夢主の名前を決めて下さい。
39. 約束
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
一方、その頃。
「さて、ルフィ君、今日からここが君の修行場だ」
レイリーが、ルフィを連れて島の中を歩いていた。
「すっげぇ~、山も樹も全部デッケ~!」
「そうだな。……大昔、ここには国があったという」
2人を取り囲む広大な森には、ロビンが好きそうな遺跡が垣間見える。
触れた瞬間に崩れてしまいそうな、その古い建造物は、ひとつ残らず森に飲み込まれていた。
「この島での生存競争に、人は敗れた。それほどに、この場所は苛酷な自然、天険の地だ」
「うははっ! 大冒険の匂いがする!」
"危険"と言われれば言われるほど、ルフィの好奇心は熱を帯びていく。
その心意気に、レイリーはロジャーの面影を見ながら、嬉しそうに口角を上げた。
癖で
「ふむ……猛獣の数が
それを聞いて、ルフィは しぱしぱと瞬きをしながら、きょとんとレイリーを見つめた。
「ティオも、よくそーいうこと言うんだよなァ。何でいるとかいねぇとか、数とか分かんだ?」
「あの子の場合はレベルが少々別格だが……君も、
と、そのとき……
"メキッ……バキバキバキッ!"
レイリーの背後に、巨大な樹木を押し倒しながら、樹木よりさらに巨大な象が現れた。
「出た出た! なんか出たぞ! レイリーのおっさん!」
慌てるルフィだが、レイリーは何事もないかのように話を続ける。
「いいか、ルフィ君。"覇気"とは全世界の全ての人間に潜在する力だ。気配・気合・威圧……それらの人としての当たり前の感覚と、何ら違いはない。ただし、大半の人間はその力に気付かず、あるいは、引き出そうにも引き出せずに一生を終える」
「こんなデッケぇ象 見たことねぇぞ! おいおっさん! 危ねぇって!」
「"疑わない"こと、それが強さとなる。これまで、ティオ君が使っているところを見てきただろう。それを思い出しながら、よく見ておきなさい。覇気は大きく2種類に分けられる」
「いや話してる場合かよ おっさん! ホントに危ねぇって!」
「大丈夫だ。象は鼻で、私の頭を右から狙っているだろう?」
「え……」
それは、ルフィにしか見えていないはずの光景。
レイリーは後ろを振り向くどころか、今、目さえ開けていない。
「相手の気配をより強く感じる力、これが、"見聞色の覇気"だ」
"ヒュッ、ドゴォッ!"
レイリーの頭を狙っていた象の鼻は、見事に
その動きは、ルフィの記憶を揺さぶる。
「これ……知ってるぞ……」
いつも すまし顔をして、背後からの攻撃や仲間のイタズラを、ひょいひょいと避けていたティオ……
空島で見た、未来を見通したようなエネルの回避能力……
女ヶ島で、自分の次の攻撃をピタリと言い当てていたサンダーソニア……
「空島にあるスカイピアでは、これを
「マントラ……聞いたことあるぞ!」
「そうか、君も空に行ったか……。さて、次に見せるのは"武装色の覇気"だ。これは、見えない鎧を着るようなイメージを持つといい」
"ドシン……ッ"
先ほど、レイリーに攻撃を
そして、今度は前足を振り上げ、踏み潰そうとしてきた。
対するレイリーは、ただ真っ直ぐに手を伸ばす。
"ドゴォッ"
「プオォッ!?」
特に、力を込めたようには見えなかった。
それでも、巨人のように大きな象は弾き飛ばされる。
ルフィは唖然として、その様子を見ていた。
「あれも知ってる……」
シャボンディ諸島で、
女ヶ島でも、マリーゴールドが同じように自分の攻撃を防いだのを覚えている。
ゴロンと転がった象を尻目に、レイリーはルフィの傍へ近寄ってきた。
「より硬い鎧は当然、攻撃力にも転じる」
"ピシッ"
「
突然のデコピンが、何故かとんでもなく痛い。
「痛ってェェ! 何だコレ! 俺ゴム人間なのに!」
「この力の有効な点はここだ。悪魔の実の能力者に対して、弱点をつくことを除けば、この武装色の覇気がこの世で唯一の対抗手段であると言える。ほぼ無敵に感じる
「あ! ティオがエネルや青キジや、黄猿に攻撃 当てられたのは……」
「他にも、武器に纏わせて使うことも出来る。君は、
「あ、あぁ……すっげぇ威力で、鉄の矢かと思ったぞ……」
「
"メキメキメキッ!"
「うおっ!? また来たぞ おっさん!」
懲りることなく、再びレイリーの背後に忍び寄る大きな影。
レイリーは眉のひとつも動かさず、ゆっくりと後ろを振り返った。
そして、キッと象を睨みつける。
「プォ……」
突然、象の巨体が震え始めた。
やがて、象は白目を剥き、その場に倒れ込む。
"ズズゥン……"
指一本動かすことなく象を倒したその力に、ルフィは あんぐりと口を開けて固まった。
「これが、相手を威圧する力、覇王色の覇気だ。この世で大きく名を上げるような人物は、およそこの力を秘めていることが多い。……ただし、この覇王色だけは、コントロールは出来ても、鍛え上げることはできない。これは使用者の気迫そのもの。本人の成長でのみ強化する」
「これ……シャボンディでおっさんがやってたヤツ……」
「そうだな。……だが、君も既に使っているんだぞ?」
「え……」
「今までの航海で、同じようなことが起きただろう。特に、マリンフォードでの戦いにおいては、一度や二度ではなかったはずだ」
「……」
「この力は、完全にコントロールできるまでは多用してはならない。周りにいる関係ない人間まで威圧してしまうからな」
「……」
「ん、どうした?」
いつでも元気なルフィが、突然 反応しなくなり、レイリーは首を傾げる。
すると、ルフィは両の拳を握って振り返った。
「すげェ……海賊王のクルーは、こんな怪物を手も触れずに倒すのか!」
「……ふ、はははっ、どうだ、少しは尊敬したか?」
「うん!」
「これからおよそ2年、君にはこの"覇気"の基礎を叩き込むつもりだ。本来は期間が短すぎるが、君は資質が強いからな、何とかなるだろう」
「そっか!」
レイリーは身を翻し、どこかへ歩き始める。
「さて、早速 今から始めるぞ。鍛えるとなれば、私は甘くないからな」
「おう! 望むところだ! ……あ、でもちょっと待った!」
「ん?」
「確か、島 着いて最初に言ってた、あの大根みてぇな白い樹のとこは、猛獣も来ねぇんだったよな?」
「そうだが?」
ルフィは一目散に、その大根のような樹の根元まで走る。
そして、樹を取り囲むように
「……海賊"麦わらのルフィ"は、ちょっと休業だ」
ポケットに入っていたレイリーのビブルカードも、帽子のリボンに挟む。
そして、様々な思いを巡らせながら、じっと麦わら帽子を見つめた。
そこに、遠くから声がかかる。
「おーい急げ! 時間がないぞ!」
「おう 分かった! よろしく、おっさん!」
ワクワクを抑えきれないまま、ルフィはレイリーの元へ駆け戻っていった。
「うーん……まずは言葉遣いを直しなさい。『お願いしますレイリーさん』だ。……いや、レイリー先生か……師匠?」
「よろしくお願いします! レイリー!」
「……まぁ何でもいいか。始めるぞ」
「おう!」
この日、人類史を飲み込んだ苛酷な島・ルスカイナに、数百年ぶりとなる人の声が響き渡った。