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31. 人魚のケイミー
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「イタタタタ……って、あまり痛くない?」
降ってきた影は、はたと自分の下を見た。
「え……わーっ! 人間のヒトつぶしちゃった~!」
慌ててサンジの上から退き、助け起こす。
「ごめんなさい! 大丈夫っ?」
サンジは既にメロメロ顔。
「あはは、いやいやいいんだそんなこと」
……甲板でピチピチと跳ねている、ピンク色の尾びれ。
一味は全員、目を見開いた。
「まさか本当にっ」
「「「人魚!?」」」
その声に振り返った、人魚と思しき少女。
「ん……? わーっ! ビックリした! いっぱい人間のヒトォ!」
「こ、こっちがビックリだぞ……」
少女は、居住まいを正して笑顔を見せた。
「私はケイミーっていうの! 消化されそうなところを助けてくれて、どうもありがとう! 私、怪獣に食べられやすくって、かれこれもう20回目くらい!」
「食われすぎだろ……」
「あ、そうだ! 何かお礼をしなくっちゃ。……ん~、そうだなぁ……あ、タコ焼き食べる?」
真っ先にルフィが食いついた。
「タコ焼き!? 大好物だ!」
「ホント!? 良かった! じゃあお一人様、500ベリーになります!」
そこに、手袋のような影が飛んできて、ケイミーの頭をはたいた。
「商売かい!」
「間違えちゃった~!」
ケイミーの驚いた顔に、麦わら一味の方が驚かされる。
そこに、サンジがくるくる回りながら飛び込んできた。
「に~んぎょほ~う! そう! 全人類の憧れ人魚! 海の宝石 人魚! そんな人魚に俺は出会った~! か~わうぃ~な~ァ、人魚なんて俺はじめて会ったよ! ケイミーちゃんて言うんだね~ぇ?」
ウソップが冷静にツッコんだ。
「初めてじゃねぇだろ? おめぇココロばあさんに会ったじゃねぇか」
その瞬間、ピシャアアッと、雷に打たれたようにサンジの表情が激変する。
「……スリラーバーク? 恐くねぇよ……今までで何が一番恐ろしかったかってそりゃ……」
「す、すまねぇサンジ! アレはなかったことにしよう!」
ナミが半目で言った。
「アンタら失礼よ」
ルフィがこてっと首を傾げる。
「ん? ココロのばあさんは人魚だったのか? だって歩いてたじゃんか」
フランキーが、あぁ、と顎に手を当てた。
「そうか、オメェは知らなかったか。ルッチと戦ってる真っ最中だったからなァ」
「ん~~なんつーか、ココロのばあさんが人魚って、すげーイヤだな」
"バキッ"
「アンタ露骨すぎんのよ!」
ルフィを殴ったナミは、大きくため息をついた。
「まったく、この男どもの人魚への願望ときたら……」
隣でロビンが微笑む。
「ふふふっ、でも、可愛らしい人魚さんね」
ティオも頷いた。
「(コクン)」
ブルックがコツコツと歩いてくる。
「ヨホホホッ、いや~私も人魚さんにお会いするのは初めてですよ! ……あの~、すいません」
「ん、なぁに?」
「お金、貸して頂けませんか?」
"ゲシッ"
「何でだよ!」
サンジがブルックを蹴り飛ばした。
「ガイコツゥゥ!?」
「ほら見ろ! 恐がってんじゃねぇか! 向こう行ってろ!」
「頭も開きますよ? 面白いでしょ?」
パカっと、ブルックが頭を開いて見せると、ケイミーはパチパチと手を叩いた。
「おもしろ~い」
ウソップが半目になる。
「受け入れ早ぇな、お前……」
その隣で、あっけらかんとした顔をしていたルフィが、訊いた。
「ところでお前、う●こ出んのか?」
