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33. 超新星と伝説の冥王
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純金で作られた銃から、煙が上がる。
そんな高価な銃を持ち歩いているのは、天竜人くらいのもの。
嫌な予感がしたのか、ルフィは足を止め、後ろを振り返った。
「!」
目に映ったのは、血を流しながら階段を転げ落ちてくる、ハチ。
「は、ハチ……っ?」
パッパグが、ぽてぽてと傍に駆け寄った。
その背後で、チャルロス聖が跳ねている。
「ふっふふ~ん、ふっふふ~ん、当~たったえ~! 魚人を仕留めたえ~!」
その楽しげな声は、まるで狩りでも楽しんでいるかのよう。
「お父上様! ご覧ください! 魚人を捕まえましたえ! 自分で捕ったから、コレ、タダだえ~! タ~ダ、タ~ダ、タコがタダ~!」
……そのチャルロス聖を、ルフィは鋭い眼光で睨みつけた。
「……」
額に血管を浮かせて、チャルロス聖に近づいていく。
……が。
"パシッ"
ハチがそれを制した。
「……ま……待って、くれ……麦わら……」
「……」
「だ、ダメだ……怒るな……俺が、ドジったんだよ……」
「……っ」
「……目、の前で……誰がっ、撃たれても……天竜人には、逆らわねぇ……って、約束、しただろっ……」
「……」
「……どうせ、俺は、海賊だったんだ……
ハチは次第に、涙を流し始める。
「ごめん、なァ……。こんなつもりじゃ、なかったんだけど、なァ……ナミ、に……償いが、したくて……っ、ちょっとでも、お前らの役に、立てたら……って……なのにっ、ごめんなァ……っ」
「……」
「やっぱり……俺は……昔っから、ドジだからよぉ……っ……結局、迷惑ばっかりかけて、本当に、ごめんなァ……っ」
ルフィはハチの傍に膝をついた。
そこへ、チャルロス聖が銃を向ける。
「魚めぇっ、撃ったのにまだベラベラと!」
「……」
「!」
チャルロス聖とハチの間に、ルフィが庇うように割って入った。
チャルロス聖の額に、血管が浮き出る。
「……お前、その目は何だえ?」
「……」
ルフィは黙って、チャルロス聖に歩み寄っていく。
パッパグが涙ながらに、青ざめて叫んだ。
「やめろ! ムギ! オメェらもタダじゃ済まなくなるぞ!」
チャルロス聖が真っ直ぐに銃を構えている。
「お前っ、これが見えんのかえ!」
……しかし、素人の銃など、ルフィには何の脅威にもならない。
ルフィはチャルロス聖の元へ駆け出し、拳を強く握りしめた。
「ぅぉぉおおおおおああっ」
"バキィッ"
「ヴォゲァア!?」
痛々しい音と共に、チャルロス聖が吹き飛んでいく。
"ガシャァンッ!"
チャルロス聖は、会場の壁に突っ込んだ。
―――ついにやってしまった。
世界で何よりも恐れられる
最も罪の重い所業を―――。
しかし、ルフィはあっけらかんとした顔で、仲間たちの方へ振り返る。
「悪りぃお前ら。アイツ殴ったら、海軍の大将が軍艦引っ張ってくんだってよ」
ゾロが、刀の鍔を弾いた。
「フン、お前がぶっ飛ばしたせいで、斬り損ねた。……おい、いい加減起きろ、ティオ」
声を掛けながら、背負っていたティオの頭を軽く叩く。
「……ん……ぅ…?」
ティオは未だに目が回る感覚を覚えながら、うっすらと目を開けた。
「海軍大将が来るんだと」
「……。……は……?」
ティオは辺りを見渡し、頬に拳の痕をつけて気絶しているチャルロス聖を見つけ、青ざめる。
「……ぇー……」
最悪だ。
予想しうる限り最悪のことをしてしまった。
……いや、そもそもどうしてこうなったのだろう。
ゾロの背中から降りたティオは、足元に転がっていた、会場の壁の破片を拾った。
新しい記憶だけを、掠め取るように読む。
「……」
なるほど、ケイミーの誘拐と売買に、チャルロス聖のハチへの発砲…
これは誰もルフィを止められない。
「ちょっとハチ! 大丈夫!?」
ナミがハチに駆け寄っていく。
「ニュ~……お前ら、大変なことに……」
心配そうなハチに、ナミは苦笑した。
「ま、しょうがないわ。ルフィだもの」
サンジはタバコに火をつけ、フランキーはチョッパーと段取りを話す。
「んじゃまぁ、やるこたァ大体決まってきたなァ」
「うん。とにかく、ケイミーの首輪を外さないと。たぶんどこかに鍵があると思うんだけど…。俺、ハチの傷診なきゃ! 後は頼む」
「ティオちゃん、海軍大将が来るまでどのくらい掛かるか分かるかい?」
「(コクン) …はやくて、15ふん。おそくて、25ふん。……けど、そのまえに、ちゅうとんちから、かいへい、くる。……というか、もう、このたてもの、かこって……。……!」
突然、ティオがバッと背後の天井を振り返った。
見開かれた青い瞳は、薄く光の差す天窓を見つめる。
「どうかしたかい? ティオちゃん」
(……きのせい、か)
……今、一瞬だけ、背筋が凍るような"声"が聞こえた気がした。
スリラーバークで、殺意のないまま自分たちを殺そうとした、バーソロミュー・くまの声が……
「なんでも、ない。このたてもの、もう、かいへいに、かこまれてる。だっしゅつ、いそぐべき」
「了解だ。海兵共はいいとして、大将と鉢合わせるのは頂けねぇな……。フランキー、お前はとにかくケイミーちゃんの鍵を探してくれ」
「よし来た」
動き始める麦わら一味。
息子を殴り飛ばされたロズワード聖は、懐から銃を取り出し、ルフィに向けた。
「おのれっ、下々の身分でよくも我が息子に手を掛けたな!」
"パンッ、パァンッ"
銃声が響き始めると、客たちは外へと逃げ出した。
「うわああああっ!」
「天竜人を怒らせたぁぁ!」
「早くここを出ろ!」
逆に、
「貴様らっ、タダで済むと思うなよ!」
「かかれぇぇ!」
麦わら一味と護衛兵たちの戦いが始まった。
"ドカッ、バキッ、ドゴォッ!"
