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19. CP9
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同じ頃、ウォーターセブンでは……
「待ちやがれコノ野郎!」
「絶対逃がすな!」
街中に広がった大工たちが、麦わら一味を追い回していた。
「ゾロ! 何でそんな引き連れてんのよアンタは! ちゃんと撒いてから合流しなさいよ!」
「仕方ねぇだろ! こんな数の大工相手に見つからねぇ方がおかしいんだよ!」
「そこだ! そこの角を右に曲がろう!」
ルフィ、ナミ、ゾロは角を曲がり、細い路地裏に入った。
もちろん大工たちもついてくる。
……しかし。
「あれ、どこいった?」
「確かにこっちに来たよな……」
「どっか隠れてんじゃねぇのか?」
角を曲がった途端、3人は大工たちの前から姿を消した。
大工たちは仕方なく、方々に散って再び麦わら一味を探し始める。
……当の3人はどこにいたかというと……
「~~~っも、ぃぃかっ?」
「……まだよ」
細い路地を抜けた先の橋。
3人はその橋の下にいた。
ルフィが四肢を突っ張ってハンモックのようになり、その上にナミとゾロを乗せてやり過ごしたのだ。
……大工たちの足音が遠ざかっていく。
「~~~っぉもいっ、まだかっ?」
「まだだ。もう少し……」
「んぎ~~ぃっ」
大工たちに見つからないよう、ルフィは手足の指先だけで橋に掴まっている。
それで腹の上に2人も乗せていたら、重くて当然だ。
「……よし、そろそろよさそうだな」
「んがぁ~~っもう、限k―――」
橋の上へ戻ろうとした、そのとき……
「なんだ?」
何かが橋の下を覗き込んできた。
「ぎぇぁあっ!?」
覗き込んで来た者と目が合ったルフィは、驚いて手足を離してしまう。
"ツルッ"
「うぉわっ、ルフィてめぇっ」
「きゃああああっ」
"ザバァンッ"
3人は川へ急落。
「あ、やっぱりルフィたちだったのか」
橋の下を覗き込んだのはチョッパーだった。
やがて、川から上がった3人とチョッパーは、人目につかない屋根の上へと移動した。
「やっと落ち着いたな」
「落ち着いたって、元はといえばゾロ、アンタがあんな大人数に追われてたから、アタシたちまで巻き込まれたんでしょーが!」
「だから、あれは不可抗力だって言ってんだろ?」
「にしてもチョッパー、オメェよく俺らのこと見つけられたなぁ」
「匂い」
「あ、そっか~。……ん? ところでサンジはどした?」
「それは……」
チョッパーは先ほどあったことを話した。
ロビンに会ったこと、そのときに言われたこと。
ロビンが去ったあと、考えがあるから別行動を取るとサンジが言っていたこと。
話すうちに、ルフィの額に血管が浮き出ていった。
「ホントに言ったのか! ロビンがそんなことを!」
「……うん」
俯くチョッパーにナミが訊く。
「ティオのことは何か言ってた?」
「ううん、訊く前に行っちまった……」
「そう……」
2人を横目に見つつ、ゾロは刀に手を掛けて言った。
「全員、覚悟はあったはずだ。仮にも敵として現れたロビンを船に乗せた。それが急に怖くなって逃げ出したんじゃ締まらねぇ」
「「「……」」」
「落とし前、つける時がきたんじゃねぇか? あの女は敵か、味方か」
強まる風が、一人ひとりの合間をすり抜けていく。
「チョッパー、ロビンは今日限りで会うことはない、事態はもっと悪化する。そう言ったんだな?」
「……うん」
「だとしたら、さらに事態を悪化させることを今日中にすると宣言しているようにも聞こえる。市長暗殺未遂でこれだけ騒ぎになったこの街で、事態をさらに悪化させるなら何をする?」
「今度こそ市長を暗殺、よね……」
「それが妥当だな。……ただし、わざと俺たちに罪を被せていると分かった以上、これは俺たちを現場におびき寄せる罠とも取れる。また暗殺が実行される現場に俺たちがいれば、簡単に罪は降りかかるからな」
「ちょっとゾロ、それじゃロビンが本当にもう敵になっちゃったみたいじゃない」
「可能性の話をしてるだけだ。別に俺はどっちにも揺れちゃいねぇ。信じるも疑うも、どっちかに頭傾けてたら、真相がその逆だったとき、次の瞬間の出足が鈍っちまうからな」
チャキン、と刀の鍔が弾かれる。
「事が起こるとすりゃ今夜だが、現場へは」
「行く」
ゾロが訊き終わる前に、ルフィが即答した。
ナミが小さなため息をついて言う。
「行くのは構わないけど、問題があるのよね。サンジ君は、ロビンが誰かと歩いているのを見たわけでしょ? アイスバーグさんも同じ証言をしてるの。仮面を被った誰かと一緒だったって。ティオかもって一瞬思ったんだけど、大男だったって話だから、ティオのはずがない。ということは、仮面を被った誰かは一味の誰でもないってことなのよ。ロビンが豹変したのはその仮面の大男に会ってからだわ」
その言葉にチョッパーがひらめく。
「まさかっ、ロビンはそいつに悪いことさせられてるんじゃねぇのか!? もしかしたらティオもそいつに攫われて……」
「その考えが吉。ロビンとそいつが仲間だった場合が凶で、ティオもその仲間だった場合が大凶だ」
「そんな……」
「今は答えの分からないことを考えても仕方ないわ。問題は、仮面の大男が誰なのか分からないってことなの。何の手掛かりもないんじゃ探しようがないわ。アタシたちがもう一度暗殺現場に行く目的は何?」
その問いに、ルフィが即答する。
「ロビンを捕まえるんだ。じゃなきゃ何も分からねぇよ。ティオのことだって、ロビンに訊いてみるしかねぇ」
確かにな、とゾロが口角を上げた。
「しっかし、世界政府が20年、あの女を捕まえようとして、未だに無理なんだっけか」
「でも、真相を知るにはそうするしかないわね」
「よしっ、俺も頑張るぞ!」
「そんじゃあ、行こう! ガレーラ・カンパニーへ!」
ルフィの掛け声で立ち上がった一味は、そのままガレーラ・カンパニーへと向かった。