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20. エニエス・ロビー
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そうして、司法の塔でCP9たちが一休みしている頃。
「んよっと」
誰よりも早く侵入し、1人で突っ走ってきたルフィは、司法の塔の目前にある裁判所に登っていた。
「おっ、あっちの建物にロビンとティオがいんのか……けど、橋かかってねぇじゃん。ちっと遠いけど、飛んでみっか」
裁判所と司法の塔は滝に阻まれており、可動式の橋を降ろさなければ行き来できない。
ルフィはゴムゴムのロケットで飛ぼうと、腕を伸ばした。
しかし……
「エア・ドア」
低い声が聞こえて、手を引っ込める。
「ん、何だ? 誰だ?」
ルフィが首をかしげる目の前で、ブルーノが空間にドアを作って現れた。
「あっ、お前! ハトの奴と一緒にいた牛!」
「随分と状況と情報に違いがあるようだな」
聞いた話では被害総数は5人だったはず。
しかし、たった5人の被害でこんなところまで敵の侵入を許しているわけがない。
「おいっスゲェな! 今の手品か!?」
「世界政府始まって以来、前代未聞だぞ。政府の玄関にここまで踏み込んで来た男は」
「……」
ルフィはじっとブルーノを見据えた。
珍しく何か考えているようだ。
……ルフィの脳内を駆け巡っていたのは、数日前、クザンと遭遇した後にティオと話したこと。
『オメェが青キジ追っ払ってくれたんだってな、ティオ』
『? ……ちがう』
『ん、そーなのか? ゾロとサンジが言ってたぞ?』
『かいぐんたいしょう、おっぱらう、むり。くざん、もともと、ころす、き、なかった』
『でもアイツ、ロビンとティオを狙って……』
『ちゅうこく、しにきた、だけ。これからさき、もっと、きけん。いきのこりたければ、もっと、つよくなれ、って』
『……』
『ねぇ』
『ん、何だ?』
『もし、また、なかま、ぴんち、なっても、たすける?』
『当たり前だ!』
『……それじゃ、しんじてる、ね』
『おう! まかしとけ!』
「約束したもんな、ティオ。また仲間がピンチになったら、俺が助けるってよ」
ルフィは拳を構えた。
自分を信じる"仲間"のために。
「俺、お前らに会えてよかったよ」
ルフィの言葉に、ブルーノは眉を顰めた。
「俺はまだまだ、強くなれる!」
ブルーノを見据えるルフィの黒い瞳には、静かな闘志の炎が燃えていた。
その頃。
「何じゃろなぁ。とてもこの世の果実とは思えん不思議な引力を感じる」
「結局、図鑑には載ってなかったわね……まぁ、図鑑に載ってる種類はごく一部だって話だけど」
CP9メンバーに興味本位で見守られて、カクとカリファは悪魔の実を前に考えていた。
「どんな能力が身につくかは食べてみてのお楽しみ、というところかのう」
「もし変な能力だったら、カナヅチだけが重荷として残るってことでしょう?」
酒のグラス片手に、ルッチが傍に突っ立っていたティオの背中を押す。
「だったら、コイツに訊いてみればいい」
ティオは答えたくなさそうに目を逸らした。
「じゃが、図鑑にすら載っておらん種類の実じゃぞ?」
「そんなものまで知ってるの?」
「そのための伝承者だろうが。コイツの頭の中には世界中の情報があるんだぞ? たかだか数人の研究者が作った図鑑なんぞより、データ量は多いに決まってる。……なぁ?」
殺意の籠った刺すような視線。
ティオは、逆らうことは得策ではないと判断した。
ゆっくりと腕を持ち上げ、まずはカクの目の前の実を指す。
「……うしうし、の、み。もでる、じらふ」
「チャパパ、ほんとに知ってた……」
「ほう、ゾオン系の能力か。モデル・ジラフ、ということは、キリン人間になるんじゃな?」
「(コクン)」
続いてティオは、カリファの目の前の実を指した。
「……あわあわ、の、み。ぱらみしあ」
「パラミシア系? アワアワってどういうことよ。泡が噴き出るの?」
「からだ、せっけん、なるのと、おなじ。こすると、あわ、たつ」
「要するに石鹸人間ってわけね? ……ふふっ、女には堪らない能力じゃない」
どうやら、食べる方向に決意が固まったようだ。
その前に、と、カリファはティオに刺すような視線を向ける。
「ウソ、じゃないわよねぇ?」
「(コクン)……うそ、ついても、めりっと、ない……しにたく、ない、から」
「それもそうね」
カリファはナイフとフォークを手に取った。
カクも実の皮を剥こうとする。
そのとき……
「待てお前ら!」
ジャブラが必死の形相で止めに入った。
「やめとけって、いいことないぞ!? クソみたいな味するぞ! クソ!」
フクロウとクマドリが笑う。
「チャパパ、ジャブラはカクたちにパワーアップされたくないのだ」
「ぁそぉ~ぅだぁ、ぁ妬みぃ嫉みは、男の名にぃ、ぁ傷つくぜ~ぃ?」
茶化されても、ジャブラはやめない。
「いやいやよ~く考えろ? 上手く売りゃぁ、何億かの金になる! だが、その一口が一生の問題になるんだぞ!?」
そこに、トドメを刺したのはルッチだった。
「食った方が得だぞ? 身につく能力は聞いた通り。例えカナヅチになっても、俺たちの体技の前には関係ないからな」
その言葉で、カクは実の皮を剥き、カリファは実を切り分けた。
「面白そうじゃ、キリン人間」
「体じゅう石鹸でツルツルスベスベなんて、夢みたいじゃない」
ついに2人は、それぞれの実を口に入れた。
「……」
「……」
"モクモク……"
メンバーの視線を受けながら、無表情のまま完食する。
そして……
「「うぐっ」」
口元を押さえて呻き始めた。
「なっ、どうした!?」
「よよいっ、ぁ御体にぃ、異変はぁ、あぁるかぁい?」
「チャパパァ……」
ルッチだけは、1人でニヤニヤしている。
数十秒後。
2人は同時に顔を上げた。
「「マズイ」」
「って早く言えよ!」
「なんて酷い味っ」
「それは聞いたチャパパ~」
「食えたモンではないのう……」
「よよいっ、ぁ全部食ってからぁ、言うんじゃねぇよぉ」
「んで、どうなんだ!? 何かやってみろ!」
「……って言われても、特に変わった気はしないけど……」
「わしもじゃ……どうするモンなんじゃ?」
ルッチがグラスに残った酒を飲み干しつつ、言った。
「まぁそう焦るな。すぐに体が教えてくれるさ。今のうちに、自分の能力を実践で使えるよう考えておくんだな。……きっと、すぐに試す機会が来る」
ニヤリと笑うルッチの耳には、ずっと前から聞こえていた。
この島に響き渡る喧騒が。
豹人間として、耳はいいのだ。
ルッチはティオを見た。
(焦りのないあの顔、落ち着いた心音と呼吸……おそらく、麦わら一味は誰一人捕えられていない)