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3. ノックアップストリーム
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メリー号は巨大な水柱の上を滑っていく。
一方、黒ひげたちのイカダは壊れてしまった。
ウソップが青ざめて声を震わせる。
「ど、どどどどうなってんだこりゃ!?」
「船が水柱の上を垂直に走ってるぞ!」
「うほぉっ! おもしれぇ!」
「どういう原理だぁ!?」
と、その時……
"フワァ……"
「!」
ティオの軽い体が、水柱の起こす風で浮いてしまった。
"パシッ"
「おい! ちゃんと掴まっとけっつったろ!」
そのまま吹き飛ばされ海へ落ちるところを、ゾロが捕まえてくれた。
「……ありが、とう」
ティオは船の真ん中辺りで降ろされた。
今の船の中では、一番安全なところだ。
「よ~しっ! このまま空島へ行けるぞぉ! 行け~! メリー!」
ハイテンションなルフィだが、サンジは表情を曇らせる。
「……ちょっと待った。そう上手い話でもねぇらしい」
「んぁ? なんか忘れ物でもしたのか?」
「船体が浮き始めてる。このままじゃ、弾き飛ばされるのがオチだ」
確かに、メリー号は先頭の方から水柱を離れつつあった。
重力と摩擦力の影響だろう。
「そ、そそそんなこと言ったってどうするってんだこんなとこで!」
「勢いで登っちまってんだ! どうすることもできねぇぞ!」
「うわああああああああっ! なんかいっぱい落ちてくる! ノックアップストリームの犠牲者か!?」
上の方から船の残骸が大量に落ちてきた。
「……」
誰もがパニックに陥る中、ナミだけが冷静に風の動きを読む。
「帆を張って! 今すぐに!」
「え?」
「これは海よ。ただの水柱なんかじゃない! 立ち上る海流なの! そして下から吹く風は、地熱と爆発によって生まれた上昇気流! 相手が風と海なら航海してみせる! ……この船の航海士は誰?」
「んナミさんで~す!」
ナミの言葉に、そわそわしていたクルーたちは全員動き出した。
「おい野郎ども! すぐナミさんの言うとおりに!」
「「「おう!」」」
船の帆が下ろされた。
「右舷から風を受けて舵は取舵! 船体を海流に合わせて!」
「「「イエッサーッ!」」」
メリー号はナミの指示通りに舵を取る。
「ヤバイ! 船が水から離れてる!」
「落ちる! 何とかしろナミ!」
「ううん! 行ける!」
メリー号はそのまま直進し続けた。
しばらくすると、船体が水を切る音が聞こえなくなる。
「飛んだーっ!?」
ルフィの言う通り、メリー号は完全に宙に浮いていた。
「すげぇーっ! 船が空を飛んだ!」
「マジか!」
「うはぁ~!」
「やった!」
「へぇ」
「わぁ…」
「ナミさん素敵だ~! そして好きだぁ~!」
「この風と海流さえつかめば、どこまでも登っていけるわ!」
「おいナミ! もう着くのか!? 空島!」
「あるとすれば、あの雲の向こう側よ!」
「雲の上か……あの上にいったい何があるんだろうな……よ~しっ! 雲に突っ込むぞ~!」
ルフィが宣言した数秒後。
"ボフンッ!!"
潰されそうな風圧と、耳をつんざくような音がした。
……そして、いきなり静かになる。
「……ゴホッ、ゴホッ」
「ゲフッ、ゴホッ」
「はぁ、はぁ……」
急激な減圧と酸素濃度の減少で、誰もが膝をついた。
「はぁ、まいった……何が起きたんだ? 全員いるか?」
「はぁ、はぁ……」
「おい! みんな見てみろよ! 船の外!」
ルフィはいち早く元気になったようで、みんなを催促する。
「うっ、はぁっ、はぁっ……」
ティオは朧気に目を開けた。
気絶していたわけだはないが、酷く苦しい。
「何だここは……」
「ま~っ白!」
「雲!?」
「雲の上!? なんで乗ってんの?」
「そりゃ乗るだろ、雲だもんよ」
「「「いや、乗れねぇよ!」」」
「うわあっ! ウソップが息してねぇぞ!」
「何!? 何とかしろ! 人工呼吸だ!」
「よし! 俺はナミさんと人工呼吸だぁ!」
「アホか……」
メリー号の甲板は色々な意味で騒然とする。
それからしばらくして、ウソップの目が覚めた。
「ウソップ! 大丈夫か!?」
「ん……雲か……って何ぃいっ!? 雲じゃねぇか! いや雲すぎるだろ! 何だよコレ!!」
どうやら大丈夫そうである。
「おい、大丈夫か?」
ゾロはティオの腕を掴み、立ち上がらせた。
「……だい、じょ、ぶ」
ティオはフラフラとした足取りで、船の欄干に体をもたれかける。
(……くも)
目に映るのは、一面真っ白な雲の世界。
資料やデータでは知っていたが、本当の空島を見るのは初めてだ。
「……」
何だか言いようのない不思議な心地がする。
初めての"ワクワク"という感情を抱いて、ティオの冒険は始まった―――。
→ 4. 空島
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