24. 水の都、出港

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エニエス・ロビーの一件から、約1週間。

ウォーターセブンの暮らしにもだいぶ慣れてきた、朝。

「ログが溜まった! 次の島を指し始めたわ」

ナミがログポースをはめた腕を突き出した。

ルフィはワクワクを押さえ切れない様子。

「んじゃ! あとは乗る船だけだな!? 楽しみだァ~っ!」

「そうね、驚かせたいから完成まで見に来るなって言われてるし!」

傍で酒を仰いでいたココロが言った。

「オメェたち、そのログを辿ると、どこへ行くか知ってるかい?」

「いいえ? ……そういえば、針が心なしか、下を向いてるような……」

「んががががっ、そりゃそうら。次の島は、海底の楽園、魚人島らよ」

すかさずサンジの目がハートになる。

「えええええええっ!? ぎょぎょぎょ、魚人島ォ!? ついに~っ!?」

ナミは深いため息をついた。

「魚人島か……複雑……」

ルフィが手をポンと叩く。

「あ、そっか。オメェの村のことがあるからなァ」

魚人海賊団、アーロン一味。

「けどよ、魚人つってもありゃ海賊だろ?」

と、いつも通り膝間にティオを座らせているゾロが言うと、その周りを興奮したサンジがくるくる回る。

「その通りだァ! よく分かってんじゃねぇかクソマリモォ! 馬鹿の癖に~ぃ!」

サンジはシュタっとポーズを決めて止まり、熱く語り出した。

「魚人島はグランドラインの名スポット! 世にも美しい人魚たちが海上に弧を描き、魚たちと共に戯れる夢の王国!」

「ん、ゴホン」

「?」

聞こえた咳払いに、サンジが目をハートにしたまま振り返ると、満面の笑みを浮かべたココロが……

「ぐぁ……っ」

サンジのハートの目が崩れ落ちる。

……そうだ、このオバさんも人魚だった。

そのまま床に膝をついたサンジは、バシバシと床を叩き始める。

「夢くらい見たっていいじゃねぇか! 海賊だもの!」

「いるよ! ちゃんとわけぇのが! ……ただし、楽園には簡単に辿り着けるもんじゃぁないよ?」

テーブルでコーヒーを飲んでいたロビンが言う。

「海底っていうのが、気になるけど」

「そうよねぇ、どうやって行くのかしら……」

顎に手を当てる航海士をよそに、船長ルフィは超ポジティブ。

「そこはまぁ、行ってみりゃ分かるよ!」

ナミは呆れ顔でフっと笑った。

「それもそうね。詳しいことはティオが知ってるだろうし?」

ナミと目が合ったティオはコクンと頷く。

ココロが酒を仰ぎつつ、ナミの前に新聞を放り投げた。

「問題は行き方じゃぁないよ? 一面を見な。最近の新聞だ」

「行き方以外の問題? ……えっ、何よこれ。『今月もまた14隻、船が消えた』……って、どういうこと?」

「んががが、魔の三角地帯、フロリアントライアングル。楽園に到達するためには、必ず通ることになる海域だ。その海域では、毎年100隻以上の船が消息不明になるんだ。……そして後々、船員だけが消えた船が見つかったり、死者を乗せたゴーストシップの目撃情報が後を絶たない」

チョッパーが縮み上がった。

「おっ、オバケ出んのか!? 怖えぇ~っ!」

ルフィは目を輝かせる。

「生きたガイコツに会えんのかぁ!? なぁティオ! いるか!? 生きたガイコツ!」

ティオとゾロはジト目を向けた。

「……さぁ。すくなく、とも、てぃお、は、しらない」

「どんな生きモンだ、そりゃ……」

ナミはチョッパーと抱き合うようにして震える。

「嫌よ! そんな船には絶対に遭いたくない! ……っその海域、何が起きるの!?」

「んががが、さぁねぇ。その身に何かが起きた奴らは、その海域から出ちゃぁ来れねぇんだから。……霧の深い場所だ。気をつけな?」

「いやああぁぁっ! ティオ! 何があるのその海域! アンタなら知ってんでしょ!?」

ティオは半目で首を傾げる。

「いって、いいの?」

「えっ? どういうことよ……っ」

「たのしく、なくなる、よ? ぼうけん、したく、ないの?」

「なっ、冒険より命「ダメだティオ! 言うな!」

ルフィが血相を変えてナミの言葉を遮った。

「俺は冒険してえ! だから言っちゃダメだぞ!」

「りょーかい、きゃぷてん」

「ふざけてんじゃないわよお馬鹿キャプテン! ティオ、いいから教えなさい!」

「ダメだっつってんだろナミ!」

「アンタねぇ! 冒険と命とどっちが大事なのよ!」


……デッドヒートする船長VS航海士の口喧嘩。

ココロが笑った。

「んががががっ、海賊王は肝が据わってるねぇ。……まぁなんにしろ、危険の多い海だ。しっかり準備していきな?」

サンジがタバコの煙を吹く。

「まぁ、ただの遭難なら、食糧もたっぷり積み込んでくつもりだ。だから安心して~っ、んナミすゎん!」

「ただの遭難なわけないじゃない! 絶対タダごとじゃないわよォ!」

「あぁ~っ、怖がってるナミさんも素敵だァ~っ!」

ロビンが何かを企んだ瞳で、一言零した。

「商船や海賊船のなれの果てのゴーストシップには、宝船の伝説がつきものよね?」

それを聞いた途端……

「ゴーストシップを探すのよ!」

ナミの目がベリーになった。

ルフィも「任せろ!」と張り切る。

ゾロもあることに気づいた。

「待てよ? 宝船ってこたァ、刀も……」

ティオが下から見上げ、期待をぶち壊す。

「さびて、ないと、いいね」

「……」

ゾロは深く長~いため息をついた。

 
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