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3. ノックアップストリーム
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モックタウンを出たメリー号は、島を回り込んで東に向かった。
……が。
行く手を塞ぐ船に、ルフィが顔をしかめる。
「さっそく変なのに出くわしちまったな~。でも、あん時の奴らじゃねぇみてぇだぞ? ウソップ」
「あ、あぁ……」
現在、メリー号の前には巨大な船が立ちはだかっている。
「あんときの、やつら?」
後ろから鈴を転がすような声が聞こえて、ルフィとサンジが振り返った。
「ん、ティオ。おめぇ着替えたのか」
「うおおっ! ミルクのような白い肌、深海の奥底のように神秘的な青い瞳、太陽にきらめくしなやかな金髪、そして清楚な白いワンピース!」
ティオの横にロビンが立つ。
「ふふ、いつまでも海軍の服じゃ目立つでしょう?」
ティオはじっと前方を見つめた。
目の前には巨大な船があり、猿のような容姿の大柄な男が乗っている。
「かいぞく、しょうじょう。かいていたんさく、とくいとしてる」
ティオの言葉にルフィが首をかしげる。
「ショウジョウ? 知ってんのか?」
「(コクン)…このあたり、なわばり、してる、おおざる、きょうだいの、かたわれ」
「へぇ~、何でも知ってんだな~。……ん? 大猿? それってよ、もう片っぽはマシラって奴か?」
「(コクン)…しってる、の?」
「あぁ。あの猿なら、蹴り飛ばした」
聞こえたのか、ショウジョウが激昂する。
「ぁあっ!? マシラを蹴り飛ばしただと!? 兄弟をよくもっ……マシラのカタキだぁ!」
「へ? おいおい、蹴ったけどよ、あいつまだ生きてるぞ?」
ルフィが弁解しても、ショウジョウは聞く耳を持たない。
「音波! ハボックソナー!」
ショウジョウは、手に持ったマイクに向かって、大声を出し始める。
声はスピーカーで増幅され、辺り一帯に響き渡った。
"バキッ…バキバキッ"
板が割れる音が聞こえてくる。
「船が!」
驚くルフィに対し、ティオは冷めた目でため息をついた。
サンジもため息混じりに、新しいタバコに火をつける。
「……で? 何やってんだアイツら」
「さぁ。でもスゲェな~。声で船が壊れてくぞ」
ショウジョウは、音波でメリー号を攻撃しているつもりだろうが、自分の船の方が近いため、どんどん壊れていく。
「ほらみんな! ぼーっと見てないで、今のうちに先へ進むのよ!」
「は~いナミさん!」
「お! ナミがもう鬼じゃねぇ!」
「ホントか!?」
「そりゃあんだけ発散すりゃぁな」
"バキッ……"
「?」
背後で嫌な音がして、ウソップが振り返った。
「うわっ、ちょっと待て!」
ようやく声が届いてきたらしく、メリー号も板が剥がれ始めていた。
「マズイ! 修理箇所から見る見る崩れてってるぞ!」
「うそっぷ、しゅうり、へただから?」
「あ~そっか~……ってそういう問題じゃねぇだろ!」
「全速前進! この声が届かないとこへ行くのよ!」
ナミの指示で、メリー号は急いで方向を変える。
何とか倒壊する前に、ショウジョウの声の領域を抜け出すことができた。
"カンカンカンカンカン……"
難を逃れた後、麦わら一味の男たちは、メリー号の修繕に取り掛かっていた。
ウソップ、ルフィ、ゾロが金槌を持ってトンカンする中、チョッパーが釘を渡して歩く。
「ったく、オランウータンめ、さらに船を破壊してくれやがって……」
ウソップが頬を膨らませると、ゾロがため息をついた。
「気がつきゃこの船もボロボロだな。替え時か?」
「なに勝手なこと言ってんだテメェまで! この船がどういう経緯で手に入ったのか、テメェが知らねぇわけねぇだろうが!」
ルフィがいい顔で振り返る。
「分かってるよウソップ。文句言っても仕方ねぇ。ゴーイングメリー号も俺たちの大切な仲間なんだ。頑張って俺たちの手でよ、直してやろうぜ」
ウソップは思わず涙ぐんだ。
「ルフィ、オメェって奴ぁ……」
だが……
"カン、カン、バキッ!"
「あ」
ルフィの力強いひと振りで、メリー号の側面が大きく破壊された。
「てめええぇぇ!! 直してんのか壊してんのかどっちだああぁぁ!!」
「いや、直す気満々なんだけどよ」
"バキッ!"
「あ、また壊れた!」
「ルフィィィィィ!!」
ウソップが嘆くのは当然だが、メリーも密かに嘆いていると知っているのは、ティオだけだった。
ティオは苦笑い気味な眼差しで、メリーの頭を撫でる。
「メリーの奴は、何か言ってるか?」
「?」
板を持ったゾロが、ティオの近くでトンカンし始めた。
「お前、物と話せんだろ? ウソップから聞いた」
「……」
ティオは、ピークヘッドに目を向ける。
「めりー、いっぱい、みせてくれた」
"カンカンカンカンカンカンカン……"
「いーすとぶるー、みんなと、はじめて、あった、ひ。なかま、ふえるたび、わらいごえ、ふえた。ぐらんどらいんへの、みち、りばーすまうんてん……めりー、しあわせそう」
「んじゃ、今日からお前の記憶も入ったわけだ」
「?」
"カンカンカンカン……"
「仲間が増えた日、全部覚えてんだろ? だったら、今日お前のことも記憶されたはずだって言ってんだ」
「……」
「……よっ、と。ウソップ、次どこだ?」
「ん? あぁ! 船尾の方を頼む!」
ゾロは木材を担いで、船尾の方へ歩いていった。
「……」
ティオは黙ってその背中を見つめる。
(……なか、ま)
何を言っているのだろう。
自分は海兵だ。
ほんの少し、腕が治るまでの間だけ、居させてもらうだけなのに。
「……」
胸の辺りがむず痒くなった。
しかしその正体は分からない。
分からないまま、ティオは、メリーの顔をじっと見つめていた。
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