夢主の名前を決めて下さい。
24. 水の都、出港
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
はしゃぎ回るルフィとチョッパーを横目に見つつ、ゾロがナミに目を向けると……
「……あ、が……っ」
目を塞がれ、豊満な胸に頭を押さえつけられているティオがいた。
今にも魂が出そうな勢いで、口がパクパクしている。
「……おい、ナミ」
「ん、なに?」
「何やってんだお前、死んじまうぞ」
「へ? 何が……いやああぁぁっ! ごめん! ティオ!」
ナミは無意識に力を籠めていた腕を緩めた。
「うぅ……」
ティオは青ざめて、その場にへたり込む。
船に上がってきたフランキーが、ふざけ半分に言った。
「おいおい、大丈夫かこの一味は」
ルフィが笑って答える。
「おう! ナミは怒ると怖ぇからな、気ィつけろよ!」
"ゴチィンッ!"
「いつも怒らせてんのはどこの誰よ!」
「ず、ずびばぜん……」
「まぁいいわ。……そろそろ出港でしょ。指示出しなさい、船長」
「ん、あぁ……」
ルフィは麦わら帽子を目深にかぶって立ち上がった。
「よ~しお前ら! 出港だ!」
「あぁ」
「おう……」
貼り付けたような笑みを浮かべたルフィの一声で、一味はそれぞれ動き出した。
碇を上げ、帆を降ろし、ログポースの指す方向へと舵を切る。
「……」
「……」
やけに静かな出港だった。
いつもは冒険に疼く男たちの叫び声が止まないのだが……
"タン、タン、タン、タン……"
船の中央、マストの周りを囲むようにつけられたベンチで、ルフィが貧乏ゆすりを繰り返す。
それを見かねて、ナミとチョッパーが目を見合わせて訊いた。
「ちょっとルフィ」
「うぅ……っ、ルフィ~」
ハッキリとは言わないが、言わんとしていることは伝わる。
「……」
答えないルフィ。
フランキーもダメ押しに訊いてみた。
「本当にいいのか? 麦わら。もう1人待たなくて」
ルフィは懸命に笑顔を貼りつけ、努めて明るい声で言った。
「待ってたさァ! 俺はサンジからあの話を聞いたあと、ガレーラのあの部屋が留守にならねぇように!」
―――それは数日前。
「なっ、ウソップが戻ってくる!?」
食材の買い出しから帰ったサンジの言葉に、ルフィ、チョッパー、ナミが目を輝かせた。
「あぁ。海岸で1人、戻ってくるための予行演習してやがった」
「な~んだ~そうなのか~! んじゃあ今すぐ迎えに行こう!」
「おぉ~!」
「素直じゃないわねぇホント」
「あははっ、ウソップが帰ってくるぞ~!」
ルフィとチョッパーは、喜び勇んで仮設ルームの出入り口へ駆け出した。
……その瞬間、いつも通りゾロの膝間で惰眠を貪っていたティオは、とめどない怒りが膨れ上がるのを感じた。
「待て、お前ら」
部屋中に響き渡った、鶴の一声。
ティオは薄く片目を開き、横目にゾロの顔を見上げた。
眉間に深いしわが寄っている。
「ん、ゾロ?」
ルフィはドアノブに掛けていた手を引っ込めた。
ゾロは片腕でティオを抱き上げ、隣へ降ろすと、刀を手に立ち上がる。
「誰一人、こっちから迎えに行くことは、俺が許さん」
「えっ、何でだよ!」
「間違ってもお前が
「!」
「俺はアイツから頭下げて来るまで、認めねぇぞ」
途端、チョッパーとナミがむっとした。
「ひでぇぞゾローっ!」
「ちょっと、何でアンタがそんなこと」
「黙れ!」
「「……っ」」
ゾロは刀を握りしめ、ルフィに歩み寄っていく。
「ルフィとウソップの初めの口論に、どんな思いがあろうが、どっちが正しかろうが、男が決闘を決意した以上、その勝敗は戦いに委ねられた。そしてアイツは負けて、勝手に出てったんだ……。いいかお前ら! こんな馬鹿でも肩書は船長だ。いざってときにコイツを立てられねぇようなら、一味にはいねぇ方がいい。……船長が威厳を失った一味は、必ず崩壊する」
「……」
「……」
ゾロはルフィの頬を引っ張った。
「いいか! 普段おちゃらけてんのは勝手だがな、仮にもこの俺の上に立つ男がンなだらしねぇ真似しやがったら、今度は俺がこの一味を抜けてやるぞ!」
「なっ、それじゃ話が纏まらないじゃない」
「あのアホが帰ってくる気になってんのは結構なことじゃねぇか。……だが、今回の一件に何のケジメもつけず、うやむやにしようってんなら、それは俺が絶対に許さん。その時はウソップは、この島に置いて行く」
「まぁ待ってよゾロ、アイツも悪いとこあったけど、それは帰って来てから言いたいだけ言えばいいじゃない」
"チャキッ……"
「!」
ゾロが刀の鍔を弾いたため、ナミは怯んだ。
"ヒュォ―――ザクッ!"
刀は床につき立てられる。
「一味を抜けるってのは! そんなに簡単なことなのか!」
ナミは俯き、拳を握った。
「い、いいえ。……でも「ナミさん」
優しくも鋭いサンジの声。
ナミが振り向くと、サンジはタバコの煙を吹いてから、諭すように言った。
「残念ながら今回ばかりは、そいつの言うことが正しい」
ゾロは突き立てていた刀を床から抜く。
「こんなことを気まぐれでやるような男を、俺たちはこの先、信頼できるはずもねぇ。……簡単な話だ。アイツの第一声が深い謝罪であれば良し、それ以外なら、もうアイツに、帰る場所はない」
"チャキン……"
刀が鞘に収まる。
ゾロはルフィの目を真っ直ぐに見据えた。
「俺たちがやってんのは、ガキの海賊ごっこじゃねぇんだぞ」
「……」
ルフィはしばし考えたのち、目を閉じた。
「……そうだな」
ドアノブから手を離し、その場に座る。
「一度は完全に別れたんだもんな……船の完成と出港まで、まだ何日もある……黙ってアイツを待とう」
……船長の決定に、逆らう者はいなかった。
チョッパーとナミも諦めて、ダイニングの椅子に座る。
ゾロは元居た場所へ戻り、再び座った。
「ふぁ~……」
半目で話を聞いていたティオは、戻ってきたゾロの膝間に滑り込む。
そのまま、夕飯まで眠っていた。