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25. バウンティ・ハンター
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「しっかし
『おい、カンパチーノ!』
「あ? 何だ、今の声」
声がしたのは、目の前の扉の奥。
"ガチャ……"
扉を開けると、室内は暑く、水蒸気が立ち込めていた。
一面真っ白で、何も分からない。
「いつまで待たせる! 誕生会はどうした!? 旗はまだか!?」
(何だ? 誰かいんのか? ……つーか、暑っちーなこの部屋……。……!)
適当に歩いていたら、目の前に気配を感じ、ゾロは刀に手を掛けた。
ザワリと、緊張感が体を駆け抜ける。
「……?」
その緊張感を感じ取り、ティオが目を覚ました。
ゾロの服の中で、寝ぼけ眼のまま覇気を使って、すぐ傍に人の気配を感知する。
「……誰だテメェ」
「んぁ? 何だ、カンパチーノじゃないのか」
「あ? カンパチ? 刺身か?」
ティオはこっそり会話を聞いた。
カンパチーノ。
アッチーノファミリーの長男の名だ。
話の内容から察するに、ゾロの目の前にいるのは、ドン・アッチーノ。
いきなりボスと出くわしてしまったか。
運がいいのか悪いのか……
「いい
「お、気が利くじゃねぇか。ちょうど酒が欲しいと思ってたとこだ。腹も減ったしな」
音から察するに、ゾロはジョッキを貰って、ドンに酒を注がれている。
「まぁ、適当にやってくれ」
「おう、悪りぃな」
「まったくよぉ、ファミリーの奴らが誕生会を開いてくれたのはいいんだが、会の途中でみ~んな居なくなっちまって、帰ってこねぇのよ」
「何だ、奇遇だな。俺の仲間もいつの間にか迷子になっちまってよぉ。いつも俺が探してやってんだ」
「アンタもそうかい」
「ったく、アイツら今頃、どこで何やってんだか」
「ホント、どこで油売ってんのかねぇ」
「「はっはっはっはっ!」」
……2人の笑い声に、ティオは人知れずため息をついた。
敵と打ち解けて酒盛りしてどうする……
だが、チャンスだ。
ゾロがドンと飲んでいる隙に、海賊旗を取り返そう。
覇気で感じられる限り、ルフィとチョッパーは一味の元へ戻っていない。
まだ、旗が奪われたことは知らないはずだ。
早く旗を取り返し、ルフィのアホ
どうやら、一味は各自、ファミリーのメンバーと交戦中らしい。
自分しか、旗を取り戻せる者はいない。
"……こそっ"
ティオは、ドンにはもちろん、ゾロにすら気づかれないよう、ゾロの服から抜け出した。
傍にあったテーブルの脚の陰に隠れ、水蒸気に紛れて鼠に姿を変え、部屋を見渡す。
(……ない)
水蒸気の向こうには、100枚を超えるであろう海賊旗が壁一面に飾られていた。
その中に、麦わら帽子を被ったドクロは、いない……
「はっはっはっはっは! 帰って来ない奴らは無視無視! 楽しく飲もうぜ!」
「ははっ、まったくだ。……あ? 何か壁に貼ってあるな……」
ドンの機嫌が良くなって、室温が下がったからか、水蒸気が収まり視界が開ける。
ゾロの目にも、部屋の壁一面に飾られた海賊旗が見えてきた。
「ん、あぁ……どうだ? 俺の自慢のコレクション」
「コレクション?」
「ハントした海賊共の旗なのさ。素晴らしいだろ?」
「……フン、胸糞
ゾロが喧嘩を売るような笑みで言うと、ドンも不敵な笑みを浮かべる。
「まぁそう言うなって」
"ピ~ヒョロロロロロ……"
「おっ、来た来た」
部屋の窓から、新たな旗をくわえた鳥が舞い込んでくる。
旗はドンの手元に落とされた。
「こいつを見れば、アンタも分かってくれるだろ?」
「あ? ……。……なっ」
「トータルバウンティ7億越え、麦わら一味の海賊旗だ。……どうだい? 1億2000万の賞金首、ロロノア・ゾロ」
「……テメェだったのか、ウチの旗ァ奪いやがったのは」
バキっと、ゾロは持っていたジョッキを床に叩きつけて割る。
「返して貰うぜ」
ゾロは刀を一本抜き、ドンに向けた。
「ククッ、勇ましいな。……だが、残念ながら旗だけじゃない。お前の仲間たちも今頃、私の子供たちの手に堕ちている」
「フン、アイツらを見くびらねぇ方がいい。……けどまぁ、確かに残念ではあるな。せっかく奢ってくれた相手を、斬ることになるんだからな」
「私を斬る? さぁて、出来るかな」
"シュオオオォォォォ……"
「……あ?」
ドンの周辺だけ、気温が一気に高まり、発生した低気圧で空気が渦巻いていく。
「……フン、悪魔の実の能力者か」
さっき説明しただろう、と、ティオはひとりため息をついた。
「私が触れるものは全て溶けてしまう。その腰に差してる立派な刀だって、すぐにこの通りさ」
ドンが持っていたワイングラスが、僅か2秒で赤みを帯び、ぐにゃりと溶ける。
「これが私の、アツアツの実の能力だ」
ゾロはニヤリと口角を上げた。
「フン、要するに触られなきゃいいんだろ」
和道一文字を振り上げる。
「一刀流、三十六
"シュウィィン……ドゴッ!"
