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23. 涙の別れと海軍の英雄
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そうして麦わら一味が歓喜に沸いている頃、港では。
「か、海軍だっ」
「麦わらたちを捕えに来たのかっ」
「あれは、本部のガープ中将の軍艦っ」
ひそひそと騒ぐ住民たちの間を、整列した海兵たちがガレーラ・カンパニーの方へ真っ直ぐ進んでいた。
それを建物の陰から見たゾロは、慌てて走り出す。
「ヤベェっ! こんなに早く嗅ぎつけられるたァっ……ルフィとティオに至っちゃまだ寝てるってのにっ……早く知らせねぇと!」
ゾロは頭の中の地図に従って走り、角を曲がった。
すると……
"ザパァンッ!"
「なん、だと……?」
目の前で波が跳ねる。
ガレーラ・カンパニーへ向かったつもりが、何故か海岸に出てしまった。
「ちっ、さっきの角を逆か!」
ゾロは元来た道を戻り、走り続けた。
そしてまた角を曲がると……
"ザパァンッ!"
全く同じ情景に出くわす。
……その後、何度引き返しても戻ってくる場所は同じだった。
「はぁ、はぁ……いい加減にしろよコラ……」
ゾロは誰に対するでもなく、迷路のように道を阻む街そのものにイラついていた。
……その頃、海兵隊は迷うことなくカンパニーに到着し、大工たちが止めるのも聞かず、敷地内に入っていた。
「ここに海賊がおるはずじゃなァ?」
「なっ、いませんよ海賊なんて!」
「ちょっ、ここから先は関係者以外立ち入り禁止ですよ!」
「じゃかぁしぃわい!」
大工たちを掻き分け、海兵隊は仮説本社へ、もっと言えばその隣の建物へと向かった。
建物の前まで来ると、海兵隊は足を止める。
「全員、ここで待て」
「「「はっ!」」」
海兵たちを引きつれていた、犬のかぶり物をかぶった男は、壁の前に立ち、拳を握った。
ハァっと息を吐きかけ、構える。
"ヒュッ―――
バキャァッ!"
「「「「!?」」」」
突然の爆音に、中にいた面々は、揃って音のした方を向いた。
「なっ、何だぁ!?」
「いったい誰だ!」
「……ん、ぅ?」
さすがのティオも目を覚ます。
「お前らか、麦わらの一味とは」
崩れた家の壁。
砂煙の中から現れた、男。
貫禄のある声に、筋骨隆々の体。
装いは海軍の佐官以上。
一味は唖然とその場に立ち尽くす。
「モンキー・D・ルフィに、会わせたい男たちがおるんじゃがなァ」
「チッ、海軍か……」
サンジとフランキーが臨戦態勢を取る。
その背後では、テーブルについたまま、爆睡しているルフィ。
それを見て、男はニヤリと笑んだ。
「フッ……まったく、しょうがない奴じゃ」
"シュッ―――"
「「!?」」
サンジたちの合間を、風が一陣駆け抜ける。
いつの間にか、男はルフィの頭上に居た。
「しまっ……」
「ルフィ!」
男は拳を振り上げ、ルフィの頭目掛けて振り下ろす。
「起きんかァァっ!」
"ドゴォッ"
衝撃で、テーブルも椅子も、床さえも砕け散る。
「のぁぁぁぁっ! 痛てぇぇぇっ!」
「んなっ、痛てぇ? 何言ってんだ! 今のパンチだぞ! ゴムに効くわけが……」
「愛ある拳は、防ぐ術なし! ……随分と暴れとるようじゃの、ルフィ?」
男はかぶり物を脱いだ。
晒された素顔を見上げ、ルフィは目を見開き青ざめる。
「げぇっ!? じっ、じっ、じっ、
じいちゃんっ!?」
「「え……ええええっ!?」」
「か、海軍中将が!?」
「ルフィのっ」
「「じいちゃん!?」」
一味は固まっていた。
衝撃に頭がついてこない。
そんな中で……
「がーぷ、ちゅうじょう」
ピョンと、ガープに飛びつく小さな影があった。
「ん? おぉ、ティオか。元気そうじゃのう」
「(コクン)」
ガープは表情を綻ばせ、大きな手でガシガシとティオの頭を撫でる。
「ちょっ、えっ、ティオ!?」
「知り合いなのかいっ? ティオちゃんっ」
「(コクン) …ほんぶ、いつも、いたから」
ルフィが切羽詰まった声で叫ぶ。
「離れろティオ! 危ねぇぞ!」
しかしティオは、まったく動じることなく、むしろゆったりと首を横に振る。
「だいじょぶ」
ナミが半信半疑で言った。
「ちょっと待って……ガープって言ったら、海軍の英雄の名前じゃなかったかしら」
「「マジで!?」」
「おいルフィ、ホントにお前のじいちゃんなのか!? ……どうやらティオちゃんとも知り合いみてぇだが……」
