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2. 麦わらの一味
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しばらくして。
「……ん」
「お、目ぇ覚めたか!」
ティオが目を開くと、ぼやける視界に、満面の笑みと麦わら帽子が映った。
「!」
目の前にいるのがモンキー・D・ルフィだと気づいて、ティオは跳ね起きる。
「……っ」
起きた瞬間、左腕に痛みが走った。
痛む場所を見れば、丁寧に包帯が巻かれている。
「お~い! チビが起きたぞ~!」
ルフィが手を振りながら船室の方へ叫んだ。
すると、船室や船尾の方から続々と仲間たちが現れる。
「……」
ティオは無表情を保って立ち上がりながらも、背筋が冷えるのを感じていた。
何が起きたのか分からない。
自分は麦わら一味の船の中にいるようだ。
まさか捕まってしまったのか……?
しかし見聞色の覇気で探ってみれば、ルフィから伝わる感情は、敵意ではなく、興味。
「目が覚めて良かった! 腕は痛むか? フラフラしねぇか?」
チョッパーがティオを下から覗き込む。
「……」
「ん? どしたんだ?」
黙ったままじっと見てくるティオに、チョッパーは首を傾げた。
ティオも同じように首を傾げる。
「……たぬき?」
「なっ、たぬきじゃねぇ! トナカイだ! ……うわわっ!」
ティオは無表情のまま、チョッパーの両頬を両手で挟み込み、グリグリと
「……ふしぎせいぶつ」
「だ、だからトナカイだって……」
「ふふっ」
微笑ましいじゃれ合いに笑ったナミは、少し[#ruby=屈#かが#]んで、ティオと目線を合わせた。
「こんにちは。私はナミっていうの。アラバスタで会ってるんだけど、覚えてるかしら」
ティオはナミをじっと見つめた。
そして両手を伸ばし、ビビにしたように、ナミの両頬を両手で挟む。
「え……な、なに?」
「……」
ナミは自分を見つめるティオを、ただ不思議そうに見つめ返す。
その間、ティオの方には、ナミの記憶と思考が伝わっていた。
もちろん見聞色の覇気によるものだ。
「……」
自分がどういう経緯で現状にあるのかは分かった。
狙撃されて船に墜落した自分を、チョッパーというらしいトナカイが治療する様子を、ナミが見ている。
……という映像をナミの記憶から読み取った。
敵意は全く感じられない。
同時に、ナミの幼少期の記憶も覗いてしまったようで、赤い髪の女性と蜜柑畑、青い髪の少女が見えた。
……そして、きっとナミ自身は覚えていない、生まれた頃の記憶も。
どうやら捕まえられたわけではないと分かると、ティオはそれ以上ナミの記憶に踏み込まぬよう、手を離した。
「どうして、たすけ、た? かいへい、て、しってる、でしょ?」
単刀直入に疑問点を尋ねる。
ティオの能力をもってすれば、思考を読んでしまえば分かることだが、無断で思考を読むことは失礼だとクザンから教え込まれているため、緊急時や必要性が高いとき以外は、やらないと決めている。
ナミはウィンクして答えた。
「理由なんてないわ。目の前で怪我してる人がいたら、助けるのが普通でしょ?」
「てき、も?」
「んー……でもあなた、この前アラバスタで助けてくれたじゃない? その恩もあるから、単純には見捨てられなかったのよ」
「……」
覇気で読み取る限り、嘘は言っていない。
本心だ。
ティオは不思議な心地でナミを見上げた。
……稀にこういう海賊に遭うが、毎度、なぜ海賊の称号を掲げるのか分からない。
「そういや、名前は何ていうんだい?」
思考を割るように、声が降ってきた。
ティオはタバコをくわえた男を見上げる。
「てぃお」
「へぇ~ティオちゃんか。俺はサンジ~っ、よろしくねぇ~?」
サンジの目がハートに変わる。
さすがはストライクゾーンの広い男。
見た目10歳ほどの少女の、いったい何に燃え上がれるというのだろうか。
「ティオは何で飛んでたんだ? 次の仕事にでも行くとこだったのか?」
声のした方を振り向けば、長鼻の男がいる。
アラバスタで見たなぁと思った。
