夢主の名前を決めて下さい。
26. 生きたガイコツ
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
……というわけで、正体不明の樽は甲板に引き上げられた。
いったい何の騒ぎだと、麦わら一味は全員、甲板に集合する。
「「「おったから、おったから、金銀財宝~ざっくざく~!」」」
ルフィ、ウソップ、チョッパーが肩を組んで歌い踊った。
しかし……
「残念、それはお酒と保存食よ」
ナミが幻想をぶち壊す。
「なんで見てねぇのに分かんだよ! もしかしたら宝かもしんねーだろーが!」
「なんでって、"海神御宝前"って書いてあるじゃない。それは流し樽って言って、誰かが航海の無事を祈って、海の守護神にお供え物をしたってことよ。"御宝前"は"神様へ"って意味なの」
聞いた途端、3人はしょげた。
「な~んだ~。じゃあ拾っても意味ねぇじゃねぇか」
ゾロが樽に手を掛ける。
「中身は酒と保存食なんだろ? せっかくだから飲もうぜ?」
ウソップが噛みつくように言った。
「馬鹿かお前! バチが当たるぞ!」
「べつに、なにも、おこらない。しんぱい、なら、かたちだけでも、おいのり、すれば、いい」
「んな、形だけってティオ、お前なぁ……」
「俺は神には祈らねぇ」
「んふふ~っ、波に揉まれたお酒は、格別においしいんですって!」
ナミが言うと、フランキーも乗り気になる。
「ほ~、そりゃ、味わうべきだ」
「中身を飲んだり食べたりした後は、また新しいお供えを入れて流すのが習わしよ」
「へぇ~そうなのか! よく知ってるな~ロビン」
ルフィが空に向かって叫んだ。
「お~い! 神様~! おやつ貰うぞ~! ニンニン!」
「ってそりゃ忍者だろ」
ベシっとウソップがツッコむ。
ゾロとサンジが呆れ顔を向けた。
「フン、何が"神様"だ。空島でその"神様"をぶっ飛ばしてきたのはどこのどいつだよ」
「ちげぇねぇ……」
「さぁて、お祈り終わり!」
ルフィは樽の蓋に手を掛けた。
"海神御宝前"と書かれた帆を取り外し、ロープを外す。
そしてパカっと蓋を開けると―――
"ドシュッ"
"ヒュ~~――――"
"パァンッ!"
樽から飛び出した何かが、サニー号の真上で赤い光となって炸裂した。
「なっ、何だ!?」
「赤い光……?」
「どういうこと……お酒と保存食じゃないなんて……」
「酒が飛んで、光って消えたぞ!」
ロビンが静かに言った。
「……発光弾ね」
「「「発光弾?」」」
ゾロが笑って茶化す。
「はっはっはっはっ、海の神とやらの呪いじゃねぇのか?」
しかし、ロビンの表情は暗いまま。
「ただのイタズラだといいのだけど……。もしかしたらこの船は、これから誰かに狙われるかもしれない」
ティオは樽に歩み寄り、側面に触れた。
「……つくったの、つぎはぎ、だらけの、りす2ひき。ぬいぐるみ、みたいな……」
「ぁあ? ぬいぐるみ?」
「リス?」
「つぎはぎぃ?」
「それがこの船を襲ってくるってのか?」
「たる、の、きおく、だから、つくりての、かんがえ、までは、わからない」
「ねぇティオ、この周辺に敵船はいる?」
ロビンに訊かれ、ティオは覇気を広げた。
「……いない。……ただ、いまの、はっこうだんの、おおきさ、だと、てぃおの、さくてき、はんいより、もっと、とおくまで、ひかり、とどく」
「だとしたら、かなり遠くからこの船を狙っている可能性も、なくはないのね?」
「(コクン)」
ウソップとチョッパーが大袈裟に反応した。
「じゃ、じゃあっ、今のは罠だったのか!? これからこの船は誰かに狙われるのか!? こうしちゃいられねぇぞチョッパー! 辺りを調べろぉぉ!」
「わっ、分かったぁ!」
2人は慌てて望遠鏡を取り出し、周囲を見回し始めた。
サンジが呆れ顔でため息をつく。
「馬鹿かテメェら。今ティオちゃんが敵船はいねぇっつったばっかだろ。ティオちゃんの索敵範囲は少なくとも島1つ分はある。それ以上の範囲を、そんな望遠鏡なんかで見れるわけねぇだろうが」
「え、あ、そっか」
そのとき、ナミが嫌な風を感じた。
(この気圧……雲の流れも速い……)
「みんな! 早く持ち場に! 南南東へ逃げるわよ! 大シケが来る! 5分後よ!」
全員、即座に自分の持ち場へと走り出す。
「いつもの晴れ空にしか見えねぇけど、アイツが言うんだから、また急に来るんだろな……ナミ! 進路は!」
「2時へ真っ直ぐ!」
甲板の荷物が固定され、帆の張りや向きが調整される。
"ポツ、ポツ……サァー……"
「くそっ、言った傍から雨かよ!」
ものの数秒で、青空は黒雲に包まれた。
"ゴロゴロ……ピシャアアッ!"