「あぁ。オメェら、絶対に手ぇ出すなよ! ……俺は小さい頃、じいちゃんに何度も殺されかけたんだ!」
ガープはフッと笑って話し始めた。
「おいおい、人聞きの悪いことを言うな。わしがお前を千尋の谷に突き落したのも、夜のジャングルへ放り込んだのも、風船に括りつけて空へ飛ばしたのも、全て貴様を強い男にするためじゃ!」
「……今、ルフィの底知れねぇ生命力の根源を見た気がした……」
「最終的には友人に託し、エースと共に修行をさせたが、目を離してみればこのザマだ。わしゃぁお前を、強い海兵にするために鍛えてやったんだぞ!」
「俺は! 海賊になりてぇってずっと言ってたじゃねぇかよ!」
「赤髪に毒されおって! くだらん!」
「んなっ、シャンクスは俺の命の恩人だ! 悪く言うな!」
"ガシッ"
「ぅおわっ」
ガープはルフィの胸倉を掴み上げた。
「じいちゃんに向かって、"言うな"とは何事じゃぁ!」
「うわあああっごめんなさーいっ!」
「大変だァ! ルフィが海軍に捕まったァ!」
「ルフィ!」
「~~っ離せこのォ!」
口ではそういうものの、ルフィはじたばたするだけで攻撃しようとしない。
「ちっ、ダメだ、あのじいさんに対する闘争心は、既に折られてるっ」
「「くか~、くか~」」
「「「……へ?」」」
突然、ルフィとガープがそのままの姿勢でいびきをかき始めた。
「「「寝たぁ!?」」」
「え、いや、どうすりゃいいんだよ俺たちは……こんな状況、初めてだ……」
ティオが無表情のまま、ガープの服を掴んで揺する。
「ちゅうじょう、おきて」
「ん、ぁあ? おぉいかんいかん、寝ておったか。……ん?」
掴み上げたルフィが寝ているのを見て、ガープの眉間に再びしわが寄る。
「こンのアホ孫はぁ……
起きんかァ! ルフィ!」
"バキッ"
「ぬぁぁぁぁっ!」
ルフィはたんこぶの出来た頭をさらに殴られた。
「それが人に怒られる者の態度かァ!」
「ごめんなさーいっ!」
「大体その言葉遣いは何じゃァ! それがじいちゃんに対する態度かァァ!」
「ぎゃあああああああっ!!」
家が揺らぐほどの衝撃が何度も起こり、ルフィの頭のたんこぶが増えていく。
それを眺める一味の目は、どこか遠いものになっていた。
(((もう、勝手にやればいい……)))
……やがてほとぼりが冷めると、話が再開された。
「そもそもお前、赤髪がどれほどの海賊なのか分かっておるのか」
「えっ、シャンクス達、元気なのか!? どこにいるんだ!?」
「元気も何も、今や星の数ほどおる海賊たちの中でも、かの白ひげに並ぶ、4人の大海賊の一人じゃ! グランドライン後半の海に、まるで皇帝のように君臨するそ奴らを、世に四皇と呼ぶ! その4人を食い止める力として、海軍本部、王下七武海が並ぶ。この三大勢力がバランスを失うと、世界の平穏が崩れると言われるほどの巨大な力!」
「ん、んん? よく分かんねぇけど、元気ならいいや」
ロビンは驚愕の顔でナミに訊く。
「あの赤髪と繋がりが……?」
「ルフィの麦わら帽子、その人から預かってるんだって。……そんなに凄い人だったなんて知らなかった」
「ティオ、お前ルフィに赤髪のこと話しとらんかったのか?」
「きかれ、なかった、から」
「あー……ルフィはそんなこと気にせんか」
「(コクン)」
ルフィは麦わら帽子を手に取り見つめた。
「懐かしいなァ……」
すると、そこに……
"カキンッ、カンッ、ズォアッ!"
剣の交わる音が聞こえてきた。
「うわっ、ちょ、ちょっと待て」
「ぐぁぁっ!」
「ぎゃぁぁっ!」
海兵たちの叫び声や呻き声も聞こえる。
ナミが首をかしげた。
「何かしら」
ティオがポツリと言う。
「ぞろ、きた。たたかってる」
「「ぇえっ!?」」
ガープがニヤリと笑みを浮かべ、外に立つ2人の海兵に声を掛けた。
「お前らが会いたがっとった客の1人じゃ。ほれ、止めてみぃ」
「「はい!」」
2人は踵を返して走り出した。
金髪の男の方が、腰に差していた武器を手に取り、ゾロに向かっていく。
"ヒュッ、ガキンッ"
明らかに雑魚とは違う雰囲気。
ゾロは口角を上げた。
「ククリ刀か。珍しいモン持ってんな」
"カンッ、ガキンッ、ガキンッ"
日本刀とククリ刀が交わる。
ルフィが慌てて駆け出した。
「おいゾロ! 暴れるこたねぇんだ!」
すると、目の前に……
"―――シュッ"
「!」
桜色の髪の男が現れた。
"ドカッ!"
