夢主の名前を決めて下さい。
25. バウンティ・ハンター
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
完全に軍艦が見えなくなると、サニー号はパドルを止め、帆を降ろし、風を受けてゆったりと進み始めた。
もう危険は無いと分かると、麦わら一味は揃って、フェニックス海賊団の船へ乗り込む。
「お~い、チョッパー! ティオ~!」
ルフィが大声で叫んだ。
もちろん、動物の聴覚を持つチョッパーとティオは、その声を聞き逃さない。
「あれ、ルフィの声だ」
「ちょっと、おこってる、みたい。てぃお、たち、さらわれた、おもった、かも」
「あ、そっか、何も言わずに来ちまったもんな」
「(コクン)」
2人はとりあえず、ルフィに事情を説明しに戻ることにした。
木箱の隙間を抜けて、暗い廊下を甲板へと進む。
「ルフィ!」
「んぉ? チョッパー! ティオ! 無事だったか~、よかったよかった! 早く帰ろうぜ?」
「あ、それなんだけど……」
「ん?」
チョッパーはティオと目を見合わせてから、強い眼差しで言った。
「ルフィ、俺、もう少しこの船に居たい。重傷の患者がいるんだ。一応、処置は済んだけど、まだ目を離せない。頼む! 目を覚ますまで、診させてほしいんだ!」
ルフィは2回ほどまばたきを繰り返す。
そして、ニカっと満面の笑みを浮かべた。
「そっか、分かった。んじゃあ待ってる」
チョッパーは表情を輝かせる。
「ありがとう! ルフィ!」
そして、パズールの元へ駆け戻って行った。
そのあとをルフィが歩いて追いかける。
……ルフィが一緒なら、と、ティオは仲間たちの方へ歩き始めた。
一瞬強く吹いた吹雪に、ぶるっと身を震わせる。
「……へぷしゅっ」
小さくくしゃみをすると、ナミとロビンが呆れ顔で笑った。
「そんな格好してると、またいつもみたいに風邪ひくわよ?」
「ふふっ、戻りましょうか」
「(コクン)」
ティオは仲間たちと一緒に、サニー号へ戻った。
着替えに女部屋へ行こうとすると、サンジが声を掛けてくる。
「ティオちゃん、お腹空いてるだろ? 着替えたらキッチンにおいで」
"きゅぅ、くるるる……"
ティオは鳴ったお腹をさすった。
「(コクン)」
女部屋に入ると、どこで調達したのか、冬用の暖かい服を渡された。
それを着込んで、ナミとロビンと一緒にダイニングの方へ向かう。
"ガチャ"
扉を開けると、だしの香りが鼻を擽った。
ルフィとチョッパー以外のクルーが全員集まり、席についている。
それぞれの前には、コーヒーやらお茶やらコーラやら、それぞれの好みの飲み物が出されていた。
「寒かっただろ? さぁ、召し上がれ」
テーブルに用意された、数品のサメ料理と、しょうがスープ。
ティオは席に座って、手を合わせた。
「いただき、ます」
「どうぞ」
手始めにしょうがスープを一口飲み込むと、じんわり体が温まる。
「……ほぅ……」
サンジは、ほっこりしたティオの表情に微笑みつつ、途中だった夕食の片付を再開した。
「そういや、ティオちゃんはあの海賊団のこと、知ってるのかい?」
「(コクン) …ふぇにっくす、かいぞくだん。せんちょう、ふしちょう、の、ぱずーる。けんしょうきん、1おく、べりー」
ウソップがへぇ~と感心した。
「船長が1億ってことは、なかなかの海賊団だったんだな。……ん? けどよ、
「ぱずーる、おおけが、で、ねこんで、た。ちょっぱー、いなかったら、しんでた」
「あぁ、それがチョッパーが看病したがってた奴か」
「(コクン)」
ゾロが眠そうな顔で訊く。
「海戦でやられでもしたのか?」
「たぶん、そう。……ふくせんちょう、の、びがろ、いなかった……もしかしたら、たたかって、それで……」
最後まで言わないティオの心情を察して、ナミが訊いた。
