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21. ゾロ VS カク
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「フン、今さら粋がったところで遅い! この塔を切り裂いた最強の
カクは十分に距離を取って、片腕をつき、体を回し始める。
「諦めるんじゃな! 先ほどのデモンストレーションとはわけが違うぞ!」
室内の空気が渦巻き始める。
先程よりかなり威力が上がっているようだ。
「……ティオ、伏せてろ」
その声に従い、ティオはその場に伏せた。
ゾロはおぞましく思える程の気迫を纏い、刀の切っ先をカクに向ける。
「鬼気、九刀流・阿修羅」
「「!?」」
カクもティオも目を見開いた。
ゾロが三面六手に、刀が九本あるように見える。
(あれはさっき見た鬼神…っ、気迫でここまで幻を見せるか!)
カクは
「見事……じゃがもはや手遅れ!」
「……手遅れなのもテメェだ」
「その慎ましからぬ言動も、この
回転により十分に力を溜めたカクは、その両足をゾロに向けて振り抜く。
「
……飛んでくる巨大な斬撃。
ゾロはそれを静かに見据え、タイミングを合わせて弾き飛ばした。
"ガキィン!"
「んなっ、弾いたじゃと!?」
そして、カク目掛けて飛ぶ―――
「苦難上等、
好むものなり、
修羅の道……
阿修羅・
―――何が起きたのか。
ティオにはよく、分からなかった。
……けれど、逃げていた鳥たちが戻ってくる。
張り詰めていた空気が消えたということだ。
"ドサッ"
カクはキリンから人の姿に戻り、芝生に倒れ込む。
"チャキン……ッ"
ゾロは刀を鞘に収めた。
そして黒手拭いを外し、腕に巻き直す。
「……ひとつ、ガレーラの若頭から伝言だ」
カクは荒い呼吸を繰り返しながら、パウリ―を思い浮かべる。
「……テメェら、クビだそうだ」
「……」
目の前には、青い空。
この5年間、ウォーターセブンでよく飛び回っていた空と、同じ……
「は、はは……っ」
カクの脳裏に、最後に見たパウリーの顔が浮かぶ。
『俺はオメェらをっ、仲間だと思ってた!』
……傷の痛みとは違う痛みが、体の内側で鈍く響いた。
「……そうか、困ったわい……殺し屋という仕事は、潰しが利かんというのに……」
服のポケットから鍵を2つ、取り出す。
ゾロはカクに歩み寄りつつ、言った。
「動物園があるじゃねぇか」
「ふっ、はははっ、言うてくれるわい……」
カクの手から鍵を受け取り、ゾロはティオの元へ行って、しゃがむ。
「……ちょっと上向いてろ」
言われるままに、ティオは上を向いた。
ゾロは首輪の鍵穴を探し、番号が書かれていない方の鍵を差し込んで回す。
"カチャ……"
……ようやく、外れた。
ティオは体に力が戻って行くのを感じる。
「ありが、と」
「……ンなの、ここを無事に逃げ切ってからにしろ」
「(コクン)」
ゾロはニヤリと口角を上げてティオの頭を撫でた。
……少し乱暴なそれが、とても心地いい。
「さて、ロビンに鍵届けに行かねぇとな」
「(コクン)…でも、そのまえに、ちょっと」
「あ?」
ティオは右足に重心をかけて立ち、左足を引きずりながらカクの元まで歩いて行った。
そして傍に膝をつき、顔を覗き込む。
「……なんじゃ、仕返しでも、しに来たのか?」
ティオはゆっくり右手を上げ、人さし指をカクの心臓の上に持っていく。
そしてトンと指を置くと、コテっと首をかしげた。
「ここ、いたい、よね?」
「……?」
てっきり
ティオはもう一度訊いた。
「いたい、よね?」
カクは小さなため息をつく。
「……何を言うとるんじゃ」
ティオの青い瞳が、じっとカクを見つめた。
「5ねんかん、うぉーたーせぶん、いたの、たのしかった、でしょ?」
「……」
「えにえす・ろびー、もどるの、ちょっと、いやだった」
「……」
「このまま、だいく、してるのも、いいかもって、ちょっと、おもって、た」
カクは帽子を目深にかぶって目元を隠す。
「……それ以上は言わんでくれんか……言ったじゃろう、殺し屋は潰しが利かんと」
「でも、かんじょう、もっちゃ、いけない、とは、だれも、いって、ない」
「?」
ティオはカクの両頬を両手で挟み込んだ。
「わすれ、ないで。いままで、すごして、きた、ばしょ、じかん。であった、ひとたち。そして……かんじた、こと」
「……」
「かんじょう、ころして、いきる、すごく、つらい。たのしいも、かなしいも、ひてい、しないで。……しごと、ころしや、でも」
「……そんなことを、何故わしに言う」
「なぜ……。……なぜ?」
ティオは首をかしげ、視線をあちこちに飛ばしながら考えた。
やがて、傍で腕を組んで立っているゾロを見たとき、答えを得る。
「……おなじ、と、おもった、から」
「同じ?」
「ちょっと、まえの、じぶん、みてる、きがした」
伝承者としての仕事が何より優先。
大事なのは頭に刻んだ記録。
……そう、思っていたのに。
"出会って"しまった。
楽しいも、ワクワクも、何もかも共有できる仲間に。
そのとき"感情"というものを知った。
途端にすべてが変わり、世界が色鮮やかになったのだ。
「どれだけ、むし、しようと、しても、かんじょう、いしより、つよい、から、おさえ、られない。だから、ぜんぶ、うけいれて。ひてい、しないで」
カクがメリー号の査定に来たとき、カクから感じたCP9らしくない感情に、ティオはずっと疑問を抱いていた。
……それが今、ようやく分かった。
自分が麦わら一味に"出会った"のと同じく、カクも"出会って"いたのだ。
ウォーターセブンで、大工という仕事に、それに関わる人々に……
CP9の歴史上、5年間も一ヶ所に潜伏した事例は初めてだ。
それほど長い間、殺し屋を休業していれば、今まで味わったことのなかった感情が芽生えることくらいあるだろう。
(……CP9、きっと、かわって、く)
今回の任務がきっかけになる。
ほんの少しずつ、時代の流れと共に変わるだろう。
青空を、鳥が横切る。
カクはそれを見つめて、苦笑した。
「……まったく……不思議な、子供、じゃ、お主、は―――」
ゆっくり、瞳が閉じられる。
どうやら気絶したらしい。
ゾロがティオの頭に手を乗せる。
「……行くぞ」
「(コクン)」
ティオは右足を軸にゆっくり立ち上がった。
→ 22. バスターコール
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