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番外. Gの侵略
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―――その夜。
「ぅ……~~~っ………っ!」
女部屋で、ティオはバサっと跳ね起きた。
「はぁ……はぁ……」
両隣りでは、ナミとロビンが穏やかに眠っている。
「……」
ティオは震えている両腕をさすった。
身を縮めて深いため息をつく。
……昼間にあんなことがあったせいか、とんでもない悪夢を見てしまった。
あの黒い大群に再び追いかけられ、飛んで逃げようにも、何故か思うようにスピードが出ず、追いつかれてしまう夢……
「……っ」
思い出しただけで、もう一度身震いしてしまった。
(……まさか、いない……?)
暗がりの中、部屋を見渡す。
フランキーが船全体を点検したと言っていたが、どこかに生き残りが潜んでいたら…
虫を、覇気で探ることは難しい。
虫の居場所を全て探知するほど集中すると、目に見えないダニやノミまで探知してしまうため、ゴキ●リだけ探すというのは、ほぼ不可能なのだ。
(……どう、しよう……)
体は睡眠を求めているのに、これでは怖くて眠れない。
……とりあえず、室内では逃げ場はない。
ティオは毛布を羽織って、部屋を出ることにした。
"カチャ………パタン"
「……」
その微かな音で、ロビンは目を開けた。
本当はティオが跳ね起きたときに既に起きていたのだが、黙って様子を見ていたのだ。
月が照らす、サニー号の甲板。
少し冷たい風が、ティオの頬を撫でた。
解かれている長い髪も、ゆらゆらと風に揺れる。
「……ふう」
外に出ていれば、もし黒い残党が居たとしても、すぐに逃げられるだろう。
「……あ」
ティオはおもむろに、マストのてっぺんを見上げた。
……そこに1人、いる。
思い至って星空を見上げれば、午前4時前後の星の配置だ。
毎日、彼のトレーニングが始まる時間。
「……」
ティオは迷うことなく、マストのてっぺんへ登っていった。
"ガッシャン…ガッシャン……"
何百kgあるのかよく分からない巨大なバーベルを、ゾロは軽々と持ち上げ、スクワットしていた。
ティオは部屋の床部の出入り口から、頭だけピョコっと出す。
「……何だ」
ゾロは気付いていたらしく、トレーニングを続けながら訊いてきた。
ティオは部屋に上がり、月が照らすベンチへと歩み寄る。
「ここで、ねる」
言って、毛布にくるまったままベンチに寝転んだ。
ゾロはティオをチラリと見て、引き続きトレーニングを続ける。
"ガッシャン…ガッシャン……"
規則正しい音が、ティオを眠りへと誘った。
きっともう、悪夢は見ない。
ここに居る限り、ゾロと居る限り、もうあの黒いヤツらに襲われる心配はないから。
「………すぅ……すぅ……」
"……ガッシャン…ガッシャン"
「……」
ゾロは黙って、ひたすらトレーニングを続けた。
(…26,821…26,822…26,823…。……)
ふと、動きを止める。
「……。……はぁ」
"ガタンッ……"
担いでいたバーベルをゆっくり降ろした。
(……今はダメだな。気が散る)
心中で呟いて、タオルを首に掛けながらティオに歩み寄る。
「……すぅ……すぅ……」
穏やかな眠りが途切れないよう、音を立てずに、小さな頭の傍へ腰を降ろした。
タオルで汗を拭い、窓から夜の海を眺める。
「……」
昼の騒動が嘘だったかのように、海は穏やかで、月は明るく光を降らせていた。
「ん……」
突然、ティオがもぞもぞ動き出した。
「……ぅ……にゅ……」
目を閉じたまま、手探りで何か探っている。
どうやら起きたわけではなく、寝ぼけているらしい。
小さな手は、ゾロの膝をペタペタ触った。
そして、確認できたその場所に、ポスっと頭を預ける。
「んむ…………すぅ……すぅ……」
ぴたりと動かなくなったティオは、そのまま再び、規則正しい寝息を立て始めた。
「……」
一連の動作を見下ろしていたゾロの表情が、緩みかける。
ゾロは慌てて唇を噛んで視線を逸らした。
「……チッ」
誰もいないからと、油断してしまった。
いつもは決して表情に出さないが、こうして懐かれることは、嫌いではない。
眠っていても探して近寄ってくるだなんて、体の奥底がむず痒くなる。
仲間があれだけいるのに、選ばれるのか。
寝るのに高さがちょうどいいだの、フィットするだの、色々と言われたが、何にせよ、選ばれるたびにちょっとした優越感を感じた。
「……」
小さな頭に、そっと手を置く。
四方八方に投げ出された髪の合間に指を滑らせれば、ツヤサラの心地よい感触が得られた。
「ぅ……ん……」
"パシッ"
「!」
急に手を掴まれた。
起こしてしまったかと、柄にもなく焦りを感じて固まる。
しかし―――
「ん~……」
ティオは、掴んだ手を抱き枕のように抱き込んで、丸まった。
寝息は相変わらず規則正しい。
「……。……はぁ」
安堵のため息をつく。
同時に、再び体の奥底がむず痒くなった。
「……ククッ」
ひとり、自嘲気味に笑って、窓の外へと目を向ける。
東の地平線が白い。
もうすぐ、新たな一日の始まりだ。
※ 次ページ おまけイラスト
このお話の、後日譚の4コマ漫画です。
夢絵が苦手な方はここでUターンするか、
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