「だぁ~~くそぉっ! キリがねぇ!」
「全くだ。
背中合わせになるルフィとサンジ。
そこへ……
「「「覚悟しろォォォ!」」」
護衛兵が飛びかかった。
2人はそれに対処しようとするが…
「伏せろ! 七十二
ゾロの飛ぶ斬撃の方が早く、護衛兵たちを吹き飛ばす。
「「うおわっ」」
ルフィとサンジは咄嗟に頭を下げ、飛ぶ斬撃をなんとか躱した。
「「危ねぇだろが何すんだ!!」」
「ちゃんと警告しただろ?」
「「聞こえんわ!!」」
"シャキンッ―――ゴトッ"
飛んでいった斬撃は、ケイミーの水槽の上半分を斬る。
「ニュ~、ケイミー! 無事か! 酷いことされなかったか!?」
「はっちん! 私は大丈夫! それより、はっちんの方がっ」
「ニュ、大丈夫だ。俺を誰だと思ってる。たこ焼き屋のハチだぞ! 首輪が外れるまでもう少しの辛抱だからな、そこで待ってろよ!」
「うんっ」
そこへ…
"ドゴッ、バキッ"
屋根が割れ、トビウオが飛び込んできた。
ロビンとブルックが加わる。
「あら、もう大混乱ね」
「ヨホホホホッ! 間に合いましたかねぇ!」
ロズワード聖とシャルリア宮はおかんむり。
「まったく、早く捕まえるアマス!」
「海軍大将はまだかえ! さっさとソイツらを捕えろ! 女は剥製に、男はガリガリ奴隷の刑に処してやる! さぁ "ドスンッ!"
突然ロズワード聖の上に、何か落ちてきた。
「きゃあっ、お父上様~!」
「イテテテ……って、アレ? そんなに痛くない。…ぅぉおあっ!? ゴメンおっさん!」
落ちてきたのは、ウソップ。
ロズワード聖をおっさん呼ばわりし、友達に謝るようなノリで両手を合わせる。
周囲の護衛兵たちは青ざめた。
「んなっ、ロズワード聖までもっ」
「また罪を重ねたなっ、麦わら一味!」
ルフィが嬉しそうに仲間たちを見やる。
「ウソップ! ロビン! ブルック!」
ナミも口角を上げた。
「これで全員揃ったわね!」
「ルフィ! ケイミーは!?」
「あそこの水槽だ! 爆弾の首輪外したらすぐに逃げるぞ!」
「急がないと、軍艦と大将が来ちゃう!」
すると…
「海軍なら、もう何時間も前から来てるぞ、麦わら屋」
背後から聞き慣れない声がして、ルフィはそちらへ振り返った。
模様入りの白い帽子と、目の下の隈、両手に刻まれた入れ墨。
なんとも異様な雰囲気の男が、ニヤリと笑みを浮かべて、自分を見ている。
「あ? 何だお前。……何だ? そのクマ」
ルフィにじっと見つめられ、男の隣に居た白熊は、フイっと目を逸らした。
男が、笑う。
「奴らなら、オークションが始まる前からずっと、この会場を取り囲んでる。…誰を捕まえたかったのか知らねぇが、まさか、天竜人がぶっ飛ばされる事態になるとは思わなかっただろうなァ。…クククッ」
ロビンが目を細めた。
「あなた、トラファルガー・ローね? ……ルフィ、海賊よ、彼」
「海賊? そのクマもか?」
白熊はコクっと頷く。
ティオが、迫っていた衛兵を蹴り飛ばし、手短に情報を語った。
「はーと、の、かいぞくだん、こうかいし。なまえ、べぽ。けんしょうきん500べりー」
その言葉に、ウソップが半目になる。
「500って……なんか、ウチのチョッパーと扱い同じじゃね?」
ロビンは会場の出入り口の方を見た。
「彼だけじゃないわ。向こうの彼もそうよ。ユースタス・キャプテン・キッド」
ブルックがあんぐりと口を開ける。
「ぇえっ!? あれが、ルフィさんより懸賞金が上だっていう!?」
ルフィは、ロー、キッドと、目を合わせた。
同じ億越えルーキーとして、また、同じ海賊団の船長として、何か思うところがあるのかもしれない。