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19. CP9
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「うそ、でしょ……」
「ロビンが、行っちまった……」
動揺を隠せないナミとチョッパー。
ルフィを捕えたままのルッチが、ため息混じりに呟く。
「まったく、何故この程度の奴らの元へ堕ちたのか、元伝承者の行動は理解に苦しむな」
ナミが眉を顰めた。
「……元…伝承者?」
「何だ、そんなことも知らずに、あの子供を仲間に引き入れたのか」
「子供ってティオのこと? 伝承者って何よ。海軍の諜報員なんじゃないの?」
「海軍の諜報員か……フン、笑わせる」
「ちょっと、何がおかしいのよ。……っていうかその口振り、ティオを攫ったのもアンタたちね!?」
「どうせ死にゆくお前らには話しても問題ないか。火の手が上がるまで僅かながら時間もあることだしな。冥土の土産に聞いて行け」
「人を勝手に殺さないでくれる!?」
「あの子供は厳密には諜報員ではない。世界政府が定めた、特殊記録伝承者だ」
「特殊記録…伝承者……?」
「略して伝承者と呼ばれるその役職は、政府や海軍の上層部のみが知る暗躍機関」
「暗躍……それって、アンタたちと同じような裏の存在ってこと?」
「まさか。俺たちCP9よりもさらに上だ」
「!」
ルッチは掴んでいたルフィを投げ捨てた。
"ドサッ"
「うがっ」
そして話を再開する。
「ある秘密を、秘密のまま次の世代へ伝えていきたいと思ったとき、お前ならどうする」
「秘密……?」
「その秘密が、文書として残すことすら危険な情報だったとしたら?」
「そしたら口伝しか……って、まさかっ」
「そのまさかだ。伝承者とは、
「それじゃ、ティオの頭の中にはっ……」
「過去数百年に渡る世界の歴史や、政府の機密情報が詰まっている」
「でもティオは、自分は諜報員だって……」
「大将青キジの提案でな。記憶力・能力共に優れていても、所詮は子供。それも、幼少期の記憶が無いために、実年齢は14でも、中身は実質4歳児だ」
「記憶がない!?」
「そんなガキには、世界を飛び回り情報を集める伝承者の職務は難しいだろう? よって、しばらく海軍の諜報員として経験を積ませることにしたそうだ」
ナミは息を呑んだ。
……なんて、重たい役目。
要するに政府の過去を全て背負い、政府のために生きて死ぬことを強制されていたということだ。
あんなに細くて小さな背中には、重すぎる。
『……いきたい、よ……でも、いけ、ないっ……みんな、きけんなめ、あわせたくないっ』
海軍要塞ナバロンで、正式に仲間として勧誘したとき、ティオは涙を流してそう言った。
そのときのビジョンが、ナミの脳裏に鮮明に浮かぶ。
ティオは幼いながらも、膨大な知識から、自分の行動がどれほど政府に影響を及ぼし、どれほど強大な輩が追いかけてくるか分かっていたのだ。
それでも、冒険しようと覚悟を決めた。
……きっと今まで、政府の絶対的な強者たちを思い描き、恐怖を感じていたことだろう。
いくら覚悟したところで、恐怖は拭えるものではないから。
……思い返してみると、今までずっと勘違いしていたのかもしれない。
ティオは頭が良くて常に冷静だ。
何となく、それに応じて頑強な精神を持っていると思い込んでいた。
……けれど、姿はごく普通の小さな女の子で、中身はたった4歳の幼子だったのだ。
本当は、"怖い"なんて誰にも言えず、心の奥底に抱え込んでいたのかもしれない。
いつもゾロにくっついていたのは、無意識に甘えていたからじゃ……
「おい」
ルフィが身を起こし、ルッチの真正面に立った。
「お前ら、ティオまで連れてったのか」
「あぁ。昼のうちにエニエス・ロビーに送り届けられた」
「無事なんだろうな!」
「あぁ。おそらくな」
嫌な予感がしてナミが叫ぶ。
「おそらくってどういうことよ!」
「喚くな、やかましい。……言っただろう、伝承者は政府の機密事項を知る者だと。今まで使っていた道具が言うことを聞かなくなったのなら、新しいものに内容を引継ぎ、古いものは処分するのが普通じゃないか?」
「「!」」
一味全員の目が見開かれる。
それを見て、ルッチはニヤリと笑った。
「とはいえ、今のところは無事だろう」
「!」
「うちの長官があの子供を手元に置きたいと言い出してな。……まぁ、世界一情報量のある辞書に等しいからな」
「辞書ってアンタっ」
「ティオは物じゃないんだぞ!」
「あの子供を送り届けた時間に合わせて、エニエス・ロビーには次期伝承者が記憶の引継ぎに来ていたはずだ。そして、引継ぎが終わったら抹殺せよとの命令も下っていた。……だが、長官は殺させまいと手を打つだろう。上手くやっていれば、あの子供は政府に死んだと思われたまま、長官の元で使われることになるわけだ」
「ルッチ、そろそろ時間よ」
「そうだったな。土産話はここまでだ。お前らはこれから冥土へ旅立つ」
突然、ルッチの姿が変わり始めた。
「なっ、何だ!?」
「ルッチ……お前は一体」
巨大化していく体。
変わっていく皮膚の模様。
やがてルッチは、獣のように喉を鳴らし始めた。
「悪魔の実か!?」
「何の実だよ!」
鋭い捕食者の目が、麦わら一味とパウリ―を見下ろす。
「ネコネコの実、モデル
「レオパルド……豹人間か」
「ヤバイぞっ、肉食のゾオン系は凶暴性も増すんだ!」
「そうだ。ロギア系、ゾオン系、パラミシア系。特異な能力は数々あれど、自らの身体能力が純粋に強化されるのはゾオン系の特性。鍛えれば鍛えるほどに力は増幅する。迫撃において、ゾオン系こそが最強の種だ」
「何よそれ……え、うそ、煙!?」
ナミは辺りを見回し、口元を覆う。
辺りには黒い煙が充満し始めていた。
ルッチがニヤリと笑う。
「どうやら発火装置が作動したようだな。……さて、炎に包まれる前に、お前たちの始末をつけなくてはな」
と、そこへ……
「アイスバーグさーん!」
「職長ー!」
船大工たちの声がしてきた。
カリファがメガネをくいっと上げる。
「ルッチ、大工たちが上がって来るわよ」
「フン、来れやしないさ」
ルッチは、豹化してスピードもパワーも増した脚を大きく振った。
「
"ヒュッ……ガシャァン!"
