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32. シャボンディ諸島
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「……う…うぅ……マリィ……」
病院の処置室に運ばれた男は、ベッドの上でも、ずっと泣いていた。
それを見下ろしたゾロは、何も言わず、処置室から出ていく。
しかし、ティオはその場に残った。
ゾロの記憶の端に見えた、看護師とこの男の行動を、もう一度脳内で見てから、男の手を強く握る。
「あきらめ、ないで。ちゃるろすせい、ほれやすくて、あきやすい。きっと、すぐ、かいほう、される」
男は、まだ微かに残っている意識で、ティオを捉えた。
ティオの青い瞳は、真っ直ぐに男の目を見つめる。
「かえって、きたとき、ちゃんと、なぐさめて、あげて。そのために、げんき、なって」
男は、懸命に力を振り絞り、ティオの手を握り返した。
「……ありがとう…っ……」
ティオは、コクンと頷き、応援するように、男の手をポンポンと叩いた。
そして、静かにその場を離れ、処置室を出ていく。
廊下では、腕を組んだゾロが、仁王立ちで待っていた。
「もういいのか?」
「(コクン)」
ティオが頷いたのを確認すると、ゾロは病院の出口へ歩き始める。
ティオもそのあとをついていった。
同じ頃。
ところ変わって、サニー号では。
誰かが帰ってくるのを待ってから買い出しに出るというサンジに付き合って、ウソップとフランキーも、船に残っていた。
サンジがお茶を用意して、3人で談笑している。
「さっき、街を少し覗いたら、シャボン玉の自転車みてぇなのが飛んでたぞ」
ウソップが大きく頷いた。
「おー見た見た! アレかっこいいよなァ! 買い込んでこうぜ!」
「乗り心地確かめなきゃなァ、ハッハッハ」
と、そこに……
"ぷるぷるぷるぷるぷる……"
電伝虫の音が響いた。
「ん? なんか、電伝虫鳴ってねぇか?」
サンジが目をハートにして飛んでいく。
「んナミさんかな~!?」
"ガチャ"
「はぁ~いナミすゎん! あなたの
「あ? チョッパーか? どうした、そんなに慌てて」
『サンジか!? うわああんっどうしよう! 大変なことになっちゃった!』
電伝虫が涙を飛ばして必死に叫ぶ。
その声が聞こえたのか、ウソップとフランキーも、ダイニングに入ってきた。
「なんだなんだ、どうした?」
「その声チョッパーか? 随分と慌ててんな」
「おいチョッパー、それじゃ何も伝わらねぇよ。落ち着いて話せ。いったい何があったんだ?」
『ぐすっ、ケイミーがっ』
「「「 ? 」」」
『ケイミーがっ、攫われたァ!!』
「「「何ぃっ!?」」」
『たぶん人攫いチームの仕業だっ……なんでか知らねぇけど、人魚や魚人は悪党じゃなくても、売買を黙認されるって! ケイミーが売られちまうよォ! 一生奴隷にされる! 俺たちの責任だァァ!! ハチの話じゃ、諸島にはいくつも
まくしたてるようなチョッパーの説明を、しっかり理解して、サンジは冷静に訊いた。
「ティオちゃんはそこに居るか?」
『へっ? あぁ、いや、ナミとロビンと一緒に買い物に行ってて……』
「ナミさんたちは、子電伝虫を持っていったのか?」
『あ、あぁ、うん!』
「お前らの居場所を詳しく言え」
『へっ? あ、シャボンディ・パーク……』
「じゃあ、今話してる電伝虫のところで待機だ。こっちでティオちゃんに確認してから、掛け直す」
『あっ、そっか! ティオならケイミーの場所が分かるもんな!』
「広いから100パーとは言い切れねぇがな。……とにかく、お前らはそこで連絡を待て」
『あ、あぁ、分かった!』
"ガチャ……"
サンジは、受話器を一旦戻した。
