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23. 涙の別れと海軍の英雄
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その日の夕方。
「おっ、うまそ~な匂い! こっちか!」
どこからともなく、炭火とタレの芳ばしい匂いが漂ってきた。
仮設ルームにいた一味は、ルフィの肉センサーを頼りに歩を進める。
辿り着いたのはガレーラ・カンパニーの裏にある、プールだった。
ナミやココロたちが遊んでいて、プールサイドでサンジが水水肉を焼いている。
ルフィとチョッパーが颯爽と飛びついた。
「んほほほっ、うんめぇ~!」
「うんめ~なぁ~!」
「あぁ~んもうとろけちゃ~う」
「「ん? …ぶふぉっ!? そげキング!? いつの間に!?」」
ウソップの姿では来られないため、そげキングとして現れたようだ。
ゾロも肉の刺さった串に手を伸ばす。
「お前は食わねぇのか?」
「……まだ、どーなつ、おなか、のこってる」
ティオはしばらく食休みすることにした。
「あっ、いたぞ!」
「お~い麦わらさ~ん!」
「目ぇ覚めたんだなぁ~!」
プールの出入り口から、フランキー一家が入ってきた。
「んぉ? お~っ、オメェら~! こっち来て一緒に食おうぜ~!」
「おっ、バーベキューだ! 行くぞ野郎共!」
「「「おーっ!」」」
フランキー一家に、そのペット、ソドムとゴモラ。
さらに……
「あ~、腹減ったなぁ」
「オイモ~」
巨人族のオイモとカーシーがやって来た。
そして……
「おーっ、麦わらーっ! 起きたのかーっ!」
「ま、いい匂いがするな」
「んぉ、アイスのおっさん! ガレーラも来たな! よぉしサンジ! 肉追加だぁ!」
「アーォ! 俺たちの席もあるんだろうな!」
「「だろうなっ、だわいな!」」
「ぃよっ! 待ってましたぜ! アニキ!」
……総勢云百人の大所帯。
プールサイドは人で埋め尽くされた。
ぴく。
「……」
椅子に座って食休みしていたティオの耳が、動いた。
折れていない方の脚に重心を掛け、ゆっくり立ち上がる。
"ボンッ"
鳥に変身すると、その場から飛び立った。
「……」
目的地があるのか、小さな翼は真っ直ぐに風を切る。
100mほど進むと、次第に高度を下げて、ガレーラ・カンパニーの庭に生い茂る、木々の合間を縫うように進んでいった。
そして……
"ボンッ"
「くざんっ」
空中で人に戻り、目の前の人影に飛びつく。
「おっと」
クザンは咄嗟に、降ってきたティオを抱き留めた。
「危ねぇだろうが」
慣れた手つきで、軽い体を抱え直す。
「よく俺の居場所が分かったな」
「たんさく、とくい」
ビシっと親指が立つ。
無表情ながらも、瞳が輝いているドヤ顔。
クザンはフっと苦笑いした。
……何だかとても懐かしい。
ある日突然帰って来なくなった子供が、今、目の前にいる。
それも、以前よりずっと逞しくなって……
複雑な、けれど嬉しそうなクザンの感情を感じ取ったのか、ティオの口角が上がった。
クザンは思わず目を見開く。
「お前……」
……初めて見る、笑顔。
海軍にいた頃は、瞳の感じが僅かに変わるだけだったのに。
まだ少しぎこちなさはあるが、年相応の子供らしい表情が出来るようになっていた。
そこに、さらなる追い打ちを掛けるように、意図しなかった言葉が滑り落ちてくる。
「かけ、かった」
クザンはハッと我に返り、吹き出した。
「くくっ……はははっ、そうだな」
大きな手が、小さな頭を撫でる。
ティオは目を閉じ、本当に心地よさそうな顔をした。
「今回は俺の完敗だ。結構やるじゃねぇか、麦わら一味」
「(コクン)…せんちょう、かいぞくおう、なるおとこ、だから」
「……そうか」
どこか寂し気に、クザンはもう一度ティオの頭を撫でた。
後頭部で髪を纏めている羽ペンに、指先が当たる。
……この程度で有頂天になるようでは、新世界に出たら通用しない。
ティオのことだから、頭では分かっているはずだ。
けれど、心は知識よりも仲間を信じているらしい。
……きっとどこかで、一度は挫折を味わうのだろう。
「約束は約束だ。1回だけお前らを見逃す」
「(コクン)」
無邪気で、嬉しそうな顔。
「……」
クザンの中で、様々な感情が渦巻いた。
……応援してやりたい。
けれど、危険な目には遭ってほしくない。
まるで、親が子に抱える葛藤じゃないか……
心中で自嘲しながら、ティオの青い瞳を真っ直ぐに見据えた。
そして、白い額に自分の額を擦り合わせる。
「……頑張れよ」
低く、重い声。
ティオはその言葉を噛みしめるように、ゆっくりと瞳を閉じた。
言葉の後ろに隠されたクザンの想いは全て、伝わっている。
「……ん」
がんばるよ、と答えるように、ティオはクザンの首に腕を回して抱きついた。