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23. 涙の別れと海軍の英雄
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ウォーターセブンへ帰る道すがら。
麦わら一味はすっかりいつもの航海気分を取り戻していた。
「おい! おいおいおいウソップ~っ!」
「どこに居るんだよウソップ~!」
動けないルフィをチョッパーが担ぎ、2人して甲板で大声を張り上げる。
先ほどから、今まで一緒に居たはずのウソップが見当たらないのだ。
サンジがタバコに火をつけつつ"そげキング"に言う。
「……おい、呼んでるぞ」
そげキングは身を縮め、ひたすら青ざめていた。
「いや……我にかえってみると、あの……」
「いい加減出てこいウソップ! 出てこねぇとぶっ飛ばすぞ!」
「ぶっ飛ばすぞォ!」
フンッと鼻を鳴らしたルフィは、あ、そうだと思いついたように振り返る。
「なぁ、ウソップ知らねぇか? そげキング」
「ギクッ」
「どこにもいねぇんだよアイツ~」
「あ、あぁ、安心したまえ! 彼ならさっき、小舟で先に帰った!」
「「えぇ~っ!?」」
"ドカッ"
サンジがそげキングの頭に蹴りを入れた。
ルフィとチョッパーは相変わらず目を見開いている。
「何でだァ!?」
「今この船、アイツのモンなのに!」
ゾロとティオが半目でルフィたちを見た。
「アイツら一体、何をもってウソップと認識してんだ……?」
「さぁ」
その頃ナミは、メリー号の船室という船室を全て見て回っていた。
「ここも、か……一体どういうことなのかしら……」
顎に手を当てて船首の方へ戻ってくる。
「やっぱり、誰もどこにも乗ってないわ」
サンジがタバコの煙を吹く。
「そりゃ変だな……あのとき
「この船、一体誰が……」
話を聞いていたルフィが、眉間にしわを寄せる。
「あのなぁ、アホかオメェら!」
「「「?」」」
「あんとき、俺らを呼ぶ声が聞こえたろ!? ありゃぁ間違いなく、メリー号の声だ! なぁメリー! 喋ってみろって!」
……甲板が、静まり返る。
「あのなぁルフィ、物は喋らねぇんだよ」
「けど、ティオはメリーとも喋れるじゃねぇか!」
「ん、あぁ、そういやそうか」
「なぁティオ! メリーは喋るよなぁ!?」
「(コクン)」
「ほら見ろ!」
「せいかくに、いうと、せかいじゅう、ばんぶつ、なにもかも、こえ、はっしてる」
チョッパーがルフィを担いだまま、首をかしげる。
「でも、俺には聞こえねーぞ? 前に、修行が必要って言ってたよな?」
「(コクン) …でも、ものの、こえまで、きくには、さいのう、ひつよう」
ナミが顎に手を当てた。
「つまり、いくら頑張っても聞こえない人は一生聞こえないのね?」
「(コクン)」
「んなぁティオ~、俺にもメリーの声聞こえるようにしてくれぇ~!」
「むり」
「えぇ~っ?」
「アホかクソゴム。才能と修行が必要だってティオちゃんが言ったばっかりだろうが」
「でもよ~、あの時は聞こえたじゃんかぁ」
「だァから……」
……ぬる~い口喧嘩が続く。
穏やかな波に穏やかな風。
航海はすこぶる快調だった。