「まぁ、船の状態から察しはつくけど、アイツらは結局、この船を奪いたかったの?」
ティオはサメの天ぷらを口に入れ、咀嚼しながら天井を見上げる。
やがてコクンと飲み込むと、首をかしげた。
「どう、だろ。くるー、たち、みんな、かんじょう、ばらばら、だった」
フランキーが付け加える。
「そういや、3人ぐれぇ血の気の多い奴らがいて、そいつらはこの船乗っ取ろうとしてたみてぇだが、あのスタンセンって野郎は違ったなァ」
「……」
「……」
各々フェニックス海賊団の狙いを予想する。
……しかし、考えるだけ無駄だ。
やることは決まっている。
サンジが皿を拭きながら言った。
「とにかく、そのパズールとかいう船長が目を覚まさねぇことには、チョッパーもルフィも帰って来ねぇんだろ? 待つしかねぇな」
「だな」
「そうね」
ティオはしょうがスープの最後のひと口を飲み干した。
……そのとき。
ぴく。
頬がわずかにひくついた。
「なみちゃん」
「ん、なに?」
「いま、ふね、どこ、すすめてる?」
「とりあえず、風に任せて漂流中よ? ルフィたちが戻って来ないと進路決められないし。……あぁ、風ならしばらく変わらないから、変に流されることはないわよ?」
「……」
カラになった器を置き、黙り込むティオ。
ナミとウソップは何か嫌な予感がした。
「お、お~いティオ~? どした~……?」
「な、なんで黙ってるの……?」
青ざめている2人を、青い瞳が捉え、爆弾を投下した。
「まわり、うじゃうじゃ、いる、よ?」
「「いやああああっ!!」」
まだ見ぬ"何か"に、ナミとウソップはとりあえず叫んだ。
一味はぞろぞろと、サニー号の甲板へ出る。
もう夜が明けていた。
「ぁん? おいナミ、周り氷だらけだぞ」
「えっ、うそっ、氷山!? そんな海域があるなんてココロさんは一言も……」
「つ、つーかティオ、何がうじゃうじゃいるんだっ? 何もいねぇぞっ?」
ウソップはパチンコを構えたまま、ティオの背後に隠れ、周囲を伺った。
ティオがうじゃうじゃの居場所を応えようとすると、フランキーとロビンが口を挟む。
「ンなことより前見ろや」
「早く舵を切らないと、ぶつかるわよ?」
「「へ?」」
言われて見れば、巨大な氷塊が目の前に……
「ぎゃああああっ、ぶつかるーっ!」
「サンジ君! 主舵!」
「あいよっ!」
船首に走ったサンジが、舵輪を回す。
サニー号はスレスレで氷塊をよけた。
「はぁ……危なかった……。サンジ君、とにかく氷山をよけながら進んで?」
「はぁ~いナミすゎん!」
……それから、右へ行ったり左へ行ったり。
氷山にぶつからないよう、サンジは舵を切り続けた。
その回数が増すごとに、ナミの中で不安が大きく膨れ上がっていく。
(何かしら……氷山のせいで、勝手に進路を決められているような……)
"ゴゴッ……ドゴォッ!"
「「「!?」」」
背後の音に、全員が振り向いた。
どういうわけか、先ほど間を抜けてきた2つの氷山が、互いにぶつかっている。
「なっ、なに!?」
「ふ~ぅ、危ねぇ。あとちょっと通るのが遅かったら挟まれて潰されてたな」
「ちょっ、サンジ君! 前!」
「え? ……んなにっ!?」
サンジは慌てて舵を切った。
急に氷山が目の前に流れてきたのだ。
それを目の当たりにし、ナミの不安が確信に変わる。
「やっぱりおかしいわ。ここの氷山、まるで意思を持って動いてるみたい……」
ウソップが、そんな馬鹿なと笑う。
「おいおい、氷が意思なんか持ってるわけねぇだろ? 生き物じゃねぇんだから」
簡単じゃねぇか、とゾロが刀の鍔を弾いた。
「意思持ってようが持ってなかろうが、邪魔なら斬っちまえばいいんだろ?」
言って、目の前の氷山に向かって飛び出して行く。
"チャキ……スパンッ"
氷山に真っ直ぐ入った一太刀。
ゾロは刀を納め、鞘の先で氷山を叩いた。
"コツン―――
バキャァッ!!"
