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30. 命を賭して
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それから、どれほどの時間が経ったのか。
「おーい! 生きてるかみんな!」
ローリング海賊団が目を覚まし始めた。
「くまの奴、あの攻撃で私らが全員死んだと思って帰ったのね! ザマァ見ろ!」
その声に、麦わら一味も目を覚まし始める。
「うほほほっ!」
「んなっ、おいおいウソだろルフィ! 何でお前そんなに元気なんだよ!」
「分かんね! けど見ろ! 体が軽いんだ!」
「ダメージが一周して、逆にハイになったんじゃないかしら」
「ンな馬鹿なことあるかァ?」
仲間たちの声で、サンジも目を覚ました。
「……俺は、生きてんのか……」
焦がすように照りつける、真昼の太陽。
「!」
朧げだった意識が鮮明になり、バッと飛び起きた。
辺りを見回し、マリモ頭を探す。
「いねぇ……っ」
代わりに見つけたのは、放り投げられた三本の刀。
「あの野郎、一体どこにっ」
キョロキョロと、少し遠くを見やる。
すると……
"ふわ……っ"
目の前を、白いワンピースが通り過ぎた。
「ティオちゃん……?」
見紛うことなき、長い金髪。
「はぁっ……はぁっ……」
ティオはおぼつかない足取りで、ただ一点を目指して走っていた。
……そこに居るのだ。
今にも消え入りそうな、彼が。
何があったのかは分からない。
ただ、目が覚めて、無意識に探った彼の気配は、この島の誰よりも希薄になっていた。
「!」
"ドタタッ"
足がもつれて、瓦礫の中に転ぶ。
「はぁっ…はぁっ……うっ………かはっ」
少しだけ、目の前に血が落ちた。
恐らく、くまから受けた一撃の影響で、臓器のどこかが傷ついているのだ。
……それでも。
「んっ……」
今はどれだけ血を吐こうとも、行かなければならない。
1秒でも早く、彼の元へ……
「……ティオちゃん」
「!」
ふわりと、突然体が浮いた。
苦くて甘いタバコの香りが、鼻をくすぐる。
「……さん、じ……くん…」
ティオは、サンジの腕に抱き上げられた。
「方向を教えてくれ」
ティオはサンジの両肩に掴まる。
「……あっち」
「了解だ」
サンジはティオの指す方へ走り出した。
少し走ると、林の中の開けた場所に出る。
「いた!」
昼空の下、見慣れた仁王立ちで立っていた、マリモ頭の剣士。
サンジはホッとした。
「……生きてんじゃねぇか。何だよおどかしやがって。オイ、あの七武海は「おり、る!」
訊きかけたところで、ティオがもぞもぞと動き出した。
「ちょっ、ティオちゃん!? 落ちるって!」
ティオは聞く耳を持たず、サンジの腕を振り切る。
ドタッ、と地面に落ちると、這うように立ち上がり、よろけながら走り出した。
そして、微動だにせず立っている彼の目の前に走り出る。
「ぞろっ」
血に塗れ、ボロボロになった服。
それを掴み、顔を見上げた。
ポタポタと、暖かい鮮血が頬に落ちてくる。
そこに、サンジが駆け寄って来た。
「なっ、何だこの血の量は! おいっ、お前生きてんのか! あの七武海はどうした! ここで何があったんだよ!」
すると、ゾロは震える唇を微かに開く。
「……なにも……な"かった…!」
その言葉に、ティオの目頭が熱くなる。
ゾロに触れた瞬間から、頭にはゾロの記憶が流れ込んでいた。
……これだけの傷を負いながら、何もなかっただなんて……
ティオは悔しそうな表情で、ボロボロと涙をこぼし始める。
ゾロを見上げ、何度も頷いた。
「んっ、なにもっ……なかった……っ」
悔しさをぶつける場所を探して、ゾロの服をぎゅっと握る。
「なかったからっ! あとっ、まかせてっ……もうっ、だいじょぶ、だからっ……」
「……」
ゾロは、微かに残った意識の片隅で、その言葉を聞いた。
……声の主は、何よりも信頼できる。
ゾロは全てを委ねて、意識を手放した。
"……ドッ"
倒れ込んできた体を、ティオはそっと受け止める。
「……ばかっ」
血に染まった頭を抱き締めて、耳元で小さく罵った。
そして、とめどなく涙を流し続けていた。