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37. 抜けない癖
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それから。
カクはティオを肩車したまま、町を歩き回った。
ブルーノに頼まれた買い出しのついでに、仕事中の仲間たちのところにも寄っていく。
「チャパ~、お前ら散歩か~?」
「ん? おぉ、フクロウか。今日も盛況のようじゃな」
個人経営の小さな店が立ち並ぶ、細い路地の一角で。
フクロウは、小さなレストランの前に立っていた。
試食を食べつつ宣伝して、上手いこと集客しているらしく、レストランには人が集まっている。
「今日はスイーツの割引デーなんだ、チャパパ~、お前らも食べてくか?」
「いいや、わしらは先ほど昼メシを食うたばかりじゃ」
「そうか~。……ん、どうした~?」
ふと、フクロウは、自分の手元をじっと見ているティオに気付いた。
その視線を辿れば、自分が持っているチョコレートパフェに辿り着く。
フクロウはティオと自分の手元を交互に見た。
「食いたいのか?」
ティオはただ、喉をごくりと鳴らす。
「いいぞ~。前にお前の昼メシくれたお礼だ~、チャパパ~」
スプーンに、フルーツと生クリームとチョコレートソースをこんもり取って、ティオの口元へ差し出した。
ティオは迷うことなく、ぱくりと食いつく。
そして、きらきらと目を輝かせた。
そんな顔を見れば、フクロウも自然と笑顔になる。
「美味いだろ~、チャパパ~」
カクも、ティオの顔を見上げ、口角を上げた。
「お前さん、甘いものが好きなんじゃな」
ティオは満足げな顔で、膨らんだほっぺたをもくもくと動かす。
この1週間、食事はブルーノが用意してくれていたが、甘いものは出てこなかった。
麦わら一味にいると、サンジが毎日何らかのスイーツを作ってくれるため、正直、甘いものが食べたくて仕方なかったのだ。
(帰りに甘いものも買ってやろうか……)
そんなことを考えながら、カクはフクロウの方へ視線を向ける。
「そろそろわしらは退散するわい。また夜にな。励めよ、フクロウ」
「チャパ~、腹減ったらいつでも金落としに来いよ~」
「それはお前、直接的すぎるじゃろう……」
そう言って苦笑すると、カクは再び、通りの先へと歩き出した。
その歩調に揺られながら、ティオは満足げな まったり顔で、カクの頭に
カクもまた、嬉しそうな微笑を浮かべていた。
「お前さん、一番好きな食べ物は何じゃ?」
「ちょこれーと、どーなつ」
「そうか。なら、帰りに寄っていこうかのう。託児所の母親たちの間で、噂になっとるドーナツ屋がある」
「!」
ティオは目を見開き、キラキラと輝かせる。
……同時に、不思議な感覚を抱いていた。
「……おもって、たのと、ちがう。みんな」
「うん?」
ティオは、カクの頭に乗せた頭をこてりと傾げ、頬を置く。
「……しーぴーないん、もっと、こころ、ないと、おもってた。……でも、みんな、かんじょう、うごいてた。ふつうの、にんげん」
「ふははっ、わしらは化け物とでも思われていたのか?」
「ちかい」
「正直じゃな……」
カクは道の先を見据え、道端の住民たちを一人ずつ見渡していった。
「どうじゃろうなァ……人並みの感情がわしらにあるのか、本当のところは分からん。今も変わらず、殺せと言われれば殺せるじゃろうし、その翌日に、子供と遊んでやることも苦ではない」
「……」
「じゃが、今のわしらは、以前よりも感情が表に出ているとは思う。……それがこの先、吉と出るか凶と出るかは、分からんがのう」
「……」
その後。
カクはティオを肩車したまま、頼まれた買い出しをして、その合間には、仲間たちの職場を回った。
本屋で店番をする、ルッチ。
清掃業者で働く、カリファ。
卸売市場で荷物運びをする、ジャブラ。
演劇の舞台で雑用をする、クマドリ。
遠目に見ただけだが、みんな、真面目に働いていた。
しかし、どの仕事もただのアルバイトでしかなく、賃金は二束三文。
これではお金など貯まらない……
「……」
ティオはしばし考えた。
やがて、あることを思いつき、目を細める。
「ねぇ」
「ん、何じゃ?」
「こんや、みんなに、はなし、ある」
「?」
夜。
夕食を作ったブルーノと入れ替わるように、元CP9メンバーはラウンジに揃った。
そこに、今日はティオも同席して、一緒に夕食を摂る。
賑やかなフクロウやクマドリ、そこにツッコミを入れるジャブラのおかげで、食卓は時間の経過と共に和んでいった。
それがいい頃合いになると、ティオはちらりと、隣のカクを見上げる。
察したカクは頷いて見せ、声を張った。
「食事中すまんが、皆、ちょっといいかのう?」
「チャパ~?」
「よよいっ」
「ぁあ?」
全員の視線が、カクに向く。
「この子が、全員に向けて話があるそうじゃ。
ティオはすくっと、片脚で立ち、傍らに置いていたスケッチブックと新聞を持って、全員の前にひょこひょこと出た。
じーっと、6つの視線が興味と疑念を持って向けられ、ビシビシと突き刺さる。
ティオは負けじと、深呼吸を一つした。
「かく、から、じじょう、きいた。みんな、せいふに、おわれて、とおく、にげたい。でも、おかね、ない。……なら、ひとつ、ていあん」
そう言って、スケッチブックを開き、テーブルに乗せる。
そこには、手配書が1枚、まるで本物のように描写されていた。
