夢主の名前を決めて下さい。
36. 本当の顔
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
1階に降りてくると、フクロウは適当なソファに座り、目の前のテーブルにお盆を置いて、ティオの食べかけの食事にがっつき始めた。
「モグモグ……今日の昼メシをどうしようか考えてたから……ゴクン……ちょうど良かった~、チャパパ~」
ティオはフクロウの隣に座り、密かに窓の構造を観察しながら、フクロウが食べ終わるのを待つことにする。
……どうやら、1階の窓なら開けることが出来そうだ。
「朝と夜は……モグモグ……ブルーノが作ってくれるが……ゴクン……昼は作ってくれないから、仕事がない日は面倒なんだ~」
訊いてもいないことを、自分からペラペラと喋ってくれるフクロウ。
ティオは、この建物の監視体制のことも聞き出せるかもと、遠回しに色々と訊き始めた。
「しごと、なに、してるの?」
「モグモグ……ゴクン。色々やるが、最近は食べ物屋の手伝いだ~。俺は声がデカイし目立つから、試食を食ってウマイって言えば、自然に店が繁盛するのさ~、チャパパ~。メシも食えて一石二鳥だしな~」
「きょうは、やすみ、なんだ」
「そうだ~。週に1度は必ず休みを取る~。他のみんなもそうだ~。どこに政府の諜報員が潜んでるか分からん以上、このアジトは空けられんからな~」
要するに、7人が交代で休みを取りながら留守番をしているのだ。
時間帯によってはブルーノもいるから、2人になっているときの方が多いが、ブルーノが仕事に出てから他のメンバーが帰ってくるまでは、監視が1人になる時間帯がある。
脱走するなら、その時間を狙うのが定石だろう。
そして、骨折が治るのを待つ時間がない今、使える逃走手段は、鳥の姿で飛んで逃げるの1択のみ。
7人の
(……さくせん、きまった)
カリファが休みの日に、ブルーノが仕事に出た後で、隙をついて1階の窓から鳥の姿で飛び出す。
それが、今打てる最善手だ。
「チャパ~、ウマかった~」
早くも、フクロウが食べ終わったらしい。
大きな顔で、ズイっとティオの顔を覗き込んでくる。
「で? お前、何して遊びたい? 鬼ごっこか? かくれんぼか?」
ノリノリで訊いてくるフクロウの感情は、子供より子供っぽい。
確か、情報では今年で29歳のはずだが、とてもそんな感情ではない。
「じゃあ、さかだち、おにごっこ」
足が折れた状態で、元CP9と普通に鬼ごっこをするのはハードルが高すぎる。
フクロウは目を輝かせた。
「逆立ち鬼ごっこか! 面白そうだ~!」
―――数時間後。
空が赤くなり始めた頃、カクは仕事を終え、アジトに戻ってきた。
ラウンジの明かりが点いているのが外から見え、何やら人の気配が動いているのが感じられる。
またジャブラとフクロウ辺りが遊んでいるのかと、ため息をついた。
"ガチャ"
「戻ったぞー。遊んどるなら晩メシの支度でも手伝ってや…………ん?」
玄関扉を開けると、ラウンジスペースに、フクロウとティオが倒れていた。
疲弊しきった様子で、2人とも荒い呼吸を繰り返している。
カクは状況が呑み込めず、固まった。
「何してるんじゃ……?」
そこに、夕飯の支度を終えたブルーノが、エプロンを外しつつキッチンから出てくる。
「逆立ち鬼ごっこをしていたらしい」
「さ、逆立ち鬼ごっこ? 何じゃそれは…」
「名前の通りだ。ろくに休憩もせず、何時間も続けていたからな。さすがに体力の限界が来たんだろう」
カクはため息混じりに、ティオの傍へ歩み寄った。
「まったく何をしとるんだか……1週間は安静じゃと言うたのに」
床に這いつくばったティオを起こしてやると、ゲッソリした顔をしている。
「たいりょく、つける、つもり、で……」
「その体力を根こそぎ使ってしもうてどうするんじゃ……。フクロウも、少しは考えて遊んでやらんか」
「チャパ~……はぁ……はぁ……意外と負けず嫌いな子だった~……疲れた~……」
仕方なく、カクは子供を抱っこするように、ティオを抱き上げた。
「晩メシは食えるのか?」
ティオはカクの肩に顎を乗せ、青ざめた顔で首を横に振る。
ブルーノが、2時間ほど前にティオから聞いたことを、カクに伝えた。
「元々、1日1食か、多くとも2食しか食べないそうだ。今朝置いておいた分も、ほとんどはフクロウの昼メシになったらしい」
「ほう? 虚弱体質サマサマじゃな」
「俺はそろそろ仕事に出る。後は任せていいな?」
「あぁ、大丈夫じゃ」
ブルーノは、エプロンをラウンジの壁の杭にひっかけると、ソファに置いてあった小さい荷物を肩に引っ掛け、仕事に出かけていった。
カクはティオを抱いたまま、床に寝そべっているフクロウを足先でつつく。
「おーい、いつまで寝そべっとるんじゃ。もうすぐ全員帰ってくる。皿でも並べてろ」
「チャパパ~」
返事なのかそうではないのか。
よく分からない返答を聞き流し、カクは2階へと上がっていった。
静かな廊下を歩いていると、穏やかな寝息が聴こえてくる。
「…………すぅ………すぅ……」
抱かれている間に、ティオは眠ってしまったらしい。
(……何だかんだ言うても、まだまだ子供なんじゃな)
カクは無意識に、フッと口角を上げていた。