頑丈な石造りの建物に、横一文字の斬撃が入る。
その威力は凄まじく、天井までもが崩れ始めた。
「危ない! ナミ!」
突然、チョッパーが角でナミを弾き飛ばした。
「きゃあっ!」
いたたたっ、と腰に手を当て身を起こしたナミは、ハッと振り返る。
「チョッパー!!」
自分がさっきまでいた場所は瓦礫に埋もれ、チョッパーの帽子が見えていた。
「くそっ」
このまま部屋にいては危ないと思ったパウリ―は、急いでアイスバーグの元へ駆け寄る。
「……何をする気だ、パウリ―っ」
「決まってるでしょう、あなたをここから連れ出すんですよ!」
パウリ―は傷だらけの体で、懸命にアイスバーグを担いだ。
「無理だお前、その傷でどうやって……」
「その通りよ、およしなさいパウリ―」
2人の目の前に、CP9の4人が並び立つ。
パウリ―は抗いがたい壁を感じながらも、怒りに肩を震わせた。
「気易く俺の名を呼ぶんじゃねぇ! ……チクショォッ……何でお前らなんだよっ……俺は、少なくとも俺は! お前らのこと、仲間だと思ってた!」
血が滲みそうなほど、奥歯を噛み締めるパウリ―。
対してルッチは、冷めた目で言った。
「お前だけだ」
そして腕を振り上げる。
「くそォォォ!」
―――やられる。
そう思ったパウリ―が目を閉じた瞬間……
"バキッ!"
……何かが、ルッチの頬を殴った。
パウリ―が目を見開いてその正体を見れば、ルフィの手が伸びている。
「麦、わら……?」
「ハトの奴ーっ!!」
ルフィは怒りに任せ、ルッチに突っ込んで行った。
「うおおおおおおおおっ!」
……しかし、ルッチは表情を変えずに、今度はルフィに向けて腕を振り上げる。
「
"ザクッ"
嫌な音に、ゾロが青ざめて叫んだ。
「ルフィ!」
本来、ゴムであるはずのルフィに指銃は効かない。
しかし、今、ルッチの指は獣の指。
人間時とは違って鋭い爪がついている。
「……が……ぁ……」
ルッチが繰り出した指は、ルフィの腹部に深々と刺さり、背中まで貫通していた。
"ドサッ"
「がっ……ぁ、がはっ……」
膝をつき傷を押さえるルフィを、ゾロとナミが焦った目で見つめる。
ルッチはそれを横目に見つつ、ルフィの頭を鷲掴みにした。
「ぐぁっ……」
「島の外まで、飛んでいけ」
言って、思いっきり壁に向かって投げる。
"ドゴォッ!"
「うわああぁぁぁっ」
ルフィは壁を突き破り、夜闇の中を遥か彼方まで飛んでいった。
そのまま真っ直ぐ飛べば、間違いなく海へ落ちる―――
「ルフィィィィ!」
絶望的な表情でナミが叫ぶ。
その一瞬の隙にゾロは刀を一本構え、ルッチの方へ踏み込んだ。
「ンのやろっ」
ヒュっと振り下ろされた刀。
ルッチは驚異的な速度で反応した。
「
"ガキンッ"
「いい加減、学べ」
ルッチはごく普通に蹴り技を繰り出した。
通常なら受け止められるであろう蹴りだが、豹の脚力が上乗せされたそれは、容易くゾロを吹き飛ばした。
"ドゴォッ"
「ぐぁっ」
ゾロもまた、ルフィのように壁を突き抜け、夜闇へ飛ばされた。
「ゾロォォォ!」
たった一撃で2人ともやられてしまった事実に、ナミは腰を抜かして座り込んだ。
「残るはお前だけだ」
「……っ」
恐怖で喉がヒュッと鳴る。
鋭い目に捉えられ、ナミは身動き一つできなかった―――。