ティオが記憶を元に描き起こしたものだ。
「いっかく、せんきん、ねらうなら、しょうきんくび、つかまえる。しーぴーないん、なら、よゆう、でしょ?」
そう言われ、フクロウやクマドリ、ジャブラは、確かにと言いたげに目を見開く。
しかし、カリファはスケッチブックを見て眉をひそめた。
「待って。この"偽造食品ブローカー・フレッジ"って、美食の町・プッチにいた奴でしょう? コイツならとっくに捕まって、インペルダウンよ」
そう言って、あからさまにため息をつく。
「あのね、私たちだって馬鹿じゃないのよ。賞金首を捕まえるなんて手っ取り早いこと、一番に考えたわ」
フクロウたちは、え、そうなの? と言いたげにカリファを見て、まばたきを繰り返した。
カリファはそれを無視して、話を続ける。
「けれど、ここはエニエスロビーにも、海軍本部にも近くて、少し前までガレーラの職長の噂が飛び交っていた場所。賞金がつくような奴は狩り尽くされて、新しく寄ってくる奴もほとんどいないわ」
ぬか喜びに終わった、フクロウ、クマドリ、ジャブラは、まるでギャグのように肩を落とした。
そんな中でも、ティオの瞳は光を失わない。
寧ろ、もっと鋭い光を宿していた。
「それは、あたってる。うみれっしゃ、とおる、このきんぺん、ぐらんどらいん、いち、へいわと、いっても、かごんじゃ、ない。……でも、だいじけん、あったでしょ?」
ティオは、新聞のとあるページを開き、スケッチブックの横にバサッと置く。
それを見た瞬間、ピンときたカリファは目を見開いた。
「まさか……」
「(コクン) …ちょうじょう、せんそう、さんかした、かいぞく。そのうち、いんぺるだうん、だつごく、やく200にん。……そのなかに、6にん、せんと・ぽぷら、ぷっち、さんふぁるど、きょてん、してた、かいぞく、いる」
ティオは、今度はスケッチブックの方を、ぺらぺらと
1ページにつき1枚ずつ、凶悪な顔をした犯罪者たちの手配書が、見事に模写されていた。
「かくしょうは、ない。でも、きょてん、もってた、やつは、だつごくご、きょてん、もどる、かのうせい、ある。それに、ここ、まりんふぉーど、ちかい。もどりやすい。……せんごく、げんすい、なら、だつごくしゃ、ついかてはい、する。けんしょうきん、いままで、いじょう、はねあがる。……ねらうなら、いま」
ティオが、新聞の情報と自分の記憶から導いた、セント・ポプラ、プッチ、サンファルドを拠点にしていた6人の犯罪者たちは、誰もが5000万ベリーを超える大物たち。
それが追加手配によって、懸賞金が上乗せされれば、余裕で億を超えてくる。
6人全員が拠点に戻ってくるなんてことは、まずないだろうが、1人か2人
……話を聞いて、再び、フクロウ、クマドリ、ジャブラの目が見開かれ、輝く。
カリファは少し悔しそうに顔を反らしていたが、満更でもない、と言いたげな感情が、ティオには伝わっていた。
カクは勿論、笑みを浮かべて頷いてくれる。
そしてルッチはというと、無表情で興味の無さそうな顔をしていたが、心の奥底では、血を求める豹が疼き、もちろんその気持ちはティオに伝わっていた。
……これは満場一致とみていいだろう。
ティオは全員の感情から、提案が受け入れられたことを読み取り、事前に打ち合わせた通りに、カクに頷いて見せた。
ここからは出番を交代し、カクが立ち上がって話の続きをする。
「と、いうわけじゃ。まずはこのセント・ポプラの賞金首を探し、次にプッチ、サンファルドと探しながら巡るのがいいじゃろう。元の拠点の場所やその他の詳しい情報は、もちろん、元・伝承者サマがきっちり教えてくれる。そうじゃろう?」
「(コクン)」
何があったか知らないが、半日ほどで随分と仲良くなったらしいカクとティオに、カリファは不審な眼差しを向けた。
「随分と協力的じゃない。肩書の上ではもう敵ではないけど、私たちはあなたたちに私怨が無いわけじゃないのよ?」
「でも、さきに、てぃお、たすけたの、そっち」
「それは……カクの馬鹿の独断よ……」
「とにかく、うけた、おん、ぜんぶ、かえす。もう、きめた。それに……」
青い瞳が、挑戦的な光を宿して、カリファを真っ直ぐに見据える。
「ふくしゅう、するなら、むぎわらいちみ、あいて、なる。いつでも、くれば、いいの」
「……」
今、たった1人で敵の輪の中にいるくせに、この自信と威圧感は何なのだろうか。
カリファは面白くなさそうに、フンと再び顔を背けた。
一部始終を見ていたカクが、フッと笑う。
「明日から、このセント・ポプラを拠点にしとったという、"
「チャパ~、賛成だ~!」
「よよいっ、ぁ何だか~ぁ、面白くなってきたじゃぁねぇか~ぁ?」
「ギャハハッ! 早速 明日休みなのは俺じゃねぇか。こりゃ
「ジャブラ、お前さん、諜報員として腕は
「ァア!? 誰に言ってんだカクてめぇ!」
ギャアギャアと、より一層騒がしくなる元CP9たち。
……その喧騒に、ティオは、麦わら一味の食卓を思い出した。
胸の奥が、ツンと痛くなる。
(……みんな……おそくなる、けど……ごめん……)
バーソロミュー・くまの能力で、あちこちに飛ばされた一味は、それぞれ、全速力でシャボンディ諸島を目指しているはずだ。
けれど、自分はどう足掻いても、みんなの元へ帰るのは1カ月以上先になる。
待たせてしまうし、心配もさせてしまうだろう。
それでも、恩を受けっぱなしでは帰れないから。
……どうか、信じて待っていて欲しい。
祈るような気持ちで、ティオは拳をぐっと握った。