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20. エニエス・ロビー
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水平線の向こうまで響き渡りそうな、悲しい叫び。
「ははっ、あははははっ」
スパンダムが手を叩きながら大笑いする。
「面白れぇ! 何だコイツら! ぬぁっはっはっはっはっ!」
フランキーはそれを睨みつけながらも、ロビンの元へ走り寄る。
「何のつもりだテメェ! アイツら、命がけでここまで来たんだぞ! それを!」
「彼らが勝手にしたことよ」
「ふざけんじゃねぇぞ!」
怒鳴り散らすフランキーを横目に、ジャブラがため息をついた。
呼びつけられた挙句に待たされて、シビレを切らし始めているのだ。
「なぁ長官、ちょっと行ってあの麦わらをサクっと殺ってくりゃいんだろ?」
「まぁ待てジャブラ。今、麦わら一味が内部崩壊を始めたところだ。もう少し見守ろうじゃねぇか。
ルフィは眉を顰めて首をかしげた。
「死にてぇ?」
「そうよ!」
「おいロビン! 死ぬなんてよぉ!」
「ぬぁっはっはっはっ、聞けぇこの悲痛な叫び! いったいどんな顔して―――」
「なぁに言ってんだオメェ」
「んなっ、鼻ほじっとる!?」
ルフィは深刻の"し"の字も感じさせないボケっとした顔で、ロビンの説得を始めた。
「あのなぁ、んなこと言っても、俺たちもうここまで来ちまってるから。お前が助けてほしくなくても、ティオだってそこにいんだから、どっちみちそこに行くことに変わりはねぇ。とりあえず2人とも助けるからよぉ、それでも死にたきゃ、そんとき死ね」
と、宣言したルフィの後ろで……
"ボゴッ……ズォォオオオオオッ!"
屋上の床が崩れ、大きな竜巻が上がった。
「きゃあああぁぁぁっ」
「のおおおおぉぉぉっ」
竜巻の中で、ナミとチョッパー、敵らしき3人の男がくるくる回っている。
やがて竜巻が収まると、その穴から見慣れたマリモ頭がピョコっと出てきた。
「はぁ……遠回りして損したぜ。初めからこうやって登りゃ良かったんじゃねぇか」
"ゴチンッ"
「何すんのよゾロ! 迷子になったと思ったら変な竜巻起こして!」
「余波だったから助かったけど! 直撃してたら俺たち死ぬとこだったんだぞ!」
「ってぇなぁ~」
"ドゴォッ"
また屋上の床が崩れる。
今度飛び出してきたのはサンジだった。
「どりゃぁ~っと! ……間違いなく俺が一番乗りだ。さぁロビンちゃんティオちゃんお待ちかね、俺が助けに……って何っ!? マリモってめぇ何故俺より先にっ!」
「何だお前、遅かったな、迷ってたのか?」
「テメェじゃねぇんだ、んなわけあるか!」
「ぁ~~~~……」
「ん、何だ?」
何やらか細い声が空から聞こえて、チョッパーは上を見上げた。
「んなっ、そげキング!? どうして空なんか飛んでんだ!?」
そげキングはしばらく真っ直ぐに上昇していたが、やがて落下し始める。
"ヒュォオオオッ……ドスッ"
……結局、頭から屋上の床に刺さった。
「そげキングぅぅっ!?」
慌ててチョッパーが引っ張り出す。
CP9は、1人、また1人と集まる麦わら一味をため息混じりに見下ろしていた。
「おーおー、続々と」
「よよいっ、何はともあれぇ、本陣に乗り込んでくるたぁ、ぁ敵ながら、あっぱれ、あっぱれぇ」
ティオは何か熱いものが胸にこみ上げるのを感じながら、呟いた。
「みん、な……っ」
久々に感じる、麦わら一味の雰囲気。
……来てくれた。
この政府の玄関、敵陣のど真ん中へ。
ゾロもナミもチョッパーも、サンジもそげキングも、みんな一度ティオに視線を向けて小さく頷く。
助けに来たぞ、と言わんばかりに。
その頃、ルフィは相変わらずボケっとした顔で、ロビンを説得し続けていた。
「頼むからよぉ、死ぬとかナンとか、何言ってもかまわねぇから、そういうことはお前、俺たちのそばで言え!」
一味はみんなルフィに並び、裁判所の屋上に一列になった。
それを見下ろし、スパンダムは笑う。
「だーっはっはっはっはっ! このタコ海賊団が! お前らが粋がったところで、結局は何も変わらねぇと思い知れ! この殺し屋集団CP9の強さ然り、人の力じゃ開かねぇ正義の門の重み然り、何より俺には、このゴールデン電伝虫を使い、バスターコールをかける権限がある!」
スパンダムが掲げる手には、輝かんばかりの黄金の電伝虫。
ロビンが露骨に肩を揺らした。
ティオも僅かに眉間にしわを寄せる。
「そう、ちょうど20年前、お前の故郷を消し去った力だよなぁ? ニコ・ロビン」
「っ……あなた、本当に分かってるの? そのボタンを押せばどうなるか」
「くくっ、いいねぇその苦悶に満ちた顔。バスターコールが何か分かってるかって? 当然だろ? この島から海賊が出られる可能性がゼロになるんだ。実に簡単じゃないか」
「そんな簡単なことじゃ済まないわ!」
魂の叫びともとれる、必死な声が響き渡る。
その叫びに共感できるのは、この場で唯一、ティオだけだった。
……バスターコールを受けて出動した海兵の記憶を、いくつも見たことがある。
もちろん、クザンの記憶を介して、オハラで起きた出来事も見た。
中将5人と軍艦10隻による無差別攻撃。
犯罪者も民間人も、海賊も海兵も関係なく、全てを殲滅してゆく。
攻撃対象となった場所が、跡形もなく消え去るまで……
「あなたたち政府の人間も、1人残らず消し飛ぶわよ」
「んなっ、味方の攻撃で消されてたまるか! 何言ってんだテメェは!」
「ほんとの、はなし」
「何だとっ」
ティオは深い青の瞳でまっすぐスパンダムを捉え、淡々と語った。
「ばすたーこーる、かかったら、かいぐんじょうそうぶ、ただひとこと、こう、めいれいする、だけ。―――すべて、けせ」
スパンダムは、ティオの青い瞳に、言いようのない恐怖を感じる。
「んな馬鹿な……っ」
ロビンはルフィたちに懇願するような目を向けた。
「……20年前、私から全てを奪い、多くの人の人生を狂わせた、たった一度の攻撃、バスターコール……それが、やっと出会えた、心から気を許せる仲間たちに向けられた。私があなたたちと共にいたいと望めば望むほど、私の運命があなたたちに牙を向く! ……私には、海をどれだけ進んでも、振り払えない闇がある……私の敵は、世界と、その闇だから。青キジのときと、今回と、私はもう二度もあなたたちを巻き込んだ! これが永遠に続けば、どんなに気のいいあなたたちだって、いつか重荷に思う! いつか私を裏切って、捨てるに決まってる! それが一番怖いの! ……だから、助けになんて来てほしくなかったっ……いつか落とす命なら! 私は今、ここで死にたい!」
ロビンの叫びに、ナミ、チョッパー、そげキング、サンジは絶句した。
「ロビン……」
「ロビンちゃん……」
重い過去を自分1人で背負って、仲間のために命まで投げ打って……
その決意の固さに、どんな言葉を掛けてあげればいいんだろうと、誰もが考えていた。
そんな一味の誰よりも、真っ先にロビンに声を掛けたのは……
「ばか!」
―――ティオだった。