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19. CP9
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「全員連れ出したか!?」
「もう中には入れねぇぞ! 各班ごとに確認しろ!」
燃えさかるガレーラ・カンパニー。
船大工たちは、消火作業と怪我人の救出に走り回っていた。
「おい、アイスバーグさんはどこだ!?」
「まさか、まだ中にいるんじゃ……」
「無事に決まってる! 職長3人がついてんだ! 取り残されるわけがねぇ!」
「おい! みんな来てみろ! 麦わら一味の女がいるぞ!」
1人の声に呼ばれ、大工たちが続々と集まった。
「……コイツ、麦わら一味の女だよな?」
「あぁ。船長の麦わらと一緒にいた奴だ」
ルフィと一緒にいた女、それは他でもなく、ナミだ。
「気を失ってるぞ」
「大方、火に追われて窓から飛び降りたんだろうよ」
「まったく、こんな大火事起こしてくれやがって」
「どうする?」
「この女に仲間の居場所を吐かせる。そして全員、海軍に引き渡してやるんだ!」
「「「おう!」」」
そうして、船大工たちがナミを起こそうとしたとき……
"ガシャァンッ!"
突然、窓ガラスが割れた。
大工たちは何ごとかと振り返る。
炎の中から、ゾロの刀をくわえたチョッパーが、背中に人間を2人乗せて飛び出してきた。
「な、なんだ?」
「コイツ、麦わらンとこのトナカイだ!」
「アイスバーグさん! パウリ―さん!」
"ドサッ"
力尽きたチョッパーはその場に倒れた。
「おいおい酷い火傷だぞ!」
「早く手当を!」
「このトナカイはどうする!」
「そいつもだ! 命の恩人だぞ!」
「おーい、手を貸してくれ!」
大工たちは、アイスバーグ、パウリ―、チョッパーの手当てを急いだ。
しばらくすると、アイスバーグが真っ先に目を覚ました。
「……俺ァ、生きてんのか」
「アイスバーグさん、目が覚めたんですね! おーいお前ら! アイスバーグさんの意識が戻ったぞ!」
「何!?」
「ホントか!?」
「「「よっしゃああっ!」」」
「おい、こっちもだ! 女が目を覚ました!」
ナミが傷だらけの身を起こす。
「……ん……。……外、かしら……」
大工たちはざわつき始めた。
「どうする? すぐに麦わらの居場所を吐かせるか?」
「いや、けど、酷い怪我だぜ?」
「そうは言っても女だしなぁ……」
「けどよ、海賊だぜ?」
「えっ、あ、ちょっ、アイスバーグさん!? まだ起きたらダメですよ!」
アイスバーグは構わず、血まみれの身でナミの元へ歩み寄る。
そして、周囲の大工たちに言った。
「お前ら、俺たちから少し離れてろ。この女と2人で話をしたい」
アイスバーグの命令とあらば仕方ない。
大工たちは不満そうな顔をしながらも、2人の元から離れ、消火作業に戻った。
「……」
「……」
アイスバーグとナミの間には、しばらく沈黙が降りた。
「……ンマー、まずは、悪かった。お前たちに妙な濡れ衣を着せた。誤解は後で解いておく。……話ってのは、ニコ・ロビンのことだ」
「何か知ってるの?」
「この街へ来て、あの女の様子は変わったのか?」
「えぇ、急に。街へ出たあと急にいなくなって、今朝にはあなたの暗殺未遂の犯人になってた。……仲間がやっとロビンを探し当てたと思ったら……もう、アタシたちのところへは戻らないって言われたみたいで……。何が何だか分からなくて、アタシたちは今夜、もう一度ロビンに理由を訊くためにここに来たの」
それで理由を訊いてみれば、ロビンは言っていた。
今までの行動の理由は、自分の願いを叶えるためだと。
そしてその願いは、麦わら一味にいては叶えられないのだと……
「アタシたちと一緒じゃ叶えられない願いって、一体何よっ……」
ナミは唇を噛んだ。
それを見据え、アイスバーグは言う。