巨大な氷塊が、真っ二つに割れる。
「何だ、ただの氷じゃねぇか」
「ほ、ホントだ……中に何か入ってるとかはねぇな……」
サニー号は、ゾロが斬り開いてくれた道をゆっくり進んだ。
並んで歩くように、ゾロは氷山の上を行く。
「こおり、は、いし、もってない」
「ん、ティオ?」
「こおり、じゃ、ない。さっき、いった、うじゃうじゃ、こおり、うごかしてる」
ティオは欄干に寄り、海の中を覗き込んだ。
「なっ、何かいるのか!?」
ウソップも倣って覗き込む。
すると……
"シュババババッ"
「ぅおっ、何かいたぁぁ! 何だ今の大群!」
海面の少し下。
何か生き物らしき影が、群れを成して高速で通り過ぎて行くのが見えた。
「何なんだよ今のぉぉっ!!」
「わから、ない。にんげん、じゃ、ない、こと、たしか」
ナミが顎に手を当てた。
「……この氷といい昨日の海軍といい……何者かが、あたしたちを誘導してるみたい……」
「かいぐん?」
「ん、あぁ、ティオは向こうの船にいたのよね。昨日の夜、30隻を超える海軍の大艦隊に囲まれたのよ」
「そんなの、ありえ、ない」
「え?」
「しま、ひとつ、けす、ばすたーこーる、でさえ、ぐんかん、10せき。かいぞくせん、たった、1せきに、30せき、いじょうの、しゅつどう、おかしい」
「そういえばそうよね……。じゃあ、アレは全部偽物だったってこと!?」
「(コクン)」
「……ってことは、間違いないわ。誰かがあたしたちをどこかへ誘導してる」
周囲では、相変わらず氷山が動いていた。
船を傷つけないよう、サンジが慎重に舵を切っていく。
「……」
ティオはしばし考えた。
この海域で、誰が何を考え、麦わら一味をこんな場所へ誘導するのか……
(こおり……ゆうどう……かいぞく……)
やがて、ティオの半目が、わずかに見開かれる。
「……あっちーの、ふぁみりー」
呟かれた言葉に、ロビンが反応した。
「アッチーノファミリー?」
「(コクン) …このあたり、で、ゆうめいな、しょうきん、かせぎ。6にん、かぞく、だったけど、さいきん、ちょうじょ、けっこん、して、1り、ふえた」
「つまり、今は7人家族なのね?」
「(コクン)」
と、そこで、ティオは唐突に後ろを向いた。
フェニックス海賊団の船の方だ。
「どうしたの?」
「せんちょう、ぱずーる、め、さめた。るふぃ、ちょっぱー、もどってくる」
「そう。これで進路が決められるわね」
全力で逃げるなり、誘導しようとしている奴らをぶっ飛ばすなり、船長がいなければ何も決まらない。
……と、思った矢先―――
"ドゴォッ!"
突然、サニー号の周囲で水柱が上がった。
"バシッ"
サニー号とフェニックス海賊団の船を繋いでいたロープに、水柱が直撃し、切れる。
水柱の影響で波が高くなり、両者は引き離された。
「くそっ、ルフィ! チョッパー!」
「アイツらは放っといても大丈夫だから! 今は舵に集中して! 主舵よ!」
「あ~いっナミすゎん!」
目はハートにしながらも、サンジはナミの指示通り、的確に舵輪を回していく。
"ドゴォッ、ドゴォッ"
至る所で水柱が上がり、氷塊もサニー号を取り囲む。
「おっ、おい! 目の前行き止まりだぞ!」
「分かってるわよ! どうしようもないの!」
サニー号は氷塊に囲まれて、止まった。