話を終えた隙を見て、ウソップが訊く。
「ケイミーが攫われたって、マジなのか?」
「……あぁ。聞いた通りだ」
「くそっ、一体どうなってんだ……」
「とにかく、まずはティオちゃんに連絡を取ってみる」
サンジは、ナミに渡されているであろう子電伝虫の番号へ、電話を掛ける。
"ぷるぷるぷるぷるぷる……"
何度か、コールが鳴ったのち……
"ガチャ"
『もしもし! 何よ! 今忙しいんだけど!』
何故か怒っているらしいナミが、応答した。
「ナミさん? 俺、サンジだけど、何かマズかったかい?」
『え? ……何でもないわ。ちょっとお店のオジサンがケチだから、機嫌悪かっただけよ』
「そうだったのか。……ところで、ティオちゃんは一緒かい?」
『ティオ? いいえ? 少し前に、ゾロが問題に巻き込まれてるかもって、どっか飛んでっちゃったけど。それから連絡ないし、何ごともなく収めたんじゃない?』
「なっ、よりによってアイツのとこに!?」
サンジは額に手を当てて項垂れた。
ゾロには子電伝虫を持たせていない上に、居場所も分からない。
つまり、ティオとは連絡が取れないのだ。
『何かあったの?』
サンジは、とりあえず事情だけでもと、チョッパーから聞いた話を、そのまま話す。
『なっ、ケイミーが攫われたですって!?』
「あぁ。それで、ティオちゃんに場所を聞こうと連絡したんだが……」
『あ~~っ、んもうゾロの奴! タイミング悪すぎなのよ! どうしてウチはこう問題が重なるワケ!?』
「とにかく、ナミさんたちも、ティオちゃんの居場所は知らないんだな?」
『えぇ。……でも、どうしよう。島中駆け回って探すわけにもいかないし……』
「……もう1つ、当てがある」
『え?』
「その道にはその道のプロがいるからな」
『それって……』
「トビウオライダーズを呼ぶ」
その頃。
ケイミーが攫われたなんて夢にも思っていない、ゾロとティオは、29番グローブをゆっくり散歩していた。
ティオはイタチになって、ゾロの頭の上に乗っている。
ゾロが何か問題を起こしたのではと、肝を冷やしたので、精神的に休憩中だ。
「……しっかし、胸糞
「ここは、まだ、まし。ひとけた、の、しまのほうが、ひさん。……まりーじょあ、の、ほうが、さらに、ひさん、だけど……」
「ふーん」
ゾロは、ティオの話に興味がないようで、何か面白いものはないかと、適当に歩き回っていた。
……しかし、目ぼしいものは見つからない。
「フン……つまんねぇな。おいティオ、1番の樹はどっちだ?」
「……。……いちばん?」
何故、ゾロが1番に行きたがるのか、ティオには皆目見当がつかなかった。
「なにしに、いくの?」
「何って、船に帰るに決まってんだろ」
「……」
「なに黙ってんだよ」
「ばか」
「はぁ!?」
いきなり馬鹿と言われ、ゾロは額に血管を浮かび上がらせた。
ティオを捕まえようと手を伸ばす。
が……
"ペシンッ"
長いイタチの尾にはたかれた。
「いって……」
「さにーごう、41ばん、ぐろーぶ。ばか」
「ぁあ? 何言ってやがる! 俺は確かにこの目で見た! 間違いなく1番だ!」
何を言ってるんだコイツは。
そんな眼差しで、ティオはゾロの記憶を、一部分だけ読んだ。
すると、『41』の『4』がシャボン玉で隠れている映像が、頭の中に流れ込む。
……なるほど、これなら馬鹿は騙される。
とはいえ、41番グローブにサニー号があると納得させる方法はない。
……ここは、1番グローブに連れていくと見せかけて、41番へ向かわせるのが得策か。
「わかった。いちばん、あんないする」
言って、41番グローブの方向を前足で指し、ゾロの頭にルートを流し込んだ。
ゾロは満足げに歩き出す。
「分かりゃいいんだよ」
その馬鹿さ加減に、ティオは半目でため息をついていた。