「俺の知ってることを話そう」
「……えぇ、お願い」
「恐らく、お前らが最初にニコ・ロビンを見失ったときだろうが、そのときには既に、政府の作戦は始まっていたんだ。あの女の行動に、もちろん理由はある。……だが、それを話す前に、俺とあの女が、世界を滅ぼす兵器を呼び起こす術を持っていると、覚悟しておいてくれ」
「世界を滅ぼす、ですって……?」
「そうだ」
―――遡ること数時間前。
アイスバーグがCP9にニセの設計図を掴ませたとき……
『作戦に障害が発生した。アイスバーグはまだ撃つな』
本来、ロビンがアイスバーグを殺す計画だったが、ニセの設計図を掴まされたCP9は、殺す前にもう一度アイスバーグに接触しなければならなくなった。
アイスバーグの部屋にCP9が集合するまでの数分間、ロビンはアイスバーグと話をした。
「……分かったか、ニコ・ロビン。お前らが狙った設計図はニセ物だ。俺は、たとえ殺されても、設計図を政府に渡しやしねぇ。なのに一方で、お前がポーネグリフを嗅ぎ回り、政府にも力を貸すってんなら、俺はお前をここで止めなきゃならねぇっ」
「私は別に、兵器復活のためにポーネグリフを求めているわけじゃないわ。ただ、歴史が知りたいだけよ」
「そんな言い分に意味はねぇ!」
「!」
「人を傷つける"モノ"に、必ずしも悪意があるとは限らない。歴史を知りたいというただの興味が、世界を滅ぼす結果を招くなら、今お前はここで死ぬべきだニコ・ロビン! オハラの悪魔たちの運命を目の当たりにして、まだ歴史を追いかけてぇのか!」
「あなたがオハラの何を知ってるのよ!」
「……」
「世界政府の手でっ……私の人生がどれほど狂わされたのかも知らないでっ……」
「……それほど嫌う政府に、なぜ加担する!」
「……全てを捨てても、叶えたい願いがあるからよ。……この街で、CP9が突きつけてきた条件は2つ。1つは、暗殺の罪を麦わら一味に着せること。もう1つは、その後の政府に私の身を預け、従うこと」
「そうなれば、お前の命もないぞ。20年逃げ延びたお前が、何故そんな条件を呑む」
「CP9は麦わら一味に対し、バスターコールを発動させる権限を、たった一度だけ持っていた」
「バスターコール?」
「海軍本部の中将5人と、軍艦10隻を一点に集中させる緊急命令。その国家級戦力を向けられたら、後には、何も残らない。……本来それは、海軍本部の大将3人と、海軍トップの元帥にしか与えられていない権限。だけど今回CP9は、大将青キジを通して、一度だけそれを発動できる権限を与えられていた。条件を呑まなければ、私たちにバスターコールがかかる。……青キジという名を聞いたときに観念したわ。私が今まで20年逃げ延びられたのは、守るものが無かったから。人を裏切り、盾にして、自分だけを守ってきた。……けれど今の私には、それは出来ない。一度捨てた命も、途絶えた夢も、みんな掬い上げてくれる。こんな私を信じてくれる。……そんな、仲間が出来た」
「じゃあまさか、お前の願いってのはっ」
ロビンは真剣な表情でアイスバーグを見据えた。
「私を除く、麦わらの一味7人が、無事にこの島を出港すること」
「そのためなら、兵器を呼び起こし、世界がどうなっても構わねぇってのか!!」
「えぇ、構わない」
「馬鹿な考えはやめろ!」
「好きに喚いていればいいわ。どうせ、あなたにはどうすることも出来ない」
「……俺が知ってるのは、ここまでだ」
ガレーラ・カンパニーは、未だに燃え続けている。
ナミは目を見開いたまま固まっていた。
「……事もあろうに、あの女は世界中の人間よりも、お前たち7人の命を選んだ。俺の持っていた設計図も奪われそうな今、俺にあの女を責める権利はねぇが……」
「……そう、だったのね」
"ドサ……ッ"
ナミは突然、その場に倒れ込んだ。
アイスバーグが慌てて駆け寄る。
「おい、どうした!」
傷が酷くて限界が来たのか?