放たれた斬撃は、ドンの背後の壁を切り裂いて、空へと昇っていった。
しかし……
「なにっ!?」
肝心のドンは、微動だにしていない。
"ブワァ……ッ"
「ぐ……っ」
ドンが腕を一振りすると、熱風がゾロを襲った。
「……貴様ァ……私の大事なコレクションに傷をつけるつもりか!」
(何だ……今のは……)
怒りのせいか、部屋の温度が急激に上がっていく。
このまま上がり続けたら、ゾロとティオが無事で済まないどころか、建物も溶けてなくなってしまうだろう。
"タタタタタッ、バンッ"
突然、部屋の扉が開いた。
三男・ホッケラと、長女・アルベル、その婿養子・サルコーが駆け込んでくる。
「「パーパ!」」
「パパさん!」
ドンは煮えたぎった視線で、自分の子供たちを睨みつけた。
「マズイわ……っ」
「サウナみたいッケ~……」
「ハニ~、どうする……?」
「これ以上、パーパの機嫌を悪くしちゃダメよ。笑顔作って」
「あ、あぁ……」
3人は必死に笑顔を作り、ドンの説得を始めた。
「ぱ、パーパ、どうしたの?」
「お前らァァ!」
「「「ひぃぃっ」」」
「誕生日プレゼントは、ちゃんと揃えてるはずじゃなかったのか!」
「も、もちろん揃えて……ぇえ!?」
「ロロノア・ゾロ!?」
「どうしてここに!?」
「この野郎、どんなカラクリか知らねぇが、絶対ぇ叩っ斬ってやる」
「「「無視すんな!」」」
「二刀流……」
「はっ、えーと確か……」
ホッケラが、キョロキョロと辺りを見回し、壁に取りつけられたスイッチへと走る。
"ポチッ、ガコッ"
「高な…みぃぃいいっ!?」
突然、ゾロの足元の床が開き、ゾロは技を放てないまま落ちた。
"ガコン…"
落とし穴が閉じられる。
(……はぁ)
ティオは盛大なため息をついた。
(ほんと、へんなとこで、まぬけ)
だが、特に心配はしていない。
地下には、ナミ、ウソップ、サンジ、フランキーが捕まっているらしく、ゾロが落とされた穴は、おそらくその場所に繋がっている。
仲間と合流出来れば、問題はないだろう。
それに、ロビンが次女のリルと一緒にいる。
捕まっていない辺り、ロビンはリルに上手く取り入って、一緒に行動しているのだろう。
さすがは、裏組織を渡り歩いてきたロビン。
きっと、上手いこと仲間を逃がしてくれる。
自分は旗を取り返すことに専念すべきだ。
「ごめんなさいっ、パーパ! ちょっとした手違いで、1人だけ抜けがあったの!」
「パパさんっ、ご安心を! あとのメンバーは完璧に捕まえられますから!」
「ほっ、ほら! パーパのコレクションも1つ増えたことだし、機嫌直してよ!」
「そ、それに! お兄さんたちが残りのメンバーを狩ってきますから!」
「ねっ? パーパ!」
「……」
ドンの怒りは、まったく収まる様子がない。
(ダメだわ、私たちだけじゃなだめられない……助けてお兄様~っ)
……そんなアルベルの願いが届いたのか。
"ガチャッ"
「「パーパ!」」
双子の兄弟である、長男・カンパチーノと、次男・ブリンドが駆け込んできた。
「お兄様たち!」
リル以外、兄弟全員揃っての説得が始まる。
ティオはそれを聞き流しながら、どうやって旗を取り返そうか考えていた。
とにかく、ファミリーが全員この部屋からいなくならないと、何も出来ない。
……考えている間にも、覇気が情報を拾う。
早くも、ロビンが仲間救出のために動き出したようだ。
あと1分もあれば、捕えられた一味は出てくるだろう。
ルフィとチョッパーは、フェニックス海賊団と一緒にこの建物に向かっている。
到着まであと5分といったところか……
……ルフィにバレる前に、急いで旗を回収しなければ。