夢主の名前を決めて下さい。
3. ノックアップストリーム
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
空島行きが決定すると、詳しい行き方についてクリケットが説明を始めた。
「この辺りの海では、時として、真昼だってのに一部の海を夜のような暗闇が襲う現象が起きる」
ルフィとウソップが元気よく手を挙げた。
「あった! あったぞそれ!」
「夜が来て、そんで、でっかい怪物が現れたんだ!」
「それ、かいぶつ、ちがう」
「ティオ、あれの正体知ってるの?」
ティオはナミを見上げて頷く。
「あの巨人がどっから来るのかは、いろいろと言われがあるが、まぁ今は置いとけ。それより大事なのは、夜になるっつー怪奇現象の方だ」
クリケットは煙草の煙を吐き出した。
「それは、極度に積み上げられた雲の影だ」
ナミが首を傾げる。
「積乱雲のこと? 雲がかかった程度の闇じゃなかったわよ?」
「せきらんうん、ちがう。せきていうん」
「セキテイウン?」
「そうだ。空高く積み上げるもその中に気流を生まず、雨に変わることもない雲。そいつが上空に現れたとき、陽の光は遮断され、地上の昼は夜にも変わる。一説には、積帝雲は何千年何万年もの間変わることなく空を浮遊し続ける、雲の化石だという」
「そんな馬鹿なこと。積み上げても気流を生まない雲だなんて……」
「せきていうん、まだ、げんり、わかってない。でも、でーた、ある」
「ウソでしょ!?」
「ここ、ぐらんどらいん。じょうしき、すてるべき」
「それはそうだけど……」
「まぁ信じるも信じねぇもお前ら次第だ。とにかく、空島があるとしたらそこしかねぇ」
「そっか! 分かったぞ! その雲の上に行きゃいいんだな!?」
ルフィとウソップが浮かれて踊り始める。
「お~いみんな! 支度しろ~! 雲舵いっぱいだ!」
「雲舵いっぱ~い!」
「だから行き方が分かんないって何度言わすのよ!」
"ドカッ、バキッ!"
ナミの鉄拳が入る。
「ここからが本題だ。先に言っとくが、ここからは命をかけろ!」
「「もう、瀕死……」」
ルフィとウソップが、腫れ上がった顔で死にそうな声を出した。
「突き上げる海流ノックアップストリーム。この海流に乗れば、空へ行ける。理屈の問題だ。分かるか?」
「それって、船が吹き飛ばされちゃう海流なんでしょ?」
「そっか! 吹き飛びゃいいのか!」
「でもそれじゃ、そのまま落下して海に叩きつけられるんじゃない?」
「普通はそうなるがな、大事なのはタイミングだ」
"ペラ、ペラ……ドサッ"
切り株のテーブルの上に、分厚い本が1冊置かれた。
「むぎわらいちみ、うんが、いい」
「? 何だそりゃ」
「オメェそりゃ俺の気象記録じゃねぇか! なに勝手に持ち出してんだ!」
ティオはクリケットを無視して話を続ける。
「つきあげる、かいりゅう、の、うえ、せきていうん、くる、たいみんぐで、とぶ。でしょ? ここ、のっくあっぷすとりーむ、たはつちたい、だった、の、はつみみ」
「まぁ簡単に言やぁそんなもんだが、ノックアップストリームに乗ること自体、そう簡単なことじゃねぇ。あれは本来は災害で、避けなきゃならねぇ化け物海流だ」
「のっくあっぷすとりーむ、も、げんり、わかってない、はず。かんさつ、でーたなら、みたこと、ある」
「とりあえず定説はこうだ。海底の大空洞に低温の海水が流れ込む。すると地熱でその海水は蒸気に変わり、海底で大爆発を引き起こす。それは海を吹き飛ばし、空への海流をも生む巨大な爆発だ」
「いままで、みた、でーた、では、かいりゅう、じょうしょうじかん、へいきん、やく、1ぷん」
「あぁ。そんなもんだ」
「1分間も水が空へ上がるなんて、一体どんな規模の爆発よ!」
「爆発箇所は様々だが、頻度は月に5回ってとこだ」
「じゃ、じゃあ、その月に5回しかねぇ海流の真上に空島が来なきゃ……」
「あぁ。全員海に叩きつけられて、海の藻屑だ」
ティオは手をぽんと叩いた。
「だから、いきるか、しぬか、ぜろか、ひゃくの、ほうほう。なっとく」
ウソップに"ベシッ"と軽く頭をはたかれる。
