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19. CP9
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アイスバーグの部屋に踏み込むと同時、響いたのはルフィの声だった。
様子から察するに、隣の部屋から壁を蹴り砕いて入ってきたらしい。
血まみれのパウリーが一緒にいる。
「あっ、ロビン! やっと見つけたぞ!」
「てめっルフィ! 今まで一体どこにいやがったんだ!」
「ロビン! また会えて良かったぞ! 会えなかったらどうしようって、俺、俺ぇっ……」
ひとまずロビンを見つけられて、泣きそうなチョッパー。
その横で、ナミは目の前の光景に困惑していた。
「ちょっと待って……どういう状況よ、コレ」
ベッドの傍に倒れ、血まみれで荒い息を吐くアイスバーグ。
その目前に立つ、ルッチ、カク、カリファ、ブルーノ、ロビン。
床に打ち捨てられた、人数分の仮面……
「やれやれ……」
ため息混じりに、ルッチはパウリーを振り返った。
パウリーは状況が呑み込めず、不規則な呼吸を繰り返す。
「あ、アイスバーグ、さん……これは一体、何がどうなってるんですか!」
「はぁっ……はぁっ……パウリー……何故、逃げなかった」
パウリ―は少し前に、アイスバーグから大事な任務を任されていた。
社長室のデスクの下にある金庫からダミーの設計図を取り出し、敵に奪わせて逃げろと。
……しかし、パウリ―は逃げず、奪いに来た奴らを迎え撃った。
結局、敵わずに殺されそうになったが、そこへ偶然飛び込んで来たルフィのおかげで、九死に一生を得たのだ。
そのときは、敵もまだ仮面を被っていたため誰か分からなかったが、今、敵は目の前で素顔を晒していて……
「何なんですか一体……まるでコイツらが、アイスバーグさんの敵みたいに……」
信じたくない。
「お、おい……カリファ、ルッチ、ブルーノ、カク、オメェら何でそんな格好してんだよ……冗談やめろよオイっ!!」
叫ぶパウリ―の横で、ルフィは自分の記憶を遡っていた。
どこかで見覚えがあるような……
「あ、思い出した! アイツら、お前と一緒にいた船大工の奴らじゃねぇか!」
続いてゾロも思い出す。
「俺もあの四角っ鼻は知ってるぞ」
ナミが顎に手を当てた。
「まさか、暗殺犯が内部にいたってこと?」
誰もが戸惑いを隠せない中、ルッチが顔色も声色も変えずに言う。
「パウリー、実は俺たちは政府の諜報部員だったんだ。謝ったら許してくれるよな? 共に日々、船作りに励んだ仲間だもんな。突然で信じられないなら、アイスバーグの顔でも踏んで見せようか?」
最後の一言で、パウリ―の中で揺れていた感情が、一ヶ所に固まった。
「……ふざけんな、もう十分だ。さっき聞いた牛仮面の声が、お前の声と同じだからな。……チクショォ、テメェ! ちゃんと喋れんじゃねぇかよ!」
鳩を使った腹話術は何だったんだ。
馬鹿にしやがって。
腸の煮えくり返る思いで、パウリ―は仕込みロープに手を掛け、踏み出した。
アイスバーグが必死の形相で声を絞り出す。
「やめろっ……パウリ―!」
ついさっき、ルッチたちの強さを身を持って知ったため、パウリ―ではどうしたって歯が立たないことが分かっているのだ。
しかしパウリーは止まらない。
「パイプ・ヒッチ・ナイヴス!」
懐から、無数のナイフがついたロープが伸びる。
ロープはまっすぐにルッチへ向かった。
しかし……
"シュッ―――"
当たる寸前、ルッチはその場から消えた。
「なっ……」
まるで瞬間移動するように、ルッチは突然パウリ―の目の前に現れる。
「
"ドスッ"
「ぐぁっ」
パウリ―の右肩に、ルッチの人差し指が深々と刺さった。
ナミがそれを見て青ざめる。
「あれはティオと同じ技っ……でも、指が刺さってるとこなんて見たことない……」
「あんな子供と一緒にするな」
「ひっ」
ルッチに横目で睨まれ、ナミはゾロの後ろへ隠れる。
「ぅ……ぐぅっ、何でだっ、テメェっ」
「まだ懲りないのか。無駄に耐えるな、パウリー。俺たちは人間の限界を超える技を体得している。長い訓練を重ね、人体を武器に匹敵させる武術『六式』。これを極めた1人の強度は、百人力に値する」
「くそがっ……」
"ガシッ"
パウリ―はルッチに肩を掴まれた。
「まぁいい。どのみち消す命だ。悲しいが、友よ、せめて痛みも感じないよう一撃で……」
「やめろ!」
叫び声と同時に、ルフィの脚が伸びた。
"ガッ"
ルッチはたやすくルフィの蹴りを手で受け止める。
「んにゃろっ、ゴムゴムの、
「
"ズガガガガガガガガッ!"
