夢主の名前を決めて下さい。
31. 人魚のケイミー
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ところ変わって、シャボンディ諸島近くの、海上。
スッキリとした青空の下、船が2隻、波をかき分け並走していた。
片方はサニー号、もう片方は、ハチがタコ焼き屋を営んでいる帆船だ。
「うんめェ~~~っ!!」
響き渡る、ルフィの声。
今、麦わら一味は、ハチの作るタコ焼きをごちそうになっている。
「止まらねぇ! やめられねぇ! なんてうめぇタコ焼きだ!」
ルフィは作られたタコ焼きを片っ端から平らげ、時にはまだ焼けていない鉄板上のタコ焼きにまで手を出していた。
サンジは、じっくりと味の秘密を探りながら食べる。
「確かにうめぇ……どうなってんだ、このソースの味の深みは……」
「ニュー、そうだろそうだろ? これは昔、伝説のタコ焼き屋が使ってた秘伝のタレだ!」
ウソップはモグモグと口を動かしながら、船全体を見渡した。
「屋台船っつーのが、これまたオツだな」
ブルックも、初めて食べるタコ焼きに感激している。
「私、タコ焼きなんて文化に初めて触れました! いや~美味しいですねぇ!」
ケイミーやパッパグも、ハチを手伝って忙しく動き回る。
「ほいよ、一丁上がりだ!」
「はいは~い! こっちがダシ入り、こっちがモチ入りね!」
当のハチはといえば、6本の腕を駆使して、まるで大道芸のようなタコ焼き作りを披露している。
「ニュ~! 今日はどんだけ食ってもタダだからな! オメェらは俺たちを助けてくれた恩人だ! 好きなだけ食ってくれ!」
と、笑顔で言うハチだが、屋台船の
「……で、その、どうだ、ナミ……。その、味の方は……」
ルフィ、サンジ、ウソップは、背中にひやりとした空気を感じて、思わず手を止める。
ナミは、モグモグと口を動かしながら、ジロリと横目にハチを見た。
「……これで、何かが許されるわけじゃないわよね」
「い、いやっ、勿論そんな! そういう意味で言ったんじゃねぇんだ! ただ、味はどんなかな~って、ホントに!」
その言葉に偽りがないことは、ナミ自身、よく分かっている。
あまり意地悪しても可哀そうよね。
そう思って、ナミは満面の笑みを浮かべた。
「すっごくおいしい!」
その表情に、ハチは涙をにじませる。
「ニュ~ッ、そうか!? そうか!? 良かったァ~! よ~しオメェら、どんどん作るからよ、どんどん食ってくれ!」
ルフィ、サンジ、ウソップは、互いに目を見合わせて微笑んだ。
「ぃよ~しどんどん焼け~! 俺がぜ~んぶ食い尽くしてやる!」
と、そこに、
「おい、人魚! こっちも追加頼むぜ?」
フランキーから注文が入った。
ゾロ、ティオ、ロビン、フランキーは、サニー号の方でタコ焼きを食べているのだ。
右手にタコ焼き、左手に酒のジョッキを持ったゾロが、膝間のティオを見下ろして、眉を顰める。
「お前、なんで全部割っちまうんだよ」
ティオは、自分の分のタコ焼きを、1つ1つ半分に割っていた。
「あっつい。たべれない」
「ぁあ? なに猫みてぇなこと言ってんだ」
フランキーが、お前こそ何言ってる、と言いたげな顔をする。
「みてぇも何も、猫だろ、5分の1は」
「6、ぶんの、1」
「そこはどっちでもいいだろ」
「よく、ない。にんげん、わすれちゃ、め」
「ヘイヘイ」
ユルいやり取りに、ロビンは終始微笑んでいた。
すると……
「オ~~~~イ! 若旦那~~~!」
どこからか、声が聞こえてこた。
ゾロが周囲を見渡す。
「何だ? 誰だ、若旦那ってのは」
「この声……さっきの、トビウオライダーズのリーダーの人じゃない?」
「(コクン) …りーだー、も、めんばー、も、こっち、むかってる」
「まァた妙な言いがかりでも思いついたってか?」
