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37. 抜けない癖
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ティオは、ジャブラの服に前足の爪を食いこませ、何とか振り落とされないよう耐えていた。
「おっ、見つけたぜ!」
"ヒュッ……ドゴォッ"
まるで隕石のように、ジャブラは地面に降り立つ。
足元の石畳が、大きく凹んだ。
ジャブラが降りたこの場所は、多くの洋服店や貴金属店が並ぶ1番街の、裏通りだ。
通路には各店舗の裏口ばかりが並んでおり、人通りはほとんどない。
そんな薄暗い場所で、ひとり、背中を丸めてコソコソと手元で何かをしている男。
ジャブラが降ってきたその音で、男は肩を振るわせ振り向いた。
どこにでもいそうな、20代くらいの若い顔立ち。
その顔を見て、確信を持ったジャブラの口元が、ニヤリと歪む。
「よォ、さっきはよくも しらばっくれてくれたなァ?」
「は? ……。……あ、お前さっきの」
その男は、ジャブラが午前中に、ジャッキー・リングのスケッチブックを見せ、所在を聞いた住人の1人だ。
……そう。
ジャブラは知らぬ間に標的と接触していたが、顔が手配書と全く違ったため、気づかなかったのだ。
「ホームタウンに戻って早々盗みか?
ジャッキー・リングの手元には、握りこぶしほどの袋があり、中からアクセサリーが覗いている。
ジャッキーは、盗みの現場を押さえられたというのに、冷静に微笑を浮かべていた。
「シッシッシッ、お前、賞金稼ぎか?」
「ぁあ? 俺は政……いや、そうだな、賞金稼ぎみてェなもんだ」
「ほォ? シシッ、俺もナメられたもんだな……。お前、インペルダウンの業火に焼かれたことはあるか?」
「ぁあ? あるワケねぇだろンなモン。何が言いてぇんだテメェ」
「確かに俺は、一度海軍に捕まった。……だが、あの地獄のようなインペルダウンを生き抜いたことで、さらなる強さを手に入れたァ!」
ジャッキーは、被っていたマスクを剥ぎ取り、本当の顔を晒す。
若い顔の下から現れたのは、初老の男の顔だった。
続いて、ジャッキーは自分の服の中を探り、隠し持っていた
ナミのクリマ・タクトのように、節の部分を組み合わせて長い棒状にすると、慣れた手つきでクルクル回した。
「シッシッシッ、盗みばかりで名を上げる俺を、賞金稼ぎ共は弱ェと決めつけて
三節棍の先が、ジャブラの鼻先に向けられる。
「テメェもどうせ同じ口だろォ? 気をつけろ、俺は今や、1億600万の首だぜェ!?」
ジャッキーは地を蹴り、ジャブラ目掛けて三節棍を振り下ろした。
それを、ジャブラは半目で見上げる。
「シシシッ! 消し飛べやァァ!!」
"ガキョンッ"
「……。……は?」
三節棍は、見事、ジャブラの脳天に当たっていた。
……が、同時に、ぐにゃりと大きく曲がっていた。
「……な、なんだ……?」
ジャブラは盛大にため息をつく。
「麦わらのお
鉄塊によって、原型を留めなくなってしまった三節棍を、ジャブラは片手で掴み、グイっと引っ張った。
「うおっ!?」
ジャッキーは引っ張られるまま、前のめりに倒れていく。
そこに、ジャブラが片足を蹴り上げた。
「
"ザシュッ"
「が、はっ……」
飛ぶ斬撃が、ジャッキーの腹部を通り抜けていく。
大量の血が吹き出し、ジャブラには勿論、ティオの頬にまで、赤黒い飛沫が飛んできた。
ジャッキーは地面に倒れ込み、そのまま動かなくなる。
「チッ、張り合いねぇなァ……。ま、
淡々とそう言って、ジャブラはジャッキーの首根っこを掴んだ。
そのまま、亡骸を引きずって、口笛を吹きながら歩き始める。
目的地は海軍の駐屯基地だ。
「……」
規則的に揺れる、ジャブラの肩の上で。
ティオは、恐ろしさで固まっていた。
エニエス・ロビーでは、敵であった彼らの感情を細かく探る暇も、必要もなかったため、あまり分からなかったけれど、やはりCP9に配属されるような人間は、異常だ。
ジャッキー・リングを殺した瞬間、ジャブラの感情は一切揺れなかった。
海軍の将校たちでさえ、やむを得ず海賊を殺すときには、一定以上の動揺や葛藤を抱えるというのに。
ジャブラは、まるで殺しが生活の一部であるかのように、呼吸に等しく人を殺していた。
かといって、感情の波が常人と違うかと言われれば、そうでもなく、きちんと人並みに喜怒哀楽の合間で揺れている。
つまり、正常なまま、異常なのだ……
「あ、そういや俺ら、今は政府に追われてんだよな……海軍の駐屯基地に顔出すのはマズイか……」
ジャブラの独り言が聞こえて、ティオはハッとする。
もやもやと煙のように広がっていた恐怖を、心の片隅に押し込めて、平常心を装った。
「……べつに、もんだい、ない。ふつうの、かいへい、しーぴーないん、しらない」
「あー、そりゃそうか。俺ら暗躍機関だもんなァ、ギャハハッ!」
「でも、めだつ、から、ひと、いないとこ、とおって」
そう言って、ティオは人がいない道を覇気で探し、前足で指し示す。
ジャブラは上機嫌に笑いながら、示された通りに道を進んだ。
「案外使えるなァお前の能力。賞金首も初日で手に入れたことだし、
今にもスキップしそうな勢いで、楽しそうに歩いていくジャブラ。
その背後には、彼の通った道筋が、引きずられるジャッキー・リングの血によって描かれていた。