「って言ってる場合か! ……よし、こりゃ諦めようぜルフィ! こいつはラッキーの中のラッキーの中のそのまたラッキーな奴しか行けねぇって話だ!」
「アハハハハッ! 大丈夫さ! 行こう!」
「あ、はは……やっぱし~?」
「だってよ、ティオがさっき、俺たちは運がいいって言ったじゃねぇか! だから大丈夫だ!」
「何なんだよそのティオ任せな根拠は! それにな? 見ろよゴーイングメリー号のあの痛々しい姿。あれじゃ化け物海流にだって立ち向かえねぇよ~」
クリケットはメリー号を一瞥する。
「確かにな。あの船じゃ、たとえ新品でも無理だ」
「何をぉ!?」
「だがその点は心配いらねぇ。しっかり補強して、マシラとショウジョウに進行の補助をさせる」
「「おう! 任せろオメェら!」」
マシラとショウジョウがクリケットの家の窓から手を振った。
それにルフィが手を振り返す。
「よろしくな~!」
((余計なマネを……))
ナミとウソップは同じことを考えていた。
こんな危険な旅、できれば行きたくないのが常人の意見だ。
「アンタねぇ、分かってんの?」
ナミがルフィの肩に手をかける。
「なにを?」
「そもそも、私たちがこの島に滞在していられる時間はせいぜいあと1日よ? それを過ぎたら、もうログポースは次の島の方角を指し始めるわ」
「だよな~! 間に合わねぇよ!」
ナミとウソップは、どうしても空島への渡航を諦めさせたいらしい。
何とか知恵を振り絞る。
「なぁおっさん! 予言者じゃあるめぇし分かりゃしねぇと思うが、次のノックアップストリームの上に偶然積帝雲が重なる日は約何日後? いや、何カ月後? それとも何年後?」
「明日の昼だな。行くならしっかり準備しろよ?」
「間に合うじゃねぇか!」
「なんだ? そんなに嫌ならやめちまえ」
そう言われると、さすがのウソップもピクっとこめかみをヒクつかせた。
「嘘だろ!」
「ぁあ?」
「大体おかしいぜ! 今日初めて会ってよ、親切すぎやしねぇか!?」
「おいウソップ!」
「ルフィは黙ってろ!」
疑うことを知らないルフィを押し留めて、ウソップが疑問点を次々に上げていった。
伝説級に行きにくい空島への渡航チャンスが明日であること、クリケットがあの嘘つきノーランドの子孫であること。
「うそ、ちがう」
「ぁあ!?」
「さっき、てぃお、むぎわらいちみ、うんがいい、いった。のっくあっぷすとりーむ、せきていうん、どっちも、げんり、わからない。でも、この、かんさつ、でーた、みるに、しゅつげんばしょ、しゅつげんじかん、けいさんほうほう、かくりつしてる。でーた、いってる。まちがいなく、あしたの、おひる」
「そ、そもそもお前だって敵なんだ! 信用できるか!」
「どうして? いま、てぃお、ここしか、むぎわらいちみの、ふねしか、いばしょ、ない。うそ、いったら、てぃお、しぬ」
「ぐっ……」
ウソップはさすがに言葉に詰まった。
すると、クリケットが遠くを見つめて煙草の煙を吐き出す。
「……マシラの縄張りで夜を確認した次の日にゃ、南の空に積帝雲が現れる。月に5回の周期から見て、ノックアップストリームの活動もおそらく明日だ。そいつもここから南の地点で起こる。100%とは言い切れんが、そいつらが明日重なる確率はでかい」
「……っ」
「俺ァ、オメェらみてぇな馬鹿に会えて嬉しいんだ」
「!」
「さぁ、一緒に飯を食おう。今日はうちでゆっくりしてけ、同志よ」
振り返りざまに、クリケットは口角を上げて見せた。
釣られるように、ルフィも笑う。
「にっしっしっ! 飯だぁ! 急げウソップ!」
「お前ら早く来い!」
「ティオもおいで!」
「(コクン)」
「チョッパー、ロビンちゃん呼んで来い!」
「おう!」
みんなが家の中へ入っていくと、ナミがウソップの隣へ来た。
「最善を尽くすしかなさそうね、空へ行くために。でも、最終的には運任せ」
「……ナミ、俺は惨めで腰抜けか?」
「おまけにマヌケね。気持ちは分かるわよ。……ちゃんと謝んなさい?」
「……っ」
ウソップは一度俯き、拳を握って走り出す。
「おやっさーん! ごめんよー!」
そのままの勢いで、クリケットに突っ込んでいった。
「な、何だテメェ! 鼻水つけんな!」
どうやら、仲直りできたようだ。