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19. CP9
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やがて本降りになった雨は、唯一の手掛かりである匂いを消し、強まる風に吹かれて捜索隊の体力を奪っていった。
ナミとチョッパーは大工たちと共に、一ヶ所に集まった。
一度情報交換するためだ。
「ルフィとゾロは見つかったか!? ナミ!」
「ううん。……ったく、どこにいるのよ!」
膝に手をつき息を整えるナミ。
そのナミに……
「ねぇねぇ海賊ねーちゃん! 見て見て~! あそこに何かいるよ~?」
元気な子供の声が聞こえた。
「えっ、チムニー? 何でここに……」
「おや、海賊娘じゃないかい」
「ココロさんまで……って、ちょっと何コレ!」
ナミはウォーターセブンの裏街を見下ろして固まった。
「なに……この異常な引き……」
裏街はすっかり干上がっていた。
それどころか、数百メートル先の海まで干上がって、海底が見えている。
この分では返ってくる波も相当高いはず……
「だから海賊ねーちゃん! あそこだよ、ホラあれ! 何かいるでしょ?」
「あれってなn―――」
チムニーが指さす方を見て、ナミは再び固まった。
裏街にそびえ立つ二軒の建物。
その合間に……
「ルフィ……」
見慣れた姿が挟まっていた。
自力で出られないのか、腕がバタバタともがいている。
ココロが目を細める。
「ありゃぁ……オメェんとこの海賊王じゃないのかい? 海賊娘」
「……ぁんの馬鹿っ」
ナミは眉間にしわを寄せ、走り出した。
ココロが慌てて叫ぶ。
「おい海賊娘! どこに行くんだい! 裏街へ降りちゃいけないよ! 波に呑まれたいのかい!」
しかしナミは、裏街の住宅街の屋根を辿り、ひたすらルフィの元へ走っていく。
……その頃、チョッパーもまた、裏街を見下ろしていた。
「イソギンチャクだ……」
視線の先には、建物の煙突。
そこに何かが刺さっている。
「イソギンチャク……何で煙突からイソギンチャク? ……イソギンチャク……イソギ―――」
そこでチョッパーは気づいた。
イソギンチャクじゃない。
「なっ……ゾロォ!?」
イソギンチャクと思ったものは、ゾロの脚と刀だった。
何故か、ゾロが頭から煙突に刺さっているのだ。
チョッパーは裏街へ飛び出す。
「おいコラ待て! トナカイ!」
「何なんだ麦わら一味は揃いも揃って……」
船大工たちが見守る中、ルフィの元へ辿り着いたナミは、拳を震わせて叫んだ。
「ルフィィッ! アンタっ、そこで何やってんのよ!」
壁と壁の間で身をよじっていたルフィは、背後から聞こえるナミの声に応えた。
「お〜、ナミ! そこにいるのか! いや~聞いてくれよ! しかしあのハトの奴に飛ばされてよぉ、これがうめーことココにハマっちまっ「ふざけてんじゃないわよ!」
ナミの目から大粒の涙が流れ落ちる。
尋常でない涙声に、ルフィは固まった。
「こんな大事な時に……アンタがぐずぐずしてる間に! ロビンが連れてかれちゃったじゃない!」
「……」
「ロビンはアタシたちのためにっ―――
死ぬつもりなのよ!」
ナミの叫びに呼応して風が強まった。
「自分一人犠牲になってロビンは! アタシたちを政府の攻撃から守ってくれたのよ!」
「……」
「連行されれば殺されることも分かってるのに!」
「……じゃあ、やっぱりロビンは……ウソ、ついてたのか……」
「そうよ……っ」
ルフィはしばし黙り、長く息を吐く。
そして呟いた。
「よかった……」
……近づいてくる高波。
それを見ながら、ルフィはナミに言った。
「安心しろ」
「?」
「ロビンは死なせねぇ!」
その頃、チョッパーはゾロを引っこ抜こうとしていた。
「ん~~っ抜けない!」
「いででででっ、千切れる! おいっ、もっと慎重に引っ張れ!」
「そんなの無理だよ! どうやって入ったんだゾロ!」
「知るか!」
「あぁもうどうしよう! すぐそこまで波が来てるのにっ」
「どうしようったってどうしようも……ん? ちょっと待て。チョッパーお前、鬼徹持ってんじゃねぇか?」
「え、あぁ、刀? うん、持ってるよ。 何で分かったんだ?」
「そいつだけは分かるんだ。……妖刀だからな。チョッパー持っててくれたのか、ありがとう」
「いや、それはいいけど……」
「それを手に持たせろ、急げ!」
煙突の隙間から、ゾロの右手がヒラヒラ動いている。
チョッパーは背負っていた鬼徹を、その手に握らせた。
「離れてろ」
「う、うん、分かった」
チョッパーの気配が離れたのを感じると、ゾロは手首だけで刀を振った。
「一刀流……三十六
"シュウィンッ……ズガァンッ!"
煙突が縦に真っ二つに割れた。
チョッパーは目を見開いていたが、目の前に迫る大波に冷静さを取り戻し、ランブルボールを口に入れる。
そしてジャンピング・ポイントに変形し飛び出した。
「ゾロ、掴まって!」
チョッパーはゾロを連れて、屋根の上を跳んでいった。
同じ頃、ルフィも建物の合間から抜け出そうともがいていた。
「んぬぅぅっ」
両側の建物を押すように手を突っ張る。
「ぅぉおりゃあああっ!!」
"ピシッ…ピシッ……ガゴンッ!"