ティオは首を横に振る。
「てきい、かんじない。……むしろ、うれしそう」
船の後方で、ザバザバと波の音がし始めた。
やがて、モトバロを先頭にした、トビウオたちの群れが見えてくる。
「待ってくれよ~ォ! 挨拶もなしってそりゃないぜ~! ハンサム……あ、間違えた、デュバルだぜ~?」
ハチの屋台船の横まで来ると、トビウオライダーズは止まった。
モトバロに乗ったデュバルの顔を見て、ルフィは機械のようにタコ焼きを口へ運びながらも、目をぱちくり。
「アレ、こいつこんな顔だったっけ」
サンジがタコ焼きを食べながら言った。
「骨格変えてやったんだ。もう何も言われる筋合いはねぇぜ」
「いや~黒足の若旦那! ボッコボコに顔面蹴られたあのあと、目を覚まして俺もうびっくり! こ~んなハンサムにして貰っちまって! もう自分でウットリ~。こりゃ女子がほっとかねぇべよ! 人生バラ色っ、みたいな!?」
デュバルは上ずった声で、ペラペラと喋り続ける。
「本当はすぐにでも、のんびり田舎に帰りてぇところなんだが、恩人たちに恩も返さず帰った日にゃあ、寝覚めが悪りぃってんでね! この海域は初めてだろ? 何か俺らで役に立つことがあれば、何なりと申し付けてくれ!」
そう言って、ウィンクをしようとするが、奇妙な顔になるだけ。
サンジはため息をついた。
「慣れてねぇならするなよ……。不満がねぇならそれで結構。頼みがあるとすりゃ、もう二度と俺たちの前に現れるな……って聞いてんのか人の話!」
デュバルは鏡を見て、いっそ白馬に乗りたいなどと呟いている。
「ちょ、ヘッド! ちゃんと話聞かなきゃ!」
「ん? あぁ、そうかそうか、え? 俺がハンサムだって?」
「言ってねぇよ一言も!」
そのとき、デュバルの視線は捉えた。
サンジの後方で、口元についたタコ焼きのタレをぬぐっていたナミを。
「おう……照れくさいが、受け取ったぜ、お前の投げKISS」
「は!? してない してない! タコ焼きのタレ拭いただけよ! どんな前向きな幻覚見てんのあんた!」
「あぁ、鏡よ鏡、この世で一番ハンサムな男は、俺?」
「一択クイズ!?」
ウソップがタコ焼きを頬張りながら言う。
「ハンサムは分かったが、元が馬鹿だからどうしようもねぇな」
「うん? ……あぁ、嫉妬?」
「違うわ!」
飛びかかりそうになるウソップを、隣にいたルフィが止めた。
「やめとけウソップ! なんか性格的に敵わねぇ気がする!」
デュバルはサンジに、細長い紙切れを渡す。
「ほんじゃ、若旦那たち、コレ、俺の電伝虫の番号なんで、いつでも呼んでくれ! 必ずアンタらのお役に立つぜ?」
「……だからウインクすんなって」
サンジは渋々、その番号を受け取った。
「それじゃ、ホント迷惑かけたな! とんだトバッチリでごめんよ? ……それじゃ、行くぜ人生バラ色ライダーズ!」
「「「イエス・ハンサム!!」」」
ザバァっと波をかき分け、トビウオライダーズ、改め、人生バラ色ライダーズは、大海原へと駆け出していった。
それからしばらくして。
「ぷは~。食った食った~。ごちそうさま」
大きく膨れ上がったルフィやウソップ、チョッパーは、屋台船の甲板に転がった。
「うまかった~。しやわせ~」
ブルックも、嬉々として食後の紅茶を注ぐ。
「いやァ、良い午後でした。初めてのタコ焼き、私も大満足です。……あ、失礼」
"ブゥッ、ゲ~~~~~ップ"
近くに居たナミが、骨頭をはたく。
「汚い! 何もかも!」
一方、タコ焼きを作り続けていたハチは……
「ニュ~……疲れた……。よく食うなァ。さすがは麦わら一味だ。腕があと6本欲しかったよ」
そう言って、厨房の床に倒れ込んでいた。
ケイミーはくすりと笑う。
「ふふっ、お疲れ様! みんな満足だって!」
「ニュ~、そうか、なら俺も満足だ~」
そこに、サニー号の甲板から声が掛かる。