ルフィの無数のパンチを受けても、ルッチは1ミリたりとも動かなかった。
「何だ!? 全然効かねぇ!」
「……
"シュッ"
「なっ、消えた……ティオみてぇだ!」
「何度言わせる、アレと比べるな」
「うぉわっ」
ルッチはいつの間にかルフィの目の前に迫っていた。
「
"ドスッ"
ルッチの指がルフィの喉を捉えた。
「ぅ…げぇっ」
「「「ルフィ!」」」
「げほっ、うげっ、げほげほっ」
ルフィは咳き込みながら、床の上でのたうち回る。
「生身なら首に風穴が開いて即死だったな、ゴム人間」
「げほっ……お前、ロープの奴と仲間じゃなかったのか」
「さっきまでな。……だが、もう違う」
その言葉で、ルフィの額に血管が浮き出た。
「じゃあいいよ。とにかく、俺はアイスのおっさんを殺そうとしてる奴をぶっ倒そうって、コイツと約束したんだ!」
それを聞いてカクが尋ねる。
「何故お前がパウリ―に味方するんじゃ?」
「俺もオメェらに用があるからだよ!」
ルフィの視線はルッチやカクを飛び越え、ロビンに向かった。
「おいロビン! 何でお前がこんな奴らと一緒にいるんだ! 出て行きたきゃ、ちゃんと理由を言え!」
「そうよロビン! 聞いてれば、コイツら政府の人間だって言うじゃない!」
ロビンは僅かに眉間にしわを寄せた。
「聞き分けが悪いのね。コックさんと船医さんに、ちゃんとお別れを言ったはずよ。伝えてくれなかったの? 船医さん」
「伝えたよ! けど、俺だって納得できてねぇんだ! 何でだロビン!」
「私の願いを叶えるためよ。あなたたちと一緒にいても、決して叶わない願いを」
「「?」」
「それを成し遂げるためなら、私は、どんな犠牲も厭わない」
……これが、この女の本性か。
そう思いながらゾロが尋ねる。
「それが、平気で仲間を暗殺犯に仕立て上げた根拠か。願いってのは何だ」
「話す必要はないわ」
アイスバーグがロビンに訴える。
「正気の沙汰じゃねぇ。気は確かかニコ・ロビン! お前は、自分が何をやろうとしているのか分かっているのか!」
「あなたにはもう、何も言う権利はないはずよ、黙っていなさい!」
アイスバーグの体にロビンの手が咲き乱れ、関節技を決める。
"グキッ"
「ぐ…ぁっ」
「アイスバーグさん!」
「誰にも、邪魔はさせないわ」
「おいロビン! 何やってんだ!」
「本当にもう敵なのかよ、ロビン!」
「……」
ロビンは表情を変えず、押し黙った。
カツ、と靴音がして、ロビンと麦わら一味の間にルッチが立つ。
「悪いが、その辺にしてもらおうか。我々はこれから重要人物を探さねばならない忙しい身だ。……それに、この屋敷にも君たちにも、もう用は無いからな」
「るっせぇ! どけぇ!」
「カリファ、あとどれくらいだ」
「5分よ」
「「「?」」」
突然時間の話が出て、皆一様に疑問符を浮かべた。
「突然だが、あと5分でこの屋敷は炎に包まれることになっている」
「「「!?」」」
「あらゆる証拠を消すのに、炎は有効な手段だ。焼け死にたくなければ、君たちも早く屋敷を出ることだな。……まぁもちろん、それが出来ればの話だが」
カク、ブルーノ、カリファが並び立つ。
ゾロが臨戦態勢を取りつつルフィに訊いた。
「どうやら俺たちを消す気らしいな。ロビンもあっち側にいたいようだが……アイツの下船には納得してんのか? 船長」
