も足りとるはずじゃが……」
カクは一度立ち上がり、ティオの肩を揺さぶった。
「おーい、眠いなら先に寝るか?」
「……ぅ……」
ティオは薄く開いたぼやぼやの目で、目の前の皿を見つめる。
(……びふ、てき…………のこし、ても……るふぃ、たべる……)
サンジの前で食べ物を残したくはないけれど、肉ならルフィが食べてくれる……
夢うつつにそんなことを思いながら、ティオは諦めて目を閉じた。
「うーん、こりゃダメじゃな」
カクは、ティオの手からフォークを抜いてその場に置くと、ひょいっと抱き上げ、小さな顎を自分の肩に乗せた。
「先に寝かせてくる」
そう言って、カクは船室の外へ出ていく。
それを、元CP9メンバーは皆、じっと見つめていた。
「どんどん父親感が増してくわね、アイツ」
「父親よりも爺さんの方がしっくりくるぞ~、チャパパ~」
「ブフッ、違げェねェ! ギャハハッ!」
一方、仲間たちから爺さん呼ばわりされているとは知らないカクは、ティオを抱えて、急ごしらえの女部屋へ向かっていた。
夜の海は穏やかで、半月の明かりが ぼうっと辺りを照らしている。
「…………ん……ぅ……」
寝ぼけているティオの両腕が、カクの首に回った。
幼子に擦りつかれるのは、悪い気はしない。
カクは、そのまま寝ておれ、と言おうとして口を開いた。
が……
「…………ぞろ……どこ、いってた、の……」
小さな呟きを聞いて、喉まで上がっていた言葉が消え失せる。
カクの首筋にすりすりと頬を寄せているティオは、その相手がゾロだと勘違いしているのだ。
サニー号でも、夕食のときに眠くなると、ゾロが女部屋まで連れていってくれていたから。
もちろん、"声"も匂いも別人のため、普段のティオが間違えることは絶対にない。
……けれど。
寂しくて、眠たくて、覇気も嗅覚も随分と鈍ってしまっていた。
「……」
カクは、ここで一言でも発しようものなら、ティオの夢が覚めてしまうと感じて、何も言わず、ただ小さな頭をポンポンと撫でる。
(……お前さん、本当に
意思を持つことを許されない人形とはいえ、政府に身を置き続ければ、今こうして、敵の懐で寂しく仲間の夢を追うこともなかっただろうに……
カクは、"自由"ほど苦しい世界は無いな、と嘲笑しながら、女部屋の扉を開けた。