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31. 人魚のケイミー
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"ドゴオッ……ボゴオッ……"
サニー号の周りで、未だに続く爆発音。
1匹、また1匹と落とされていくトビウオ。
それを見るゾロの目は、霞んでいた。
「……っ」
体の奥の方が、疼くように痛む。
ふらりと、右側に体が揺れた。
(やべ……っ)
"―――トン"
「……?」
膝をつく前に、体が何かに当たって、支えられた。
右を見れば、見慣れた金髪の頭。
ティオだ。
「……」
ティオは、何も言わず、ただそこに立っていた。
視線はずっと、サニー号の上を飛び回るトビウオたちに向いている。
ゾロは数秒、ティオを見下ろしていたが、やがて何も言わず、前を向いた。
そこに……
「ヨホッ、ホッ、ドュハ~ッ! さすがにもう限界です!」
海の上を走り回り、トビウオを落とし続けていたブルックが、勢いよく飛び込んできた。
「いや~~もう、足ツリそうです! あ、ツる筋肉ないんですけど~、ヨホホホホホッ!」
ゾロは青白い顔で、ニヤリと笑む。
「張り切ってんな、ブルック。だいぶトビウオ共を落としたんじゃねぇか?」
「ハァッ、ハァッ、そりゃもう、お役に立たねばと、ハァッ、でも、ちょっと休憩……」
ブルックはその場で伸びながら、ゾロを見上げた。
……わずかにティオの方へ傾いた体、青白く、冷や汗の浮いた顔。
「……ゾロさん、あなたやっぱり、まだダメージが」
「フン、こんな魚たちに参るほどじゃねぇ。気にすんな」
「……」
ブルックはそれ以上、何も言わなかった。
と、そのとき、ティオが後ろを向いた。
青い瞳に映ったのは、迫り来る、1匹のトビウオ。
「ひゃっは~! 背中がガラ空きだぜ~?」
ゾロは舌打ちしながら、刀の鍔を弾く。
しかし……
「六刀流・
"ズバンッ!"
ゾロより先に、ハチの剣がきらめいた。
トビウオは頭からアジトの一角に突っ込む。
ゾロは刀を鞘に戻し、ハチを振り返った。
「へぇ、助けてくれたのか」
「ニュ~、おうよ! オメェらがぼ~っとしてっから!」
「そりゃありがてぇが、」
「ハイ、ちょっと失礼しますよ!」
「ニュ?」
"ヒュオッ、ズババンッ!!"
ハチの後ろに迫っていたトビウオたちを、ゾロとブルックが斬り落とした。
「だからツメが甘めェつってんだよ」
「ニュ~、またしてもありがとなァ」
「しっかし、斬っても斬っても減らねぇ。あと何匹いやがんだ?」
ティオがサニー号の上を見て、目を細める。
「これで、やっと、はんぶん、くらい」
「これで半分か。張り合いはねぇが、面倒な連中だな」
などと、呑気に話していると……
"ヴォォォォ……"
"ヒュヒュッ、カカカッ"
「うわっ、危ねぇ!」
どこからか、妙な唸り声と、ルフィと思しき声が聞こえてきた。
「「「?」」」
不思議に思って声のする方を見れば……
"バキバキッ、ドゴオッ!"
アジトの一部が崩れ、ルフィが飛び出してきた。
「あ? 何してんだルフィ」
「はっ、はぁっ、逃げろみんな! でっけぇのが来るぞ!」
「でっけぇの?」
「仮面のヤツと、あと牛だ!」
「は? 牛?」
"ヴオオオオオオオ!!"
アジト一体に響き渡った、唸りにも似た鳴き声。
そして……
"バキャアッ!"
