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31. 人魚のケイミー
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「分がるが!? ある日 突然 命を狙われたオラの恐怖! なしてオラが海軍本部に追われなぐっちゃならねぇ……っ、名のある賞金稼ぎに殺されがげにゃならねぇぬらか! オラがいったい何をすた!? オラの人生を返せ!」
「知るかァ!!」
"バキャァッ!"
海を泳いでアジトまでやってきたサンジは、デュバルの顔面に蹴りを一発かました。
「ぐぼっ、なっ、なァにが"知るか"だァ!? オメェ以外に誰がこぬ責任さ取るぬら!」
「うるせぇ! あの手配書に頭キてんのは俺の方なんだよ! 文句なら海軍のアホ写真部に言いやがれ!」
麦わら一味は、なんだか闘志を削がれ、サンジとデュバルの言い合いを眺めた。
「は~びっくりした。世界って広いわ~」
「サンジの奴、奇跡の星の下に生まれて来たんじゃねぇか?」
「ふふっ、いつの日か、すごく面白い最期を遂げそうね」
「うぉぉぅ、俺ァ、デュバルって野郎、不憫でならねェ……」
「こういうことってあんのなァ……」
「ニュ~、アイツらそっくりじゃねぇか」
「瓜二つだな」
「(コクン)」
「ヨホホホホホホッ、ヨホッ、ゲホッ、ヨホホッ、ヨッホッホッホッホッ!」
「ブルック! てめぇあとでハッ倒すからな!」
ルフィはあっけらかんとした顔で、シュバっと手を振る。
「じゃあサンジ、俺たち 先 戻ってっから」
「俺のせいかコレ!」
サンジはタバコを噛み潰しながら、デュバルの方へ振り返る。
「手配書に似たくなきゃ、まずは髪型とか髭とか! 簡単に変えられる場所があんだろ!」
「ぐぬぬっ……。……あー!」
デュバルは手をポンと叩いた。
「馬鹿なのかお前ら根本的に!」
「ぬっ、バカじゃねぇぬらべっちゃ! 俺たちはなァ黒足、俺たちは、この海の片田舎で、しがねぇマフィアをやってたんだよ……。村の住人たちを脅し回って暮らす、それなりに幸せな人生だった……。それがどうだ、ある日突然、レベル違いの海兵たちに追われ、背中に大きな逃げ傷を受け、世間にゃ二度とツラを晒せず鉄仮面……オメェのせいで、オラの人生メジャグジャだ! オラはオメェを地獄の果てまで追うだらべっちゃ! それがイヤなら、今ここでオラを殺せばいいぬら!」
「話が長げぇんだよ!」
サンジは片手でデュバルの首を掴み、締め上げる。
「ぐえぇっ、殺されるー!!」
「殺せっつったろーが。……ったく、テメェのくだらねぇ言いがかりで、何でナミさんやロビンちゃんやティオちゃん、果てはケイミーちゃんまで危ねェ目に遭わなきゃならねェんだ!」
「ぐぉ、オメェが海賊として名を挙げちまった原因の船、ならばそのクルーも俺の恨みの対象になって当然!」
デュバルはサンジを振り落とした。
サンジはクルリと回って地面に着地する。
そこへ、狙いすましたかのように、トビウオが2匹飛んできた。
間には、鉄の網が張られている。
"バフッ"
「おっと、しまった…っ」
サンジは網に絡めとられ、そのまま海へ引きずり込まれた。
"ザバァンッ!"
「苦しんで溺れ死ぬらァ! 黒足のサンジ!」
これはさすがにマズイと、一味の中に緊張感が戻る。
ルフィが真っ先に飛び出した。
「くそォ! 今 助けに行くからな!」
その首根っこを、ゾロが慌てて掴む。
「お前が行くな馬鹿! 俺が行ってくるから、お前は待ってろ!」
そこにハチが出てきた。
「待て! 人間じゃ遅くて追いつかねぇ! 俺に任せろ!」
デュバルはニヤリと笑む。
「フン、バカめ、オメェら魚人だろうが追いつきゃしねぇ。トビウオは海の生物中、トップクラスのスピードを誇るからなァ」
「ニュ……っ」
「奴が次に海面に出てくる頃には、哀れな水死体だらべっちゃ」
「何だとォっ!」
ルフィは怒りに任せ、デュバルを殴ろうと駆け出す。
すると……
「大丈夫だよっ!」
"ヒュオッ、ザバァンッ!"