「出来るかァ!!」
「そう吠えるな、麦わら。じきに一階のいくつかの部屋から煙が上がる。まぁ、犯人は海賊なんだ。そんなこともあるだろう」
「お前らっ」
「あたしたちの仮面をかぶって好き放題なんて、趣味悪いわねアンタたち!」
「"海賊"という元々汚れた仮面なのだ。不都合もなかろう」
政府の人間とは思えない言動。
絶対的で冷え切った空気の中、ロビンは纏っていたマントのフードを被った。
「……じゃあ、私は先に行ってるわ」
「あぁ。役目は果たした。ご苦労」
ルッチの承諾を得て、ロビンは窓枠に飛び乗る。
「待てロビン! 俺はまだ認めてねぇぞ!」
「さようなら」
「おい! またどこ行くんだよ! やっと見つけたってのに!」
ルフィはロビン目掛けて駆け出した。
しかし、目の前にブルーノが立ちはだかる。
「どけぇぇ!!」
反射的に蹴りを繰り出した。
「
"ガッ"
「くそっ、何でコイツらの体こんなに
「鍛え上げられた我らの肉体は鉄の強度を持つ。だが、受けるばかりが能じゃない」
「どけって言ってんだろ! ゴムゴムの、ガトリング!」
「
突然、ブルーノに攻撃が一つも当たらなくなった。
「くそっ、紙みてぇにヒラヒラしやがって! デケェのに何で当たんねぇんだ!」
「
「のぁっ、また消えた!」
「爆発的な脚力があればこそ」
「んにゃろっ」
「
「うわっ、今度は飛びやがった!」
そうして、ルフィの意識が空中のブルーノに向いた隙に……
「「
カリファとカクが背後に迫った。
"シュウィンッ……"
「うわぁ!」
鋭い蹴りが繰り出され、ルフィが吹っ飛ぶ。
ゾロは背筋が凍るような気配を感じ、叫んだ。
「ナミ、チョッパー、伏せろ!」
「え?」
「何だ?」
言われるまま、ぎこちなく二人は姿勢を低くする。
次の瞬間……
"ヒュォッ……ズガァンッ!"
「きゃあああ!!」
頭上スレスレを風が吹いたかと思うと、壁が真一文字に切り崩された。
「何よ、今の……壁が蹴りで切れたの?」
「鎌風を起こす脚力があれば可能。それが
言いつつカリファは髪をかき上げた。
その間に、ゾロは刀を構えて飛び出す。
"ガキンッ!"
「船で会うたな、ロロノア」
ゾロの刀を受けたのは、カク。
「お前、船大工じゃなかったんだな。……まさかあん時の船の査定……」
「残念ながら、船の査定は真面目にやった」
「フン……そりゃ残念だ」
"ヒュッ、ガッ、キィンッ"
2人は斬り合いを始めた。
その間に、ロビンは窓の外へ一歩を踏み出そうとする。
ルフィが焦りを隠せず叫んだ。
「行くな、ロビン!」
「……いいえ、お別れよ。二度と会うことはないわ」
「おいルフィ、早くロビンを捕まえろ!」
「うおおおおおおっ!」
駆け出すルフィ。
「ほう、剣を交える
"ドスッ、ドスドスッ"
「……が、ぁっ」
「ゾロォォ!!」
一瞬の隙をやられた。
ゾロは指銃を真正面からくらい、膝をつく。
「行かせはしないぞ、麦わら」
"ガッ"
「んがっ」
あと少しでロビンに手が届こうというところで、ルフィはルッチに顔面を捕まれた。
「こンのっ……」
「早く行け、ニコ・ロビン」
「……」
ロビンは無言で、夜闇に向かい一歩を踏み出した。
「「ロビン!」」
呼ぶ声も虚しく、華奢な後ろ姿は消え、窓からは湿った風が吹き込んでいた。