「(コクン)」
頷きながら、ティオは急速に頭を働かせていた。
まさか麦わらの一味を捕まえるために来ているだなんて、口が裂けても言えない。
腕がこの状態では、飛んで逃げることもできないから、今ここで麦わらの一味と敵対してしまったら終わりだ。
それなら、仕事に行く途中で怪我をして、偶然この船の上に落ちたことにすればいい。
そして何とかこの船に置かせてもらえれば、より密な情報が手に入って万々歳……
……そんなことを瞬時に考えて、無表情のまま口を開く。
「しごと、いく、とちゅう、だった。そしたら、けがして、おちたとこ、ぐうぜん、ここだった」
「マジか! そりゃお前ラッキーすぎるぜ!」
「(コクン)」
「よかったなぁ! 一生分の運を使い果たしたかもしんねぇけど!」
ひらめきの嘘は、どうやら信じてもらえたようだ。
「んで? コイツどうすんだ?」
ゾロがティオを指して、誰にということもなく尋ねると、ナミが顎に手を当てた。
「そうねぇ……とりあえず次の島に行けば海兵の1人や2人いるだろうから、そこに預ければ「いない」
「え?」
「つぎのしま、じゃや、かいぐん、いない」
「そうなの?」
「あら、よく知ってるのね」
「!」
聞こえた声に、ティオは肩を揺らし、恐る恐る後ろを向いた。
「……にこ・ろびん、どうして……」
目の前のことに気を取られて、覇気で周囲全体を知る余裕がなく、ロビンの存在に気づかなかった。
それより、クロコダイルもバロックワークスの社員も捕まったはずなのに、どうしてここにいるのか。
ナミが素っ頓狂な顔をして教えてくれた。
「あ、そうか。アラバスタにいたときは、私たち敵同士だったもんね……率直に言うとね、ロビンは私たちの仲間になったの」
ティオは無表情のまま、ロビンを見上げた。
これは思わぬ収穫だ……
今のところ、ロビンからも敵意は伝わってこない。
「ふふ、そういうことだから、よろしくね? ……それで、ジャヤについてまだ知ってることがあったら、教えてくれるかしら?」
ロビンの笑みからは、いろんな感情が伝わってくる。
複雑すぎて、ティオにはロビンの本心が分からなかった。
波風立てたくないティオは、とりあえず素直に答えることにした。
「じゃや、かいぞく、たくさん、あつまる、しま。かいぐん、いない。むほうちたい。ちあん、さいあく」
「うっそ~!」
青ざめるナミをよそに、ゾロが船の前方を指さす。
「今さら進路変更できねぇぞ」
指さす先には、何やら賑わいを見せる島が見えていた。
「じゃや、の、なか、いちばん、おおきい、まち、もっくたうん」
ティオが街の名を口にすると、ルフィがメリーの頭の上に飛び乗る。
「へぇ~モックタウンってのか~! うは~! いいなぁ! いい感じの街だぁ!」
「はぁ……人の気も知らないで」
「ぼやいても始まらないよナミさん」
サンジがナミの肩に手を置く。
「ナミすわんとロビンちゅわんとティオちゅわんは俺が守ってあげるからねぇっ!」
「はいはい」
目からハートを飛び出させるサンジを適当にあしらって、ナミはティオの方を向いた。
「ティオ」
「?」
「腕が治れば自力で飛んで帰れるわよね?」
「(コクン)」
「それじゃ、腕が治るまでこの船に置いてあげるわ」
「……いいの?」
ティオは不思議そうな目で見上げた。
だが心の中では、作戦が上手くいってガッツポーズだ。
そこへ、ウソップがこっそり耳打ちしてくる。
「気ィつけろよティオ。こいつはタダで他人に親切なんかしねぇからな?」
「?」
「船に置いてあげる代わりにぃ、海軍があたしたちを追ってこないように話を通してくれな~い?」
「……ほらな?」
ティオは慎重に返答を選んだ。
「……どりょく、する……」
「よし! というわけで、ルフィ! しばらくティオを船に乗せるけど、いいわね?」
そう訊くと、ルフィは1秒だけ振り返って答えた。
「ん、いいんじゃねぇか?」
そしてすぐに前を向く。
「それより上陸だぁ! 急げメリー!」
ルフィにとっては、ティオ云々より、上陸と冒険の方が大事なのだ。
こうして、ティオはしばらくメリー号に滞在することになった。