巨大な黒いバイソンが、アジトを踏み潰して出てきた。
背中に、鉄の仮面を被った男が乗っている。
「おいコラ、バタバタと叩き落とされやがって。テメェらは蚊やハエか! トビウオライダーズ!」
その声に、トビウオライダーズのメンバーは肩をすくませた。
「も、申し訳ありません! ヘッド!」
「い、今すぐコイツら、全員 海へ引き込みますんで!」
「……俺ァな、好きでこんな人攫い稼業やってんじゃねぇんだよ。よく分かってるよなァてめぇら!」
「「「も、勿論です!!」」」
「あぁ、今日はめでてェ、とんでもなくめでてェ日だ。殺したくて殺したくて夢にまで見たあの男が、今俺の目の前に居る! ありがてぇ。神さまってのァいるんだなぁ!」
男は、サニー号に向けて声を張る。
「ある日突然、俺を地獄のどん底へと突き落としやがったその男! 俺は今日ここで、たとえ刺し違えようとも、必ずお前を殺すぞ!」
そう言って、ビシっと指をさした。
「黒足のサンジ!」
「!?」
指をさされた本人は、唖然としてまばたきを繰り返す。
しかし、仮面の隙間から覗く男の目は、本気のようだ。
「会いたがったぬらべっちゃ……」
「やべぇっ、ヘッドが怒りで訛り始めた!」
サンジは依然として呆けている。
「は、俺? 俺を殺してぇってのか?」
「サンジ、オメェ何かしたんじゃねぇか?」
「いや、つってもよォ……」
「あ、レストランの時代じゃない? よく思い出して! サンジ君!」
「あー……そんな前の話なら、あの時代は人の恨みを買うことばっかしてたからなァ……」
ウソップとチョッパーが取り付く。
「討たれろ、自業自得だ」
「何なんだよアイツ~、怖ぇよ~」
懸命に記憶を探り、指折り数えて思い出そうとするサンジだが、どの件だか分からない。
それを見て、男は怒りに肩を震わせる。
「すっトボケてんじゃねぇ黒足ィ! ごく最近の話だァ!」
"ヒュヒュッ、ドカカカカカッ!"
サニー号目掛けて、大量の
「きゃあっ」
「危ないナミさん!」
サンジはナミの上に飛んできた
ウソップは涙目になりながら
「ひぇ~~~っ! ちょっとサンジく~ん! 俺のことも助け……って、ん? この銛、なんか紫色の煙が……」
「コイツにはサソリの毒を仕込んであるぬらべっちゃ。刺されば3分であの世へ行ける」
「なにぃぃっ!?」
「俺の怒りの程を知れぇ! 黒足もその仲間も皆殺しだァ!」
毒の銛が、次々にサニー号へ撃ち込まれる。
しかし、サンジは男のことを全く思い出せなかった。
「だぁチクショー! いったい誰なんだアイツは!」
それを知っているのは、この場でただ1人、ルフィだけ。
「俺、あの仮面の下 見た」
ゾロが訊く。
「本当か。何者だ?」
ルフィは男に向かって走り出した。
「今 見せる! 驚くなよ? お前も知った顔だぞ!」
「俺も?」
タタタタッと駆け抜け、ルフィはピョンと飛んだ。
「うおおおおっ!」
"バキッ!"
狙いすましたように、鉄の仮面だけを蹴り飛ばす。
吹き飛んだ仮面は、傍に転がった。
「ああっ、あの野郎! ヘッドの鉄仮面を!」
仮面を外された男は、顔を上げた。
「……いいさ、よく見ろ。この俺の傷ついた顔を、よく見るがいいぬらべっちゃ!」
男の顔を見て、一味は全員驚愕する。
「あぁっ!?」
「うそ……っ」
「え~~~っ!?」
「コイツはっ」
「あるんだ、こんな、こと」
「まぁ、ふふふっ」
「ウオオオ……泣けるぜこりゃぁ……」
「ヨホッ、これはこれは」
当のサンジはといえば、形相が鬼のように険しくなっていく。
「オラはなァ、今日という日を待ってたんだらべっちゃ……。貴様をブチ殺すと決めで、オラァ海さ出た! だどもオメェを探すのは大変だっただァ! なにせ手配書と本人の顔が違げぇからなァ!」
サンジは握った拳を震わせ、海へ飛び込む。
"ザバァンッ"
「へ? おいっ、サンジ!?」
「……海軍や賞金稼ぎは、もすかすたら本人を見がげでも素通りすっかもしんねぇ。……ぃんやそんだらこたァねぇ。奴らはお前を見づける。そんで言うぬら。"見づげだどー! 黒足のサンジー!" ……そんでオラは言う」
男は涙ながらに叫んだ。
「オラ違げぇよ~! オラそんな奴知らねぇよ~! 海賊ですらねぇぬらべっちゃ~!」
―――そう。
サンジに恨みを持ち、麦わら一味を狙っていた、トビウオライダーズのリーダーは―――
サンジの手配書の顔と、瓜二つの男、
デュバルであった。