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34. 麦わら一味完全崩壊
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「はぁっ、はぁっ、またおっさんに救われたな!」
「えぇ、そうですね!」
まるで微睡みの中にいるように、仲間たちの声が遠い。
酷い頭痛を無理やり堪えて、ティオは意識を覚醒させた。
「……ぶる…く……?」
「あぁ、ティオさん、気付かれましたか!」
見下ろしてくるガイコツ頭。
規則正しい揺れから、ブルックに運んでもらっていると、すぐに分かった。
そのすぐ後ろで、ゾロを背負って走っていたウソップが、叫ぶ。
「んげっ!? ヤベェぞブルック! ニセ七武海がこっちに来てる!」
「ええええっ!?」
後ろを振り返れば、フランキーに飛ばされたはずのパシフィスタが、全速力でこちらに走ってきていた。
その迫力は津波のように恐ろしい。
「ちょっ、もう! 何でこっちばっか狙うんですかァ!」
朦朧とする意識の中で会話を聞いていたゾロは、懸命に声を絞り出した。
「……おろ、せ……」
ウソップが走りながら訊き返す。
「は? 何言ってんだオメェ」
「お、前らを……逃が、す……」
「馬鹿言ってんじゃねぇよ! 今のお前なんか俺より役に立たねぇだろうが! 一緒に逃げるんだよ! ルフィがそう判断したんだ!」
「そうですよ、ゾロさん!」
「……ぶる、く……てぃお、は、おろして」
「だから聞いてました!? ティオさん!」
「ち、がう……てぃお、じぶんで、はしる」
ティオは無理やり身を起こして、ブルックの腕の中から飛び降りた。
若干ふらつきながらも、隣を走り出す。
「……ぶるっく、りょうて、あけて、て……まだまだ、なに、あるか、わか、ない……」
「~~~~っもう! 強情な方々ですね! ゾロさんもティオさんも!」
そう言って、ブルックは半ばやけくそで剣を引き抜いた。
「……では、どうぞお先に行ってください」
そう言って、くるりと後ろを向き、止まる。
そこには、もう目の前に迫っているパシフィスタが。
慌ててウソップが叫んだ。
「馬鹿っ、よせ! そいつの強さは十分に知ってるはずだろ!」
「……えぇ、知ってますよ。ですが! 男にはやらねばならない時がある!」
そう言って、剣を構え突っ込んでいく。
……が。
それより早く、隣を通り越していく影があった。
「え……?」
そんな速度で走れるのは、ティオだけ。
「さんじくんっ、ひだり、から、よこいちもんじ!」
数秒前から覇気で感じていた気配に、そう叫んで、自分も同じ方向へ飛ぶ。
「…ありがとよ、ティオちゃん。……吹き飛びやがれっ、
「
"ドゴゴッ!"
いつの間にか、此方を手助けするために駆けつけてくれていた、サンジ。
2人一緒の蹴りで、パシフィスタの巨体は倒れた。
「ぐ…う……っ」
サンジは脚の痛みに顔を顰める。
(マズイっ……これ以上は俺の脚がイカレ…ってちょっと待て、俺がヤバイならティオちゃんは!?)
慌てて隣を見れば、目を見開いて唇を噛み締め、青い顔で痛みをこらえているティオがいた。
蹴りを繰り出した脚には、既に赤黒い内出血がみられる。
骨が折れ、ズレて周辺組織に刺さってしまったようだ。
ただの骨折より、想像を絶する痛みが襲っているはずだ。
「サンジさん! ティオさん!」
2人はまともに着地も出来ず、地面に転がった。
それを、早くも復活したパシフィスタのビームが狙う。
「………ぎ…ぁ……っ」
ティオは懸命に痛みを堪えようと、のたうち回っている。
「くそっ……ティオちゃん、だけでもっ」
サンジは、ティオに向けて、震える手を伸ばした。
「危ないっ、お二人とも!」
"ピュンッ……ドゴオッ"
至近距離で爆ぜるビーム。
危機一髪。
ブルックが2人を放り投げたことで、直撃は免れた。
しかし、ブルックが爆風を受けてしまう。
「ブルックー!!」
サンジが叫ぶも、焦げた白骨体から、返事は返って来なかった。
一方、爆風に足元をすくわれたウソップも、背中のゾロを落としてしまう。
「ゼェ、ゼェ、すまねぇゾロ! 落としちまった! 大丈夫か!?」
ウソップは疲れきった体で、なんとかゾロを担ごうとする。
そして、周囲に倒れている仲間たちに向かって叫んだ。
