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30. 命を賭して
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それから、麦わら一味は屋敷の庭で、丸一日眠った。
夜通し戦っていたため、当然だ。
昼になって、一味はようやく目を覚まし、ローリング海賊団と共に動き始めた。
「腹減ったぞサンジ~!」
「これから作るっつっただろうが。チーズでも齧ってろ」
巨大なチーズを投げ渡され、ルフィはむすっとしながらそれを齧る。
「チーズじゃダメだ、チーズじゃ! 俺はチーズじゃ動かねぇ!」
「絶対おかしいってお前……いつも戦いの後は何日も寝てんのによォ」
「おら、さっさと食器と食料を庭まで運べ。被害者の会の連中、あそこを離れたがらねぇからな。あっちでメシ作ってやる」
ローラが苦笑した。
「悪いわね。何せ、みんな何年かぶりの太陽が嬉しくて。涙流して日光浴してんのよ。食料は足りる?」
「あぁ。問題ねぇ。
「あらそうなの。誰の仕業かしら。親切な奴がいるものねぇ」
……それが、ペローナとその部下のゾンビたちによるものだとは、ナミとティオ以外は知らない。
「財宝まであんなに。100歩ゆずってクリスマスだとしても、景気良すぎるわ」
甲板に積まれた財宝の上では、ナミが幸せそうに寝そべっている。
「はぁ~……しあわせっ」
「おっ、ガラスのバンドみっけ! かっちょいいなぁコレ! も~らい!」
「おいおいルフィやめとけって! ナミが怒るぞっ?」
「いいわよ、それなら。宝石じゃないから」
「え、そういうこともあんのか……」
ウソップは、自分も何かいい感じのものを貰おうと、物色し始めた。
ナミはローラにビシッと人さし指を向ける。
「言っとくけど、アンタらにはひと欠片もあげないからね!」
「恩人たちの船から何も奪りゃしないわよ、ナミゾウ」
「……え?」
「ん? 口をついて出ちゃったわね。ナミゾウって誰? ……そういえば変なのよね。アンタとは何故か、初めて会った気がしないの」
「もしかしてっ、ローラ!?」
「え? えぇ、そうよ?」
「きゃーっそうだったの!? ローラ! また会えて嬉しいわ!」
ウソップがギクッとする。
「ろ、ローラってまさかっ、あの猪ゾンビのことか!?」
ローラ自身にはその記憶は無いため、唖然とするばかり。
「ふふっ、分かんないわよね。後で教えてあげるわ。……とりあえず、」
"ガシャン"
「コレ貰って! お礼よ!」
ナミはローラに、宝の一部を渡した。
「ええっ!? いいの!? お礼!?」
途端、ルフィとウソップは青ざめ、欄干から空に向かって叫ぶ。
「「ナミが人に財宝をあげたァァァ! 嵐が来るぞォォォ!」」
船の傍で食器や食料を受け取っていたフランキーは、首を傾げて空を見上げた。
「ん、嵐? 天気いいぞ?」
……もちろん、嵐が来ることはなかった。
ところ変わって、崩れた屋敷の庭。
ローリング海賊団は1人残らず、瓦礫の上に大の字になって、日光を浴びていた。
「はー……幸せだ……」
「光が体に染み渡る……」
「生きてるんだ、俺たち……」
そこへ。
「お~~い、メシ持ってきたぞ~!」
麦わら一味が、食料や食器を運んできた。
「あれっ、麦わらたち!?」
「何だよ! 言ってくれたら運んだのに!」
「恩人たちを働かせるなんて!」
ローリング海賊団は、慌てて麦わら一味に駆け寄り、荷物を受け取った。
ルフィが訊く。
「ゾロ、起きたか?」
「いや、絶対安静で屋敷の中だ」
麦わら一味は屋敷の中へ入った。
奥の方に急遽作られた寝台に、ゾロが寝かされている。
その腕には、ティオが丸まって抱きつき、眠っていた。
傍ではチョッパーが看病している。
「頼まれてた道具と薬、持ってきたぞ! チョッパー!」
「? おう! ありがとな!」
「ゾロの具合、どうだ?」
「……こんなにダメージを残してるのは初めて見たよ。命だって本当に危なかったんだ。……ティオの反応も普通じゃなかったし」
ナミは、無数の涙の痕が残っているティオの頬を、そっと撫でる。
「まぁ、何かあったと考えるのが妥当よね。あたしたちが寝てる間に。……そして、ティオはそれを知っている」
少し離れたところで、ブルックは黙って話を聞いていた。
「……」
ロビンが付け加える。
「あの七武海の男に関係していることは確かね。ルフィの首を取ると言っていた彼が、そのまま帰ったとは考えにくいもの……」
ウソップは半目でルフィを見た。
「俺としては、ルフィが異常に元気なことも気になる」
「あっはっはっ! そればっかりは俺にも分かんねぇ!」
と、そこに。
「何が起きたか! 実は見ちった!」
「俺も見ちった! 一部始終!」
ハイテンションなリスキー兄弟が現れた。
「教えてやろう! あの時何が起きたのか!」
「実はな…"ガシッ"…うぷっ!?」
「……ちょっと来い」
喋ろうとした2人を、サンジがひっ捕まえて外に出ていく。
ルフィはまばたきを繰り返した。
「ん? サンジ?」
「ちょっと何で!? オメェもイカしてたぜ? コックの兄ちゃん!」
「剣士より『俺の命を取れ』なんてっ、マジしびれた!」
「うっせぇよ。……早く話せ。あの後何が起きたのかを。俺が気を失ったその先だ」
ゾロを見つけてから、ティオは一言も口を利かなくなった。
つまり、仲間にすら言えない、いや、仲間だからこそ言えない何かが、ゾロの身に起こっていたということだ。
リスキー兄弟は、サンジに全てを話した。
「……ルフィのダメージを、クソ剣士が全て受けた?」
「あぁそうさ!」
「悪ィが俺は、あの剣士、命はねぇと思ったよ……だから泣けちった!」
「マジ泣けちったよぉ!」
「……
「よーし! 麦わら一味の美談! みんなに話してこようぜ!」
「おうよ!」
リスキー兄弟はうずうずしながら走り出す。
「待て馬鹿共」
「えっ?」
「何だよ」
「野暮なマネするな。……アイツは恩を売りたくて命張ったわけじゃねぇ。特に、自分の苦痛で仲間を傷つけたと知るルフィの立場はどうなる」
「えっと……」
「それは……」
「みんな無事で何より。それでいいんだ。……さぁ、メシにするぞ」
サンジはタバコの煙を吹き、仲間の元へ戻っていった。
その背中に、リスキー兄弟はじーんとくる。
「こっ、ここっ、コイツら、超クールっ」
「麦わらの奴、なんて幸せな船長だっ」
と、麦わら一味のカッコよさに浸る2人の背中で……
"ふわ…"
咲いていた耳が、消えた。
「……ふふ、
全てを聞いていたロビンは、ティオを見下ろし、指先でそっと金髪を梳いた。
(秘密を守ったのね)
……結局、全てを知ったのは、ティオとサンジとロビン、そして、ブルックだけとなった。