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32. シャボンディ諸島
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30番グローブのショッピングモールまでやってくると、ロビンが呟いた。
「ケイミーちゃん、来なかったわね……」
ナミも気になっていたのか、少し視線を伏せる。
「この島に入ってから、元気がないっていうか、ちょっと控えめになってるのよね……。サニー号で服選んでたときは、楽しそうにしてたのに……」
ロビンは、思い当たる節があるのか、隣のティオを見下ろした。
「ねぇティオ、もしかしてこの島には、悪い歴史が色濃く残っているの?」
ティオは無言で、横目にロビンを見上げる。
ナミは首を傾げ、悪い歴史? と訊いた。
……すぐ傍を歩いている、人間の女性たち。
そのきらびやかな笑顔を眺めながら、ティオは口を開いた。
「ここは、せかいのなかでも、とくに、ぎょじんやにんぎょ、さべつされる、しま」
「え……」
ナミの表情が強張る。
「にんげん、と、ぎょじん、の、かくしつ、おおむかしから、せかいじゅうで、あった」
「世界政府と魚人島の交友が示されたのは、たった200年前の出来事だと、文献で読んだわ。それまでは、魚人や人魚は魚類と分類され、世界中の人間たちから迫害を受けていたと」
「で、でも、魚人たちは人間よりも強いわよね……」
「多勢という力には、何者も及ばないわ」
「ここは、まりーじょあ、ちかくに、あるから、さべつ、いまでも、きえてない」
「どういうこと……?」
「せかいきぞく、の、めいれい、だれも、さからえない。かいぐんほんぶ、たいしょう、うごくから。それ、りようして、せかいきぞく、やりたいほうだい。かたんする、あくにんも、たくさんあつまる。せかいきぞく、おかね、たくさん、もってるから」
「それは分かるけど……それが差別とどう繋がってくるの?」
「とびうおらいだーず、なんのぐるーぷか、おぼえてる?」
「何のって……確か、人攫いチーム?」
「ひとさらい、なんのため、する?」
「それは、売り飛ばしてお金に……まさか」
「(コクン)…ここは、じんしんばいばい、さかんな、しま」
ナミは、今聞いている話と、周囲の賑やかな雰囲気が違いすぎて、妙な気持ち悪さを感じ始める。
「せかいきぞく、どれい、すいしょう、してる。すぎた、けんりょく、ぼうそうした、けっか、きぞくたち、へいみん、かじょうに、みくだすよう、なった。ぎょるいと、おもてる、ぎょじん、にんぎょ、さらにみくだす」
「……っ」
「ぎょじん、ちからもちで、じょうぶ。にんぎょ、みため、めずらしくて、きれい。だから、せかいきぞく、はじめとして、いろいろな、おかねもち、このんで、かっていく。ほんとは、いほう、だけど、せかいきぞくの、いうこと、だれも、さからえない。だから、このしま、じんしんばいばい、もくにん、されてる」
「ねぇ、ちょっと待って、それって、ハチもケイミーも、すごく危ないってことじゃないの!?」
「(コクン)…それでも、はち、は、なみちゃんのため、いっしょ、いくって、ふねで、いってた」
「あたしの、ため……?」
「つぐない、するって」
「……」
「けいみー、は、ずっと、りくに、あこがれてた。このきかいに、できるとこまで、つれてって、あげたいて、はち、いってた」
ロビンが、なるほどと頷く。
「タコさんが、自分たちを人間として扱ってほしいと言ったのは、そういうことだったのね?」
「(コクン)」
「ケイミーちゃんが控えめなのも、行動範囲を広げると危険が増すと分かっているから」
「(コクン)」
「でもそんなのって……。……何でもないわ」
ナミは反論しかけたが、世界貴族の絶対的権限を思うと、何も言えなかった。
ロビンが、慰めるように、笑みを浮かべて提案する。
「ケイミーちゃんへのお土産に、かわいい服をたくさん買っていってあげましょう?」
ナミはチラリと振り返り、ふっと笑みを浮かべた。
「そうね。……よーし! 値切って値切って値切りまくって、ケイミーが抱えきれないくらい買ってってあげるわよ!」
「……おみせ、の、ひと、かわいそう」
「ふふふふっ」
それから。
ナミは、多くの洋服店が立ち並んだ通りを歩き、商品の質がいい店を見つけると、片っ端から交渉を吹っ掛けて回った。
「だから、これ全部買ってあげるからマケなさいって言ってんのよ」
「いえ、あのっ、さすがに全て5割引きというのは……」
ロビンは、交渉をナミに任せ、ティオと一緒に洋服を見て回っている。
「どこのお店にも、この丸い帽子が置いてあるわね」
「しゃぼんでぃ、の、でんとう、こうげい、みたいなもの」
「ふふっ、これも、型取りはシャボン玉でしているのかしら」
と、そのとき……
「……」
ティオが、ジロリと店の壁を見やった。
「どうしたの?」
ロビンが訊くと、ティオは焦ったような表情で答える。
「ぞろ、が、おきてる……」
「?」
言葉の真意が分からず、ロビンは首をかしげた。
ティオは店の壁を、いや、その遥か彼方にいる、ゾロの気配を見つめている。
つい今しがた、限界まで広げていた覇気の端っこに、ゾロの気配が引っ掛かったのだ。
(29ばん、ぐろーぶ……)
一体どんなルートを通ったのか。
通常、41番から29番へ行こうとすれば、大抵の人は30番台を通る。
今30番に居るティオが探知できている範囲は、24番から38番。
本来ならもっと早い段階で、ゾロを探知できたはずなのだ。
けれど、ゾロはいきなり29番に現れた。
十中八九、関係ない番号の島を経由して、誰にも予測できないルートでやって来たに違いない。
(ほうこうおんち、いいかげんに、して……)
無法地帯の一角であるその場所で、ゾロの気配は、緊張感を抱いている人々の合間を歩いている。
……もしかしたら、近くに天竜人がいて、周囲の人々は膝をついているところなのかもしれない。
しかし、ゾロの感情はいつもと同じで、全く止まることなく歩き続けている。
もし、天竜人と出会ったとき、膝をつくことなく動き続ければ、必ず問題が起きる……
ティオはロビンを見上げた。
「てぃお、ぞろのとこ、いく。なにか、もんだい、おきてる、かもしれない、からっ」
「1人で行って大丈夫なの?」
「なにか、おこってたら、ちかくの、こうしゅう、でんでんむしで、れんらく、いれる」
「……分かったわ。気をつけて」
「(コクン) …ふたり、も、せかいきぞくに、きをつけて」
「えぇ」
"ボンッ"
その場で鳥の姿に変わったティオは、地を蹴り、店の外の空へと舞い上がっていった。