ケイミーが海へ飛び込んだ。
パッパグが得意顔でデュバルに言う。
「おう、カウボーイ、オメェ、1人 存在を忘れてたな」
「ぁあ?」
「確かにトビウオは魚人より速ェ。海中でトップクラスってのも大したもんだ。……だが、そのトップクラスの頂点に立つ種族こそが、人魚だ!」
ルフィがキキィッと止まって、パッパグを見下ろす。
「アイツそんなにすげぇのか?」
「あぁ。この広い世界の海に置いて、人魚の遊泳速度に敵う者はいねぇ。ボーっとしてなきゃ、誰かに捕まるような種族じゃねぇんだよ、本当はな」
「そうなのか! すぅ~……お~いケイミー! サンジのこと頼んだぞ~! ……ん?」
海面が、ボコボコと泡立ち始めた。
「んぉ、ケイミーかな!」
もう助け出したのか、と、期待に胸を膨らませるルフィ。
しかし……
"ザバァッ!"
海上に上がってきたのは、ケイミーではなかった。
「何よ、あれ!」
残ったトビウオライダーズが、全員で、巨大な何かを海から引っ張り上げる。
フランキーはサングラスを引き上げ、それを見上げた。
「巨大船の碇か!? あんなモン当たっちまったら、一発で沈んじまうぞ!」
ウソップとチョッパーが走り回る。
「ぅぉおいどうすんだァ! バーストかパドルで避けられねぇのか!?」
「いや、間に合わねぇ! ……そうだ、ウソップ! オメェ船首付近で待機してろ!」
「えっ? あぁ、分かった!」
「緊急秘密兵器を使う!」
「秘密兵器!?」
フランキーは一目散に舵へと走る。
そのとき、ついにトビウオたちがロープを離した。
サニー号より大きな碇が、徐々に速度を上げながら落ちてくる。
ルフィが叫んだ。
「やべぇっ、何とかしろ! お前らーっ!」
舵までたどり着いたフランキーは、サイドのレバーを引く。
"ガチャ"
途端、ピークヘッドの
「緊急回避 秘密兵器、チキン・ボヤージ!」
"ギュルルルルッ"
"ザッパァ~ンッ"
あろうことか、サニー号は、スイーっと後ろへ下がり、巨大な碇を回避した。
トビウオライダーズは大騒ぎ。
「んなっ、嘘だろ!? バックする帆船なんて聞いたことねぇぞ!」
フランキーが、待機させていたウソップを呼びつける。
「おい! 船首の中へ入れ!」
「へっ? 船首って……うわっ、入れる!」
ピークヘッドに続く階段の一部が、ガコッと開いた。
ウソップがその中に入ると、フランキーは舵の辺りを操作する。
「ヘッ、避けただけで終わると思うなよ? この船はスーパァ~バトルシップだぜ?」
サニーの口の部分が、ガコンと開き、砲台が現れる。
途端、ルフィとチョッパーが目を輝かせた。
「「スゲーーーッ!!」」
「ウソップ、魚どもを出来るだけ円の中に入れろ!」
「え、円って……」
ウソップの目の前にあるのは、照準と思しき画面。
ウソップは手探りで操作し、出来る限り多くのトビウオを、照準の円内に収めた。
「入ったぞ! フランキー!」
「んじゃァ ロックしてレバーを引け!」
「ロックしてレバー……あー、これか?」
"カチッ、ガコッ"
"キュィィイイン―――"
"ドゴオッ!"
「ガオン砲、発射~!」
「「「ぐわあああっ!」」」
サニーの口から発射された、超高密度の光。
その直撃を受け、ほとんどのトビウオが、アジトもろとも吹き飛ばされた。
「ハッハッハッ! 見たかサニー号の実力!」
ほう、と感心しながら見ていたゾロは、傍で眩しく光る何かに目を細めた。
いったい何が光っているのかと、手をかざしながら見てみれば、ルフィが涙を流しながら絶句している。
「感動しすぎだろ……」
と、そのとき。
"ザバァッ!"