「おーい、タコ助にヒトデ、ケイミーちゅわ~ん! 一休みなら甲板へ上がれ。茶はこっちでもてなそう」
「ニュ、そうか? 悪いな」
ということで、麦わら一味と、ハチ、ケイミー、パッパグは、サニー号の甲板で、食後のティータイムにすることにした。
「みんなはこのまま、シャボンディ諸島に向かうの?」
ウソップが、カップをテーブルに置きつつ答える。
「あぁ。魚人島へ行くには、そこへ行かなきゃならねぇって、ティオが。アイツは色々と知ってるからな。……けど」
その当人は、ウソップが視線を向ける先で、いつものように昼寝している。
ケイミーたちが居るため、案内は必要ないと考えたようだ。
「なんでシャボンディ諸島ってとこに行かなきゃならねぇのかは、まだ聞いてねぇんだ。……なぁゾロ~、ティオの奴、やっぱり起きねぇか?」
ゾロは片目を開けた。
「聞くまでもねぇだろ。今日はいつもより昼寝してねぇからな。緊急事態でもねぇ限り、
「はぁ……ってワケだ」
「ニュ~、なるほどな。シャボンディへ行かなきゃならねぇのは、俺たち魚人や人魚なら潜ってすぐに行けても、オメェら人間は、そのまま潜ると水圧で死んじまうからだ」
「ってことは、潜水艇か何かに乗り換えて、魚人島まで行くってことか?」
「いいや?」
麦わら一味が何も知らないと分かると、パッパグがピョンと欄干に飛び乗った。
「よーし注目! オメェら何も知らねぇみてぇだから、この辺の海のことを一通り教えといてやる!」
ゴホンと咳払いをして、パッパグは初めから語り始めた。
「まず、新世界へ抜けるルートだが、実際には2本ある。だが、お前らみてぇな無法者にとっては、1本しかねぇも同然だ」
ルフィがキョトンとした顔で訊く。
「何でだ?」
「そりゃオメェ、1本は世界政府にお願いの上、
ゾロが腕を組んで頷く。
「なるほど、そりゃ海賊には無理な話だ」
チョッパーは首を傾げた。
「それって、船はどうなるんだ?」
「船は一旦乗り捨てて、向こうの海で似た船を購入するんだ」
フランキーが目を剥いて怒鳴る。
「乗り捨てるだァ!? 出来るわきゃねぇだろンなこと!」
「まぁな。金もかかるし、申請に時間もかかる。だが、何より安全だから、普通はそうするもんなのさ。……けど、お前らはそうもいかねぇだろ? ってわけで、2本目のルート、魚人島経由の海底ルートが出てくるわけよ!」
「でもね? 海底ルートは危険も多いの!」
「あれ? ケイミー ケイミー、バトンタッチしてないぞ?」
「海獣や海王類に、船ごと食べられちゃう人たちもたくさんいるから」
それを聞いた瞬間、チョッパーとウソップがガクブル震え出す。
「おれ、魚人島行きたくねぇ……」
「俺も……」
ふと、ナミが首を傾げた。
「ちょっと待ってケイミー、今、船ごとって言った? やっぱり、海底に行ける船に乗り換えるってことなの?」
「ううん、この船で行くんだよ!」
「えっ、どうやって?」
「えっと、船に特殊なコーティングをしてもらうんだけど……説明するより、見てもらった方が早いかな」
ロビンが微笑んだ。
「確か、ティオもそんなことを言っていたわね」
ケイミーは、船の進行方向へ振り返る。
「きっと、もうすぐ見えてくるよ! シャボンディ諸島!」
新しい島への期待に、ルフィは興奮を抑えきれない。
「シャボンディ諸島かァ、どんな場所なんだろうな~っ、ワクワクすんなァ!」
ウソップとチョッパーは首を横に振った。
「魚人島行くの、考え直そうぜ? 海獣に食われんの嫌だよ、俺……」
「おれも おれも……」
しかし、当然ルフィは聞く耳を持たない。
「はぁやっく着っかねっかな~っ、シャボンディ諸島!」
―――この日。
まさか一味が全滅する事態になるだなんて、誰も、予想できるはずがなかった―――。
→ 32. シャボンディ諸島
10/10ページ