18. 一味崩壊の危機

名前変換

名前変換
夢主の名前を決めて下さい。
 
名前
ひらがな



「スンスン……やっぱりダメだな。全然匂いがしない」

「1日経っちまってるし、何よりティオちゃんは空も飛ぶからな」

サンジとチョッパーは街をぐるぐる歩き回っていた。

周囲では人々が、アイスバーグ襲撃事件のことでずっと騒いでいる。

……そのとき、近くのスピーカー内臓電伝虫のスイッチが入った。


『お知らせいたします。こちらはウォーターセブン気象予報局です。只今、ウォーターセブン全域にアクアラグナ警報が発令されました。アクアラグナのウォーターセブン到達は、今夜半過ぎと思われます』


同じ内容が繰り返される。

サンジは近くを歩いていた男に訊いた。

「なぁアンタ。今の放送は何なんだ?」

「え、何なんだって……あぁ、アンタ旅の人か。そりゃ悪い時期に来たもんだ」

「悪い時期?」

「アクアラグナっつってな? まぁ言わば高潮なんだが、それが来ると、この街は海に浸かっちまうんだ。ちゃんと高いとこに避難しとけよ?」

「そうなのか。ありがとな」

男は去っていった。

チョッパーは男の言葉を思い返す。

「海に浸かる……って、ぇえ!? この街、海に沈むのか!?」

「そうらしいな。とにかく急いで2人を探そう」

「お、おう! ……ところで、どこ探せばいいんだ? 結局匂い分かんなかったし」

「そうだなぁ、あの2人の行きそうな場所はどこだ?」

「ん~と、ロビンはとりあえず遺跡だな。ティオは……分からねぇ」

「ここに遺跡はねぇだろ。他は?」

「さぁ……」

「んじゃあ好きなものは?」

「やっぱ、ロビンは遺跡とか歴史とか……。ティオはゾロと昼寝するの好きだよな。あとチョコレート・ドーナツ!」

「それじゃ分かんねぇだろ」

「むっ、じゃあサンジは知ってるのか!?」

「知らねぇから訊いてんだろが!」

口喧嘩をしながら、2人は走った。



……やがて、疲れたのと馬鹿らしくなったのとで、水路のふちに座り込む。

サンジのタバコの煙がたなびいた。

「……もしかして俺たち、2人のこと何も知らなくねぇか?」

「……うん、そうかも」

ロビンとは、アラバスタで最初に会ったときは敵だったけれど、何だかんだで仲間になった。

遺跡や歴史を前にすると、本当に嬉しそうに笑っていた。

ティオは元海兵で、知らないことはないんじゃないかと思えるほど、何でも知っている。

いつもゾロと昼寝しているけれど、チョコレート・ドーナツの匂いがすると飛び起きていた。

……2人とも、過去に何があったのか、いつも何を考えているのか、よく分からなかった。

「とりあえず行くぞ」

「おう……」

2人はヤガラブルに乗り、水路へ漕ぎ出していった。

街はアイスバーグの話から一転、アクアラグナに備えての準備を始めている。

……それを眺めて、チョッパーはぼんやりと思った。

「なぁ、サンジ」

「ん?」

「アクアラグナってスゲェんだな」

「みてぇだな。この街が浸かっちまうほどだからな」

「中には、そんな高潮が来ることも知らない奴がいたりして」

「そりゃ、まぁ……」

「た、例えば、そいつの船なんかエラいことになっちまうんだろうなぁ、あはは……」

「……」

「いや、だから……その……」

サンジには、チョッパーの言いたいことが分かっていた。

やれやれ、と小さくため息をつく。

「チョッパー、確かお前、メリー号に忘れ物したって言ってたよな?」

「え? ……あ、うん!」

「そんじゃ、仕方ねぇな」

サンジがクイっと手綱を引くと、ヤガラは次の角を曲がった。

チョッパーは喜びを隠せず、サンジの肩に飛び乗ってバンザイする。

「待ってろよ~! 忘れ物~!」

「分かったから、落ちんじゃねぇぞ?」

サンジは呆れ顔をしながらも、頬を緩め、ヤガラを進ませた。




やがて、ヤガラは岩場の岬へやってくる。

「静かだな」

「うん。……大丈夫かな、ウソップ」

「これ以上近づいたら気づかれる。こっから行くぞ?」

「分かった」

2人は同時に息を吸い、叫んだ。

「おいおい! アクアラグナっつーもの凄い高潮が近づいてるんだってな!」

「そうそう! 夜中にはやって来てこの海岸もどっぷり浸かっちゃうんだって!」

「大変だ! じっとしてちゃダメだな!」

「そうそう! じっとしてちゃダメだぞ!」

「早ぇとこ高い場所へ避難しねぇと!」

「そうそう早く避難だ!」

「避難! 避難!」

「避難! 避難!」


そこまで言うと、2人は全力疾走で逃げた。




"……ガチャ"


メリー号の船室の扉が開く。

「何だ? 今の声……高潮がどうとかって……」

ウソップは声の主を探そうと、辺りを見回した。

しかし誰もいない。

「そういや風が強ぇな……」

メリーの補強をしようと、ウソップは一度船室に戻った。

チョッパーとサンジの作戦、大成功である。

 
8/11ページ
スキ