「うわっ、雷までっ」
強い風に押され、マストがギィギィ音を立てる。
「ダメだわ、完全に向かい風っ」
どう舵を取ったものかと悩むナミ。
それを見かねて、フランキーが声を張り上げた。
「おいナミ、この船の力はこんなもんか?」
「え? ……あ、そっか! みんな! 急いで帆を畳んで! パドル出すわよ!」
「おっ、アレか!」
「うほほ~い! アレかっこいいから好きだ! よ~し、やれ~ぃ!」
「メインマストはOKだナミさん!」
「フォアマストも畳んだぞ!」
「分かった! フランキー、お願い!」
「よぉし! ……ソルジャードックシステム、チャンネル0、コーラエンジン! パドルシップ・サニー号!」
サニー号の側面から飛び出たパドルが、海を掻き分け進み始める。
「ぃよっしゃああっ! 進め~!」
……しばらく進むと、雨は止み、風も収まっていった。
「はぁ……何とか越えたわ」
肩の力を抜くナミの横で、ゾロは周囲を見渡す。
「越えたはいいが、何なんだこの海は。まだ夜でもねぇってのに、霧が深すぎて不気味なほど暗れぇ」
「ま、まさか、例の海域に踏み込んだのかしら……まっ、まだ心の準備が」
ウソップが上機嫌に訊く。
「おっ、何だ? もう魚人島に着くのか~?」
……そう、ウソップだけは聞いていないのだ。
"
ルフィがニヤっと笑って言った。
「いーや、その前に、オバケの出る海だ」
「……へっ?」
フランキーが一緒になって脅す。
「そうさ。気を抜くなよ? ここは踏み込んだ全ての船が、原因不明のまま消息を絶ってきた怪奇の海だ」
「おっ、おばっ、おばばばばばば……」
「にっしっしっしっしっ、オバケ出るんだってよ、ここの海!」
「なっ、何だよ! みんな知った風だなオイ! 俺聞いてねぇぞそんな話!」
チョッパーはガクブル震えて、ゾロの足にしがみつく。
「ひぐっ、ぞ、ゾロ~ぉ」
その背後に……
「うー、らー、めー、しー、や~」
ティオが忍び寄った。
「ひぎゃあああああっ!!」
声の正体がティオとは気づかず、チョッパーはゾロの周りをぐるぐる逃げ惑う。
それを、ティオもぐるぐる追い回した。
「わー。わー。うらめしやー」
無表情かつ棒読みで、つかず離れずチョッパーを追い回す。
「ひわああっ、やめでぐれぇぇ!!」
"ポフ……"
「やめてやれ」
ゾロの手が頭に乗り、ティオは止まった。
「ひぐっ、ずぴっ、なっ、何だよっ、ティオだったのかぁぁぁっ、うおおおおっ」
チョッパーは泣きべそをかいて、その場に膝をついた。
「おもしろかった、から。ごめん、ね」
ティオは慰めるべく、チョッパーをぬいぐるみのように抱き上げた。
ルフィが笑う。
「はっはっはっはっ、ウソップもチョッパーも怖がりだな~。そんなんじゃ、生きたガイコツには会えねぇぞ~?」
「ひっ、いっ、生きたガイコツ!?」
シュボッとマッチが擦られ、サンジのタバコに火がつけられた。
「そりゃお前のイメージだろ、ルフィ。無駄にビビらせてやんなよ。……いいかウソップ、この海域では、毎年100隻以上の船が、謎の消失を遂げる。さらに、死者を乗せたゴーストシップが彷徨ってるってだけの話さ」
そう言うサンジの口調も、明らかにウソップを脅かそうとしている。
「いやだああああああっ!! 先に言えよンなことぉ!!」
「言ったらどうしたんだよ」
「じ、じゅ、準備だ! 悪霊退散グッズで身を固めねば!」
「ウソップ! 俺にも貸してくれぇ!!」
ウソップとチョッパーは大急ぎで男部屋に駆け込み、悪霊退散グッズなるものをしこたま身に着けて戻ってきた。
そのとき……
"ぴく……"
何者かの接近を感じたティオが、ルフィの服を引っ張った。
「るふぃ、なにか、くる」
「何っ!? 生きたガイコツか!?」
「……それは、しらない、けど」
"ギギギギィィィ……"
古い船の、きしむ音。
確かに何者かが近づいてきている。
一味は全員、音のする方角を見つめた。
「……ありゃあ……船か?」
「帆にドクロ……海賊船だな」
すると、突然―――
ヨ ホ ホ ホ ホ ~
ヨ ッ ホ 、ホ ッ ホ ~
ヨ ホ ホ ホ ホ ~
ヨ ッ ホ 、ホ ッ ホ ~</b>
細い歌声が聞こえてきた。
「ひっ、ひぐっ」
「でっ、出たああああああっ!!」
「ゴーストシップーっ!!」