その頃……

「ゴムゴムのォ～、鐘ぇ！」

「来るぞ！」


"ヒュッ、ドゴォッ！"


麦わら一味 VS オーズ 戦は、さらに困難を極めていた。

モリアがオーズの影を操ることで、本来は伸びないはずの体も、自由自在に伸びてしまうようになったのだ。

「くそっ、オーズ単体でも厄介だってのに」

「モリアの入れ知恵と能力で、さらに厄介になっちまってるっ」

「もうすぐ朝日も差すっていうのにっ」

「あのすいませんっ！ お願いを１つ聞いてください！」

「きゃあっ、ガイコツあんたっ、一緒にいたの！？」

「私に考えがあります！」


……ブルックは、ウソップ、ナミ、ロビンに作戦を告げた。


「なっ、正気かブルック！ お前、フランキーがどうなったか見てたよな！？」

「えぇ、百も承知です」

「そのくらいなら、お安い御用よ」

「あたしは一切責任持たないからね！ ご希望だってんなら聞いたげる。でも、強力だから覚悟しなさい？」

「どうぞ、お願い致します！」

「新兵器・クワガタ！」

「黒雲（ダーククラウド）＝テンポ！」

「何よりも、恩を返せぬ無念以上に痛いものなどありません！ 骨身を惜しまず、頑張ります！」

「よし、行ってこい！」


"バシュッ"


ブルックはウソップに、オーズ目掛けて発射された。

ロビンが、ブルックに巻きつかせていた腕を思いっきり振るう。

「回転蔓（スラローム・バイン）！」

発射の勢いに回転が加わったブルックは、そのままナミの作った黒雲に突っ込んだ。


"バリバリバリッ"


「ヨホホホホッ！ 骨が透けるほど感電しましたァ～～っ、て私、元々骨だけでしたァァ！ さぁ、行きますよ！ 雷の矢の如く！ 雷骨剣・革命舞曲（ガボット）ボンナバン！」


"ドシュッ！"


雷を纏ったブルックは、回転しながらオーズの右肩を突き抜けた。


"ヒュッ、ボゴォッ"


そのまま、近場の壁に突き刺さる。

「……任務、完了…です……」

「うああっ、肩貫かれたァ！」

「すげぇっ、撃ち抜いた！ スキが出来たぞ！ 攻撃を繋げぇ！」

すかさず、ゾロが刀を構えて飛び出す。

「上出来だ、ホネ！ ……二刀流・弐斬り、登楼（とうろう）！」


"ズバンッ"


「どわぁっ！ …このっ……いや、まずは、ガイコツにとどめだ！」


"ヒュッ、ボゴォンッ！"


「うわああっブルック～～～っ！！」

「必殺・アトラス彗星！」


"ヒュッ、ボボボボンッ！"


ウソップの一撃が、オーズに直撃する。

「効くかァっ！ 次はお前だ鼻の奴！」

「げっ、狙われた！」

「ファイトよウソップ！」

「えっ！？ おいナミ！ どこ行くんだよ！」

「ゴムゴムのォ～、バズーカ！」

「ぎゃあああっ死んだあああっ！」

ウソップは慌ててその場に伏せる。


……が。


「……あり？」


いつまで経っても攻撃が来ない。

恐る恐る振り返ってみれば……

「ん、あれ、腕が伸びなくなった」

オーズが腕をブンブン振り回している。

「八十輪咲き（オチェンタフルール）・四本樹（クワトロ・マーノ）、ホールド」

「え！？」

ロビンがいつの間にか、モリアをがっちり捕えていた。

「ぐぬっ、何だこの手はっ！」

「ちょっと影の操作、やめて貰えるかしら」

ウソップが嬉々として叫んだ。

「うお～っいいぞロビン！ そのままへし折っちまえ～！」

「キシシッ、これで俺を封じたつもりか？ フン、つまらんマネしてくれるじゃねぇか。欠片蝙蝠（ブリック・バット）」

オーズの影の中から、モリアの影がにょろりと出てきた。

そして、無数のコウモリに変身する。

"パタタタタッ"

コウモリたちは、一斉にロビンに襲い掛かった。

"ガブッ"

「うっ……」

鋭い牙で噛みついてくるコウモリたち。

「二十輪咲き（ベインテフルール）っ、金盞花（カンデュラ）！」

「ロビンちゃん！」

サンジがすぐさま助けに向かう。

「何をしてんだロビンちゃんに！」


"ドガガガガガッ！"


お得意の足技で、コウモリたちを一掃する。

……が。


"ムク、ムクムク……"


飛び散った影は集合し、モリアの影に変わった。

「キシシッ、うぐっ、さぁ、遠隔能力勝負といこうか。なかなか効くぜ、オメェの締め」

「……影に惑わされてはいけない。本体さえ仕留めれば、影は必ず消滅するっ」

ロビンはモリア本体を見据え、腕に力を籠めた。

「四本樹（クワトロ・マーノ）、クラッチ！」


"ボキンッ"


「ぐぎゃああっ！？」


「やった！」

「すっごいロビン～！」

見事、モリアの関節を外したロビンの技。

……しかし。

「……ん？ おかしい……。おいロビン！ 後ろの影に気をつけろ！」

異変に気付いたゾロが、叫んだ。

モリアの影が消滅していなかったのだ。

「キシシシシ……惜しかったな」

「！？」

ロビンの背後に居たモリアの影に、モリア本人が宿った。

「残念。俺と影法師（ドッペルゲンガー）は、いつでも場所を入れ代われるのさ」

「しまった……」

「オメェがさっき関節を決めたのは、関節など元から存在しねぇ俺の影。勝負、アリだ」


"ベリッ"