およそ人とは思えない腕力。
建物にはヒビが入り、やがて大きな音を立てて崩れた。
「ルフィ……」
涙を流すナミの体にルフィの腕が巻きつく。
「行くぞっ、ナミ!」
ルフィはもう一方の腕を別の建物へ伸ばし、ナミと一緒に空中へ飛び上がった。
そのまま屋根を伝い、波が来ない大橋まで登って来る。
そこへちょうど、ゾロとチョッパーも波から逃げて来た。
「はっ、はぁっ、はぁっ、何とかっ、間に合った……」
「なんて強烈な高潮なの……」
命からがら逃げてきて、息を切らせる4人の耳に、大工たちの声が響く。
「お~いお前ら~!」
「早くこっちへ逃げて来ーい!」
「次の波が来るぞ~!」
4人が顔を上げると、確かに次の大波が迫っていた。
「おい! 早く来いってば!」
「呑まれちまうぞ!」
4人は逃げようとした。
……しかし。
"ドパァ~ンッ!"
間に合わず、全員、波に呑まれた。
「うそ……だろ……?」
「あと一息だったってのに……」
大工たちは唖然とする。
さすがにあの大波に呑み込まれれば、何者も助からない。
「……ん? おい見ろ、あれ!」
大工の1人が、大橋の手前を指さした。
何だ何だと目を向ければ、大波に向かって四本のロープが伸びている。
その袂を握っているのは……
「「「パウリ―さん!」」」
パウリ―は崩れかけた大橋の上で、懸命にロープを引っ張っていた。
「くそっ……重てぇっ……」
4人分の重みと、それを沖へ引っ張ろうとする波の力が両腕にのしかかる。
パウリ―は手に血が滲むのも構わず、残る力を全て振り絞ってロープを引っ張った。
「うぉぉぁぁあっ!!」
"ザパァッ"
波の中から4人が助け出された。
「ぶはっ」
「げほっ、げほっ」
咳き込む4人だが、立ち止まっている暇はない。
パウリーが叫ぶ。
「まだだ! 走れ!」
ルフィとゾロがいち早く反応し、ナミとチョッパーを抱えて走り出した。
そのすぐ後ろを、波が追ってくる。
波に呑まれて、大橋は見るも無残に崩れていった。
「急げ~! 麦わら~!」
「パウリ―さ~ん!」
4人とパウリ―は、なんとか波から逃げきって、大工たちの元へたどり着いた。
「はぁっ、はぁっ、助か、った……」
地面に大の字に伸びるルフィと、その近くに座り込むナミ。
パウリ―も近場に座り込み、葉巻に火を灯した。
「……ったく、無茶しやがって」
「はぁ…はぁ……ありがとう、ロープの奴」
「あれがアクアラグナなの? まだ震えが止まらないわ……」
「あんなデカイのが毎年来てたら、この島はとっくに無くなってる。今年は異常だ」
その頃ゾロは、顔にひっついたチョッパーを必死に剥がしていた。
「~~っ! ~~っ! ~~っぶは! 窒息させる気か!」
「ぁ……アクア、ラグナ……怖ぇぇ」
「……ンの野郎、しがみついたまま気絶しやがって」
そこに、ココロが笑いながらやってきた。
「ホントに呆れたねオメェら。よく助かったもんらよ」
「あっ、怪獣のバァさん! この島に来てたのか!」
「当たり前ら。あんな海の真ん中にいたら、溺れて死んじまうわね。んがががが」
「そういやゾロ、何でお前まで波に追われてたんだ? 下の街にいたのか?」
「あ? い、いや、別に……」
視線を逸らすゾロの代わりに、チョッパーが正直に答える。
「煙突に刺さってたんだ。なぁゾロ?」
「……」
「あれ……? ひぐわぁっ」
ゾロは表情を暗転させ、チョッパーの首を絞めた。
「煙突に刺さってたぁ~? はっはっはっ! ゾロはマヌケだなぁ!」
「アンタもでしょーがアホ船長! どっちも大マヌケよ!」
"ゴチンッ"
「ずびばぜん……。んじゃぁえっと? サンジとウs……サンジは?」
「あぁ、そうだったわ。話すことが沢山あるの。ゾロもいつまでもチョッパーの首絞めてないで、聞いて」
「……」
ゾロは不本意そうにチョッパーの首から手を離した。
「ぅげぇっ、げほっ、げほっ」
本気で絞めたわけではないので、大丈夫そうだ。
……それからナミは、アイスバーグから聞いた話と、駅で見つかったサンジの手紙の内容を語って聞かせた。
話を聞き終わり、ゾロがため息混じりに確認する。
「……つまり、ロビンは俺たちのために犠牲になったってことか?」
「えぇ、そうよ」
「コックもウソップも海列車に同乗、ティオは既に奴らの手の内、か。……ってことらしいが、どうする? キャプテン」
ルフィは、海列車が向かったであろう方向、水平線のその先を見つめていた。
「何も考えることねぇじゃねぇか」
そう言って、右の拳を左の手の平と打ち合わせる。
「すぐに船出して海列車を追いかけよう! ロビンを助けて、そんで、ティオを取り返しに行くんだ!」
ブレのない、芯の通った声色。
ゾロはフっと笑って刀の鍔を弾いた。
「それしかねぇな」
ナミとチョッパーも、覚悟を決めた瞳で頷き合う。
ルフィが荒れ狂う空と海に向かって、宣言するように言った。
「行くぞ、ロビンとティオを取り返しに!」
→ 20. エニエス・ロビー
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