サンジを抱えたケイミーが、海面まで上がってきた。
いち早く気づいたナミが、手を振る。
「ケイミー! サンジ君は無事~!?」
「あ、ナミちんっ、それが大変なの! サンジちん凄い出血で!」
「えっ!?」
それを聞きつけ、チョッパーが欄干まで駆け寄ってくる。
「怪我してんのか!?」
「わ、分からないけど、助けたと思ったら、鼻からいっぱい血を吹いて!」
「え……鼻血?」
目を凝らしてよく見れば、サンジは、ケイミーの胸に抱かれていて、ハートの目で鼻血を流している。
ウソップが半目で言った。
「あー……いいよ、そのまま死んだら死んだで……」
ナミも半目で賛同した。
「そうね、幸せそうだし?」
しかし、それでは気が収まらない男が1人。
「チクショウっ、アイツ生きてやがったか」
膝に拳を叩きつけ、憤るデュバル。
その目の前に、ルフィが立ち塞がった。
「もう随分と、部下が減っちまったなァ」
「くっ、おのれぇ! アイツの名が挙がったのも、そもそもは船長であるお前のせいぬらべっちゃ! 許さねぇど!」
デュバルが両脚で、バイソンの背を軽く蹴ると、バイソンは唸り声をあげた。
「このモトバロは、"心臓破りのツノ"を持つ化け物だ! 今日までに、この強靭なツノの餌食となった者の数は計り知れず、村のダムに風穴を開けたのもコイツのツノ! 檻に入れりゃあ突き破る! 海軍の追手から、命からがら逃げおおせたのも、コイツのツノがあったおかげだ!」
ルフィは拳をパキポキ鳴らす。
「よーし、止めてやる!」
「行けぇ! モトバロ!」
"ヴオオオオッ!"
"ドシィッ!"
ルフィは、モトバロの顔面を受け止めた。
チョッパーがあんぐりと口を開ける。
「ツノ関係ねぇ!」
ルフィは、軽々とモトバロを押さえつけながら、キッと睨みを利かせた。
「お前とは戦うだけ無駄だ」
その瞬間……
"ヴオォ……"
モトバロはガタガタと震え、ルフィから離れるように後ずさり始めた。
「ん? おい、どうしたぬら、モトバロ!」
モトバロはそのまま、跳ねるように逃げていく。
途中、デュバルを振り落とした。
"ドサッ"
「うおっ! ちょ、待てモトバロ! どこへ行くぬら~!」
モトバロはしばらく、くねくねと妙な走りを見せた後、急に倒れた。
"ドサァッ……"
一部始終を見ていた麦わら一味は、顔を見合わせる。
「な、なんだ……?」
「牛が、気を失ったぞ……」
「ちょっとルフィ! いったい何したの!?」
ナミに訊かれるも、ルフィは首を傾げるばかり。
「俺なんもしてねぇぞ?」
ロビンが冷静に分析する。
「今、ルフィがあの牛を、威圧したように見えたわね」
それを聞いたウソップは、眉を顰めた。
「何だそりゃ。迫力勝ちみてぇなもんか?」
今のルフィの一撃が何だったのか。
この場で知るのは、ただ1人。
「……」
ティオは、青い瞳をほんの少しだけ見開き、じっとルフィを見つめていた。
(……はおう、しょく、の、はき)
まだ完全ではない。
けれど、ルフィには、王の資質が潜在していたということだ。
これまで遥か彼方に思えていた海賊王の称号が、少しずつ近づき始めているのを、ティオは心の奥底で感じていた。
「おぬれェ、麦わらの一味ィっ!!」
デュバルが、ルフィに毒銛の銃を向ける。
ルフィは反撃しようと構えた。
しかし……
「待て、ルフィ」
後ろから声が聞こえ、構えを解く。
「おう、サンジ! 無事で良かった!」
びしょ濡れの姿で歩いてくる、サンジ。
その瞳は、静かな怒りに燃えていた。
「この言いがかり馬鹿の一件、俺が始末をつける」
「ん、そっか」
デュバルは怒りに震える拳を握り込む。
「始末だァ!? そんだばお前が死ねぇ! オメェが生ぎで海賊を続げる限りィ、オラには永久に平穏な日は訪れねぇんだべっちゃ!」
連射される毒の銛を、サンジは華麗に避け、デュバルへと突っ込んだ。
「黙れクソ野郎! 俺にとっても見たくもねぇあの手配書の落書き! そいつが実在してんじゃねぇよ!」
"ヒュッ、ドゴォッ!"
サンジの鋭い蹴りが、デュバルの目元に決まった。
「ぎゃああっ!」
「
"ズゴッ、ダダダッ、ガンッ、バキィッ!"
「
"ドガガガガガガッ!!"
「ダバァァァッ!!」
……耳を塞ぎたくなるほどの痛い音を最後に、サンジの連撃は止まった。
デュバルは崩れたアジトに突っ込む。
"ドゴォッ!"
「「「へ、ヘッド~~~!!」」」
シュタっと降り立ったサンジは、新しいタバコに火を灯し、フっと煙を吹いた。