あまりの質問に、サンジが目を剥く。
「何を訊いとんじゃコラァ!」
けれど、ケイミーは笑顔のまま。
「あ、う●こはd「出ぇなぁ~い!」
サンジが死ぬ気で答えを遮った。
「あ、んじゃよぉ、あの喋る手袋は何だ?」
言って、ルフィはミョ~ンと手を伸ばす。
オレンジ色の、妙な生き物を掴んで、引き寄せた。
「あ、すっかり忘れてた! ペットのパッパグだよ! 私の師匠なの! ちなみにヒトデ」
紹介されたパッパグは、やっと自分の番かと言いたげに、誇らしそうな顔をする。
「よくぞ聞いてくれた! このトップデザイナー・パッパグの名を!」
麦わら一味は目を見合わせた。
「ヒトデって喋るんだっけ……?」
「ペットで師匠っておかしくない?」
パッパグは、どこからかギターを取り出す。
「飼われてやってんのよ、ワケあってな。……ケイミーは、いつもハマグリをくれる」
「要するに、エサね」
パッパグは、意気揚々とギターをかき鳴らし始めた。
……が。
「―――で、このTシャツは"クリミナル"ってブランドで、魚人島で流行ってるんだ!」
完璧に無視されたパッパグは、欄干に寝転がり、干された手袋のようになる。
「―――ていうわけで、"クリミナル"のデザイナーが、あのパッパグなの! 私もいつかデザイナーになりたくて」
「へぇ~、それでアイツが師匠なのか」
一味はくるっと、パッパグを見る。
ルフィが訊いた。
「ほんでオメェ、何で喋るんだ? ヒトデなんだろ?」
途端、パッパグは元気を取り戻し、シュタっと立ち上がる。
「よく聞いてくれた! ……ガキの頃、俺は自分をヒトだと勘違いしててな。ヒトデだと気づいた頃にはもう、ヒト語を喋ってた」
「それで喋れちまうもんなのか?」
「勢いって怖ぇよな。この世は何でも勢いだぜ! 兄ちゃん」
「あ、そうだ、ケイミー! タコ焼きは?」
「また無視かい!」
ケイミーが、どこからか電伝虫を取り出す。
「タコ焼きを作るには、はっちんとどこかで待ち合わせしないと」
「はっちん?」
"プルプルプルプルプル、ガチャ"
「あ、もしもしはっちん? こちらケイミーだよ!
『……』
しーんと押し黙っている電伝虫。
ケイミーが首を傾げ、麦わら一味が目を見合わせると、ようやく声が聞こえてきた。
『おー、その声、ケイミーか? モハハハ。わいが誰か、分かるか? ハチじゃないぜぇ?』
「はっちんじゃないのォ!?」
『マクロだよォ! 毎度おなじみ、ズッコケマクロ一味だ! ……って、自分でズッコケって言っちまったよ……』
「むっ、どうしてアンタがはっちんの電伝虫持ってるのよ!」
『何でってオメェ、ハチの野郎をやっつけちゃったからに決まってんだろォ? モハハハハハハ!』
「嘘よ! はっちんがお前たちなんかにやられるわけないんだから!」
『まぁそうだな、いつもなら、わいらはハチに敵わねぇ。けど、今回はなんと、あの"トビウオライダーズ"と手を組んでいるのだ! モハハハハハハッ!』
『ニュ~、ケイミー、無事だったか、よかった』
「はっちん!? 本当にやられちゃったの?」
『ニュ~、ちょっと油断しただけだ。オメェはここに来ちゃ駄目だぞ? なぁに、俺はひと暴れしたらすぐ帰るから、大丈夫だ』
『モハハハハハッ! おいケイミー、コイツはこのまま売り飛ばしちまうぜ? タコの魚人は珍しいから高く売れる! 助けに来たきゃ来るがいい。ここはシャボンディ諸島44番グローブから東に5kmの海。人攫い組"トビウオライダーズ"のアジトだ!』
『ニュ~! ダメだケイミー! 絶対に来るんじゃねぇぞ!』
『黙れこのタコ助!』
"バキッ"
『ニュ……ッ』
『フン、じゃあな』
"ガチャ"
不穏な音を最後に、電伝虫は切れた。