「サンジっ、ティオ! ブルック! みんな立つんだ! 早くここを離れねぇと、またビームが来るぞ!」
そう言われても、誰一人として、立ち上がれない。
もう、体が言うことを聞いてくれないのだ。
「ウオオオオオッ!」
遠くから聞こえてきた、唸り声。
ウソップが反射的にそちらを見れば、ランブルボールで巨大化したチョッパーが暴れていた。
「ちくしょうっ、チョッパーがまたアレをやってるってこたァ、向こうもヤベェってことだっ」
しかし、向こうはルフィに任せるしかない。
こっちも逃げられるかどうか危うい状況なのだ。
「おいみんな! 頼むから頑張ってくれよ!」
ゾロを背中に担いだまま、3人の服を両手と口で引っ張ろうと試みる。
そこへ、パシフィスタが容赦なく迫った。
"キュイイィィン……"
「くそっ、くそぉっ……」
駄目だ。
避けられない。
「待て、PX-1」
―――突然、背後に現れた気配。
ウソップは、その寒気にも似た気配に覚えがあった。
恐る恐る後ろを向けば、予感が的中する。
「ひ…あ……ぎゃああああっ!!」
そこに立っていたのは、もう二度と見たくない姿。
「もうイヤだァ! いったい何体いるんだよコイツらァァ!」
と、そのとき、今まで動けなかったゾロが、渾身の力で起き上がった。
(……違う。コイツは、コイツだけは、本物だっ……)
機械仕掛けのロボットではない。
本物の、人が放つ強いオーラが感じられる。
「生きていたのか、ロロノア」
その声で、言葉で、ゾロには確信が持てた。
「……あぁ。……お前の……慈悲の、お陰で、なぁ……」
ウソップが震えながら叫ぶ。
「お、おいおいっ、喋ってる場合じゃねぇって! 早く逃げ「旅行するなら、どこへ行きたい?」
ウソップの言葉を遮って放たれた、質問。
(……旅行、だと?)
ゾロが眉をひそめた瞬間―――
"――――――パッ"
その場から、ゾロの姿は消えていた。
「……へ?」
一部始終を見ていたウソップは、まばたきを繰り返し、何度も目をこする。
「へっ? あれっ? え!? ゾロ!?」
何度見渡しても、上を見ても、下を見ても、ゾロの姿が見当たらない。
「ぞ、ろ……」
大きく見開かれた、ティオの青い瞳。
そのすぐ傍で、サンジとブルックも驚きを隠せず固まっていた。
「なん…だと……?」
「ゾロ…さん……?」
ウソップは怒りに肩を震わせ、拳を握る。
「テメェっ、ゾロに一体なにしやがったァ! 今っ、たった今 目の前に居たのに!」
一部始終を遠くから見ていたルフィは、思考が停止していた。
「……ゾ、ロ…………ゾロ……?」
一番最初に仲間になって……
どんな敵が来ても任せられる奴で……
「ゾロ……っ、ゾロォォォォ!!」
同じように、ゾロが消える瞬間を見ていたナミは、ルフィと違って冷静に記憶をさかのぼっていた。
(あれは、スリラーバークの女の子が消えたときと同じ……あの子、一体どうなったんだろう……。ティオならもしかしてっ)
ナミは、敵の注意も引きつけてしまうと分かっていながら、声を張った。
「ティオ! アンタなら―――」
……言いかけて、言葉は途切れた。
ティオの上に迫っていた、大きな影。
バーソロミュー・くまは、周囲の麦わら一味には目もくれず、真っ直ぐにティオに手を伸ばしていた。
そして、ティオは、青い瞳を見開いたまま、動けなかった。
……迫る肉球。
これがどんな能力かは知っている。
けれど。
何故ここで使うのかが分からない。
彼が政府によって今の立場に追いやられた理由を考えれば、個人的にルフィを手助けしたい気持ちは理解できる。
たとえそれが、夜空の星を掴むような微かな希望だったとしても……
あるいは、革命軍発足当時からの盟友、ドラゴンの息子を助けたい気持ちもあるのかもしれない。
そのどちらにしても、両方にしても、何故こんな方法を取るのかが理解できない。
これまで、とある理由から、吐くほど嫌いなはずの政府にずっと従ってきた彼が、全てを水の泡にしてしまうような方法を取るなんて。
もっと手っ取り早く、自分の身の安全を確保しながら助力する方法が、幾らでもあるはずなのに……
何だ。
一体 何なんだ、この男は。
何を思って動いている?
命に代えても守りたいものがあったのではないのか?
それを捨て置いて、今にも
「どう、して……」
そう呟いた、直後―――
"――――――パッ"
ティオの姿は、消えていた。