夢主の名前を決めて下さい。
36. 本当の顔
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
翌朝。
朝食の時間に、カクがため息をつく。
「まったく、大人しくさせておけと言うたのに、お前まで何をしとるんじゃ、クマドリ」
「ぁ
「はぁ……。今日の休みは確か……ルッチだったのう? お前さんなら心配いらんな」
ルッチは、話を聞いているのかいないのか、コーヒー片手に新聞を読んでいた。
返事をしないルッチに、カクは苦笑し、一足先に仕事に出るため、身支度を整え始める。
ルッチなら、フクロウやクマドリのように、一緒に遊ぶことなどまずないだろう。
いつもの黒いニット帽を被ると、カクは安心して、仕事に出ていった。
……その日、ティオが目を覚ましたのは、またしても昼頃だった。
「……」
目を開けた瞬間、身体に感じた重さと痛みに青ざめる。
身体を少し動かすだけでも、ビキビキと全身に痛みが奔った。
一昨日、昨日と、怪我が治っていないのに無理に動いたせいで、寧ろ悪化したようだ。
「~~~っ」
動きたくない。
でも、トイレに行きたい。
ティオは頬をぷくっと膨らませ、ぶるぶると身体を震わせながら、ベッドを降りる。
そして、壁にもたれつつ、部屋を出た。
その頃。
ラウンジでは、ルッチがソファでくつろぎ、本を読んでいた。
外を通りかかる人々の声が、小さく響くだけの、静かな空間。
その、穏やかな昼下がりの中、ページをめくろうとしたとき、感じた気配に眉が動いた。
"――――――ズ、ズ……ズズッ……"
2階から聴こえてくる、何かを引きずるような、小さな音。
その音は次第に、階段に近づいていた。
「……はぁ………はぁ……」
言うことをきかない身体を、引きずるようにして、ティオは何とか階段までやって来る。
壁に沿わせていた両手を、階段横の壁に据えられた、金属の手すりに乗せた。
全体重をその手すりに預け、階段を下りるために、少し、前かがみになる。
次の瞬間……
"バキッ"
「!」
老朽化していた手すりが、壊れてしまった。
元CP9メンバーは、普段、手すりなど掴まない。
老朽化していることなど誰も気づかず、今まで放置されていたのだ。
いつもなら、階段に両手をつき、くるっと一回転してしまえばいい。
しかし、今の身体でそんな俊敏な動きは出来ない。
迫る階段の段差を目の前に、ティオの両手は震えるばかりで、動いてくれなかった。
顔面から激突すると察して、ティオはぎゅっと目を瞑る。
"――――――ガシッ"
「……?」
前のめりに落ちようとしていた身体が、止まった。
恐る恐る目を開けば、逞しい腕が支えてくれている。
そっと頭を上げると、自分を見下ろす冷たい瞳と、視線が合った。
「……」
「……」
数秒、沈黙が降りる。
目の前に居るのが、CP9史上最強のルッチだという事実が、ティオを硬直させた。
しかし、敵意は感じられない。
「……あ、りがと」
とりあえず、お礼を呟いた。
すると、ルッチの表情は変わらなかったが、感情が揺れた。
予想外の感情の動きを聞き取り、ティオの青い瞳は、不思議そうにまばたきをする。
ルッチは、自分の中で揺れた感情をごまかすように、ぶっきらぼうに訊いた。
「どこへ行く気だった」
降ってきた低い声に、ティオも答える。
「……といれ」
すると、ルッチは片手で、ティオをひょいっと抱き上げた。
腕に座らせてもらうような形になったティオは、落ちそうになって、慌ててルッチの肩に掴まる。
ルッチは何も言わず、階段を下り、トイレの前まで行くと、ゆっくりティオを降ろした。
そして、さっさと
「……」
ティオは唖然として、その背中をじっと見ていた。
……困惑、自制、わずかな嬉しさ。
そんな感情が聴こえてくる。
そのとき、トイレに行きたかったことを唐突に思い出したティオは、急いで扉の向こうへ飛び込んだ。
……間に合ったことへの安堵感で、深く息をつきながら、トイレを出てくる。
パタンと扉を閉め、ラウンジの方を見ると、ルッチが変わらず本を読んでいた。
「……」
今日は、1階に居るべきか、2階に戻るべきか……
ルッチも、今はCP9ではないのだから、襲ってくることはないと思いたい。
だが、殺しを正当化するために政府に居ると豪語した男を、フクロウやクマドリと同じように見ることは難しい。
どうしよう。
どうするのが正解なんだろう。
そうして立ち尽くしていると、ふと、ルッチの目の前にある、テーブルに視線が向いた。
(しんぶん……)
目が覚めた日に読んで以降、3日ほど読んでいない。
もしかしたら、ルフィや他の仲間の居場所について、新しい情報があるかもしれない。
ティオは、ごくりと息を呑んだ。
……ルッチの傍に行くのは、怖い。
だが、情報が欲しい。