下から顎を蹴り上げられる。
「っ……何だ、こんにゃろう!」
ルフィは拳を振り上げる。
「##RUBY#剃#ソル##ッ」
"シュッ"
男が目の前から消え、拳がカラぶった。
ルフィは眉をピクっと動かす。
「この技……」
つい最近、コレの達人と交戦したばかりだ。
ルフィはその場から動かず、じっと気配を探った。
"―――タタタッ"
背後から駆け寄ってくる足音。
「……」
"グィン……ガシッ!"
「うわっ」
"ドサッ!"
ルフィは男の首元を掴み、地面に押さえつけた。
同じ頃……
"ヒュッ……ガキンッ"
空を舞ったククリ刀が地面に刺さり、金髪の男の首にゾロの刀が添えられていた。
海兵たちが焦り顔で叫ぶ。
「曹長!」
「軍曹!」
「ぶわっはっはっはっは!」
ガープが笑いながら歩み寄って来た。
「まったく敵わんかったなァ!」
それを聞いて、男たちは苦笑いを浮かべる。
「やっぱり強いや……さすがだ、あははっ」
「ん、んん?」
想定外の反応にルフィは瞬きを繰り返す。
「参りました!」
潔くそう言うので、首を掴んでいた手を離してやった。
押さえつけられていた男は立ち上がって、服のホコリを払う。
「ルフィさん、ゾロさん! お久しぶりです。ボクが分かりますか?」
「んん? 誰だ?」
「ボクです! コビーですよ! 覚えていませんか?」
「コビー?」
ルフィの頭をよぎるのは、小さくて、ナヨっとしてて、愛想笑いと弱音を吐くばかりだった少年の姿。
「コビーは友達だけど、もっとチビのコビーしか知らねぇぞ?」
「そのコビーです! 泣き虫でダメだった、コビーですよ!」
「んぇ? えぇーっ! ホントかーっ!?」
「本当にあのコビーなのか? 何でグランドラインに居やがんだ……?」
「まだまだ将校にはなれてないけど、近くにお2人がいると聞いて、居ても立ってもいられなくて! 今のボクたちがあるのは、お2人のおかげですから!」
言って、コビーはルフィとゾロに敬礼した。
「色々あって、ボクたち、本部のガープ中将に鍛えてもらってるんです!」
「そうなのかァ! しっかしオメェ、成長期にも程があるぞ! 驚いたァ! あんときゃ贅肉ダルダルだったもんなァ!」
ルフィとゾロは、コビーを連れて仮設ルームへ歩き出す。
「えへへっ、皆さん事件の後でお疲れだというのに、急にお邪魔しちゃってすみません」
「んぁ~いいっていいって! 久しぶりだ、宴にしよう!」
「って オイ! ちょっと待て!」
「「「?」」」
呼ばれて、3人は振り返った。
金髪の男が額に青筋を浮かべている。
「お前ら! 俺に気づいてねぇだろ!」
「あぁ? 誰だテメェ」
「俺だよ! オ・レ!」
「知らねぇよ。誰だ」
男は、かけていたサングラスを引き上げた。
「俺だよ俺、ヘルメッポだ。モーガン大佐の息子で、お前を磔にして死刑寸前まで追いやった男だよ、ロロノア・ゾロ!」
「……」
「……」
ルフィとゾロは3秒ほど頭の中を探った。
そして首を90度傾ける。
ヘルメッポは頬を引きつらせた。
「お、おいおい、いい加減にしろよ……?」
面倒くさくなってきた2人は、半目で言う。
「「あー、お前かー」」
「おい! 絶対ぇ思い出してねぇだろ! やめろその目! 意外と傷つくから!」
「仕方ないよヘルメッポさん。過去も受け入れなきゃ」
苦笑いしたコビーだが、妙に真剣な顔で、ルフィの方を向き直った。
「あの、ルフィさん、ボクらは敵同士ですけど、今でも、その……」
訊きたいことを察したルフィは、ニカっと笑う。
「あぁ! 友達だ! にっしっしっ!」
「へへっ、えへへっ」
ルフィ達は仮設ルームへと入っていった。