そう思っていると、予想外にナミは安堵のため息をついた。
「はぁ……よかった。ロビンはアタシたちを裏切ったわけじゃなかったんだ」
「お前……」
「きっとロビンは、ティオがアイツらに連れてかれたことを知らないのね……そうと決まれば、早くみんなを集めて知らせなくちゃ! ありがとう! アイスバーグさん!」
ナミは勢いよく立ち上がり、チョッパーの方へ走り出す。
「ま、待て! 麦わらたちもやられちまって、今さら何をしようってんだ!」
「今さらですって? 今からよ! ルフィたちなら大丈夫、あのくらいじゃやられない! これからロビンとティオを取り返すの! ……迷えば誰だって弱くなるもの。助けていいんだと分かったときのアイツらの強さに、限度なんて無いんだから!」
自信満々にそう言って、ナミはチョッパーの元に膝をついた。
「チョッパー! 起きて! みんなを探すのよ! ほらチョッパー!」
"ベシッ、ベシッ"
ナミは思いっきりチョッパーを叩いた。
周囲の大工たちが慌てふためく。
「おいおい姉ちゃん!」
「そのトナカイすげぇ重傷で……」
「……ん……うっ」
「「「って、起きたー!?」」」
さすがは麦わら一味。
復活が早い。
……ナミはチョッパーに、アイスバーグから聞いたことを話した。
途端、チョッパーは目を輝かせる。
「ほ、ホントか! ロビンは俺たちのこと嫌いになったわけじゃねぇんだな!?」
「そうよ! 急いでルフィとゾロ探して、助けに行きましょう!」
「このトナカイ、タヌキになったぞ……」
「タヌキだな……」
「タヌキだ……」
「ところでナミ、どこ探せばいいんだ?」
「え、だから、それが分からないから探すのよ?」
「あ、そっか! よ〜し、俺、頑張るぞ!」
チョッパーは人型へと姿を変えた。
「うわああっ、今度はゴリラになったぁ!」
「何なんだあのペットはぁぁっ!」
そこへ、アイスバーグが歩み寄って来る。
「まぁ待てお前ら」
「「?」」
「ニコ・ロビンを追うのは勝手だが、今夜11時にエニエス・ロビー行きの海列車が出る。ンマー、恐らくだが、アイツらはそれに乗る可能性が高い。それを最終便に、海列車は一時運航停止となる。もうすぐアクアラグナが来るからな」
「えっ、じゃあ……」
「そうだ。その最終便を逃すと、列車も船も出せなくなる」
「今何時!?」
「10時半だ」
「うそっ、あと30分しかないじゃない! 何とかならないの!? 海列車ちょっと止めるとか!」
「ンマー、目的地エニエス・ロビーってのは政府所有の司法の島だ。機関士も乗客も全てが政府の人間。俺が言っても無駄だ」
「そんなっ……じ、じゃあ何とか駅に行って、アタシが直接ロビンを説得するしか……」
ある程度の算段がつくと、ナミはチョッパーを振り返った。
「チョッパー! ルフィとゾロが飛んでった方角を教えるから、そっちを探して! 見つかったら、すぐに駅に来るよう伝えるのよ!」
「よしっ、分かった!」
2人の話を、少し離れたところで聞いていたパウリ―。
どうやら、少し前から意識は戻っていたようだ。
パウリ―は周囲の大工たちに呼びかける。
「おい、お前ら」
「パウリ―さん!」
「意識が戻ったんですね!」
「そのお嬢さんたちに、手ぇ貸してさしあげろ」
「「「!?」」」
「なっ、何言ってんすかパウリ―さん!」
「コイツら、アイスバーグさんを殺そうとした犯人じゃないっすか!」
「暗殺犯は麦わらの一味じゃねぇ! コイツらは無実だ!」
「何だって……?」
「マジかよ……」
「俺たちは本当の犯人にノせられて、麦わらたちに濡れ衣を着せちまったんだ……。それでも麦わらたちは、仮面の犯人たちと戦ってくれた。俺とアイスバーグさんの命が今あるのは、麦わら一味のおかげなんだよ!」
「確かに……」
「トナカイが連れ出してくれたんだしな……」
「分かったな、お前ら。麦わらと海賊狩りを探せ!」
「「「はい!!」」」
大工たちは班ごとに動き出した。
それを見届け、パウリ―はナミの方を向く。
「おい、ハレンチ女」
「んなっ、その呼び方やめてよ!」
「駅へ行くんだろ? 連れてってやる」
「え? あぁ、ありがと……」