モリアはロビンの影を、地面から剥がし始めた。

「う……っ」

「ロビンちゃん！」


"ジャキンッ"


振り切られたハサミ。

ロビンは影を切り取られ、気を失った。

「ﾁｯ……やられたっ！ ロビンまで！」

「うわあああっロビ～～ン！」

「……悪魔風脚（ディアブル・ジャンブ）」

怒りに燃えたサンジが飛び出す。

「んのクソ野郎が！ ロビンちゃんの影を返しやがれ！ 最上級挽き肉（エクストラ・アッシ）！」

「欠片蝙蝠（ブリック・バット）」


"ボシュンッ"


モリアが再び影と入れ代わってしまい、サンジの蹴りは、実体のない影を捉えるだけに終わった。

「くそっ」

ナミがオーズの方へ振り返る。

「入れ代わったってことは、モリアはまた、オーズのお腹の中ってこと！？」

「キシシシシッ」

オーズの腹部に在るコクピットには、憎たらしい笑みを浮かべた、モリアが。

「悪（わり）ィなオーズ。少し手を出しちまった。だが、こっから先はオメェの自由だ」

「コノヤローご主人様！ 俺のケンカだっつってんのに！ ……まぁいいや。あの女のとどめは俺が刺してやる！」

オーズの腕が、再び伸びるようになった。

「ゴムゴムのォ～～、バズーカ！」

「や、やべええええっ！」

「ロビ～～ンっ！」

「悪魔風脚（ディアブル・ジャンブ）……揚げ物盛合せ（フリット・アソルティ）！」


"ドゴォッ"


「なぬぅ！？」

「うおっ、逸れた！ さすがサンジ！」

「っ……今のうちだ！ ロビンちゃんを遠くへ運べ！」

「おう！ 任せろ！」

ウソップが自慢の逃げ足で、ロビンを遠くへ運んだ。

……これで、フランキー、ブルック、ロビンが脱落。

残るは５人。

「おーい！ サンジ～！ ゾロ～！」

「「？」」

どこからか聞こえた、自分たちを呼ぶ声。

２人が振り返れば、オーズの右肩から、チョッパーが呼んでいた。

「なっ、チョッパー！？ お前っ、何でンなとこに！」

「探してたんだ！ 500年前の、オーズの死因を！」

「「死因？」」

「大悪党が寿命を待たずに死んだのなら、外傷が原因の可能性が高い。そう思って探してみたら、やっぱりだ！ この右腕を狙え！ これは元々のオーズの腕じゃない！ ホグバックの手で天才的に復元されてるけど、つなぎ目に酷い凍傷の跡がある！ 断定は出来ないけど、500年前のコイツの死因は、おそらく凍死！ こんな怪物でも、自然の力には敵わず、氷の国を彷徨って死んだんだ！ 何故ならきっと、500年前もオーズは、裸だったから！」

「「そんなアホに死んでも負けたくねぇ！」」

「ゾンビは痛みを感じないけど、ダメージはちゃんと残る！ 今までの攻撃も、しっかり蓄積されてるよ！ この右腕一本使えなく出来れば、攻撃力は半減する！ とにかくこの一点に攻撃を「ごちゃごちゃうるせぇぞ！」


"ギュムッ"


オーズはチョッパーを握り潰した。

「おいっ！」

「チョッパー！」

「大丈夫だよ」

「んぁれ？ どこいった？」

チョッパーを見失い、キョロキョロするオーズ。

見ると、チョッパーは拳の中にいた。

「今の、自分の肩への攻撃だって、自分を痛めつけてるんだ！ ゾンビのお前には分からないだろうけどな！」

「んぉ、手の中に」

「へへん、俺はチビだからな。お前の拳の隙間は洞窟みたいなもんだ！」

チョッパーはランブルボールを口に入れた。

"カリッ"

「腕力強化（アーム・ポイント）！」

チョッパーがやろうとしていることを察し、サンジがオーズの腕を駆け上がる。

「手ェ貸すぞ、チョッパー！」

「あぁ！ 頼む！」

「空軍（アルメ・ド・レール）……」

「刻蹄……」

「桜（ロゼオ）シュート！」


"ドゴォッ"


「うぉおっ！？」

オーズの右肩に、大きな蹄の跡がついた。

「このヤロっ、何度も同じとこ攻撃しやがって！ 効かねぇモンは効かねぇぞ！」

「効いてくるさ、必ず！ 痛みは人体を守る重要な信号なのに、それが無いなんて、強みでも何でもない！」

「勝手に言ってろ！ ゴムゴムのォ～」

「「！」」

サンジとチョッパーの背を、うすら寒い気配が駆けていった。

嫌な予感がして、ゾロが叫ぶ。

「おい！ 何とか逃げろ！」


……しかし、時すでに遅く。


「銃乱打（ガトリング）！！」


"ドガガガガガッ！"


「「ぐわあああっ」」


「うわぁぁっ、サンジ！ チョッパー！」

２人は瓦礫の中へ真っ逆さま。

「くそっ、また２人やられちまったァァ！」

麦わら一味、残り、３人。